エネルギー管理士は何ができる資格?将来性、転職先、試験内容をまとめて解説(求人例あり)

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ビルなど建物に関わる仕事をしている方のなかには、「エネルギー管理士」の資格を耳にした方もいるのではないでしょうか?熱や電気を有効活用し、省エネやSDGsの実行を推進する役割を果たす資格です。

この記事ではまず、エネルギー管理士は何ができる資格なのかを解説します。その後、資格の需要や将来性、主な転職先を取り上げ、資格の取得方法について説明します。エネルギー管理士に関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

エネルギー管理士は何ができる資格?

エネルギー管理士は職場の省エネに関し、先頭に立って尽力する資格です。また、大規模な施設において、エネルギー管理者またはエネルギー管理員になれる資格でもあります。

任される主な職務を、以下に挙げました。

  • エネルギーを消費する施設の維持
  • エネルギーの使用方法の改善および監視
  • エネルギーの使用の合理化に関し、意見を述べる

いずれも同じ業務を、より少ないエネルギーの消費で行うことが目標となります。

エネルギー管理士の活躍は、企業にとっても利益の増大という結果をもたらします。削減できたエネルギーの使用量はそのまま費用の減少につながり、利益に直結するためです。会社の発展をあと押しする資格といえるでしょう。

エネルギー管理士は「ビルメン三種の神器」の1つに数えられる、難しい資格です。設備管理において、豊富な実務経験を持つ方が受験する資格となっています。

※ビルメン三種の神器:建築物環境衛生管理技術者、第三種電気主任技術者、エネルギー管理士

エネルギー管理士の需要は?将来性がある仕事?

エネルギー管理士の需要は、大都市圏に集中しています。求人は複数の業種で募集されていますが、募集人数は他の資格と比べて多くありません。職場が大規模な事業所に限られること、欠員募集が主体であることが主な要因です。

もっとも建物における省エネの要求は、ますます多様化しています。省エネを推進する旗振り役として、エネルギー管理士は今後求められる資格といえるでしょう。この点で、将来性がある仕事です。

ZEB・ZEHの登場が追い風に

社会的な環境配慮への関心の高まりや、省エネ補助金などの影響でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)が注目を集めています。エネルギー管理士はZEBの実現において大きな役割を果たすため、さらに活躍の場が広がっていくことが予想されます。

また、戸建て住宅においてはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)がトレンドになりつつあります。戸建て住宅を扱うハウスメーカーや工務店でもエネルギー管理士の需要が高まっていくことでしょう。

ZEBやZEHの注目度を背景に、「ZEBプランナー」という新たな職業も登場しています。ZEBの実現を支援することを生業としており、エネルギー管理士と関わりの深い職業なのでチェックしてみてください。

エネルギー管理士の有資格者はどんな転職先がある?

エネルギー管理士の転職先は、大きく以下の2つに分かれます。

  • 1.工場など、エネルギーを消費する大規模施設
  • 2.省エネに関するコンサルタント会社

それぞれについて、詳しく解説していきます。

エネルギーを消費する大規模施設

大規模施設は、エネルギー管理士が転職しやすい職場です。エネルギー管理者やエネルギー管理員に選任される資格があるためです。

事業者の区分 第一種特定事業者 第一種指定事業者 第二種特定事業者
年度のエネルギー使用量(原油換算値) 3,000キロリットル以上 3,000キロリットル以上 1,500キロリットル以上3,000キロリットル未満
該当する業種 製造業
鉱業
電気供給業
ガス供給業
熱供給業
第一種特定事業者に該当しない業種 すべての業種
選任すべき者 エネルギー管理者 エネルギー管理員 エネルギー管理員

上記のとおり、原油換算値で年間1,500キロリットル以上のエネルギーを使っている施設が転職先の候補です。工場はもちろん、ホテルや病院、学校、大規模商業施設など、幅広い業種で活躍の場があります。

これらの施設で活躍するためには、設備を知っている必要があります。設備管理など、豊富な実務経験が求められることでしょう。

省エネに関するコンサルタント会社

省エネを企業にアドバイスするコンサルタント会社への転職も、選択肢の一つです。企業の省エネ診断やより良い省エネの提案、補助金の申請や届出書類の作成などが主な業務となります。省エネに関心を持つ企業は多いため、今後の成長が期待される業種です。

転職にあたって、豊富な実務経験は必須とされません。ただし、現場で省エネに関する実務経験があると有利です。

エネルギー管理士は2つの方法で取得できる

エネルギー管理士を取得する方法は、2つあります。

  • エネルギー管理士試験を受験する
  • エネルギー管理研修を受講し、修了試験に合格する

1番の場合、試験そのものは誰でも受験できます。免状の交付を申請する際に、「エネルギーの使用の合理化に関する実務経験」が1年以上必要です。

一方で2番の場合は、研修を申し込む時点で「エネルギーの使用の合理化に関する実務経験」が3年以上必要です。研修の受講会場には定員が設けられていることにも注意してください。

それぞれの内容を確認していきましょう。なお、どちらの場合も、試験に合格しないと資格を取得できないことに注意してください。

エネルギー管理士試験を受験する場合の試験内容

エネルギー管理士試験は、熱分野と電気分野のどちらかを選択して出願します。試験課目も「エネルギー総合管理及び法規」を除き、大きく異なることに注意してください。

熱分野・電気分野ともに共通して出題される「エネルギー総合管理及び法規」では、以下の内容が出題されます。

出題される内容 試験時間
・エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律及び命令
・エネルギー総合管理
80分

熱分野を選択した場合は、以下の3課目が出題されます。

課目 出題される内容 試験時間
熱と流体の流れの基礎 ・熱力学の基礎
・流体工学の基礎
・伝熱工学の基礎
110分
熱利用設備及びその管理 ・計測及び制御
・熱利用設備
110分
燃料と燃焼 ・燃料及び燃焼管理
・燃焼計算
80分

電気分野を選択した場合は、以下の3課目が出題されます。

課目 出題される内容 試験時間
電気設備及び機器 ・工場配電
・電気機器
110分
電力応用 電動力応用
電気加熱、電気化学、照明、空気調和から1問ずつ出題。
合計4問から2問を選択
110分
電気の基礎 ・電気及び電子理論
・自動制御及び情報処理
・電気計測
80分

解答はマークシート方式です。1日で4課目すべての試験を実施するため、朝9時から午後5時40分にわたる長丁場となります。

エネルギー管理研修を受講する場合の内容

エネルギー管理研修を受講する場合、6日間の講義に加えて、丸一日かけて行われる修了試験に合格することが資格取得の要件です。各課目の講義は、以下の時間をかけて行われます。

区分 課目 講義時間
必須基礎区分
(熱・電気共通)
エネルギー総合管理及び法規 6時間
熱分野専門区分 熱と流体の流れの基礎 10時間40分
燃料と燃焼 4時間40分
熱利用設備及びその管理 12時間
電気分野専門区分 電気の基礎 4時間
電気設備及び機器 8時間
電力応用 15時間20分

受講者は申込み時に、熱分野または電気分野を選びます。熱分野を選んだ方は「必須基礎区分」と「熱分野専門区分」の講義を、電気分野を選んだ方は「必須基礎区分」と「電気分野専門区分」の講義を受講してください。

修了試験では、熱分野・電気分野ともに4課目受験する必要があります。いずれも記述式であることに注意してください。熱分野を選んだ場合は、以下の順番で受験します。

課目 試験時間
エネルギー総合管理及び法規 80分
熱利用設備及びその管理 90分
熱と流体の流れの基礎 110分
燃料と燃焼 80分

電気分野を選んだ場合は、以下の順番で受験します。

課目 試験時間
エネルギー総合管理及び法規 80分
電気の基礎 90分
電力応用 110分
電気設備及び機器 80分

エネルギー管理士の平均年収

求人ボックスでは、エネルギー管理士の平均年収や年収の分布状況を公表しています。平均年収額は499万円です。また年収は、300万円から600万円まで幅広く分布しています。「ビルメン三種の神器」に含まれる難しい資格ですが、社会全体の平均年収よりも高いのでしょうか。

国税庁は「令和3年分 民間給与実態統計調査」において、給与所得者の平均給与が443万円であると公表しました。エネルギー管理士の平均年収は、56万円高くなっています。800万円や1,000万円といった高収入は狙いにくいものの、平均的な社会人よりも高い年収を狙える資格です。

エネルギー管理士の求人募集例

建設・建築業界専門の転職エージェント「建築転職」で取り扱っている求人の中から、エネルギー管理士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

スーパーゼネコンの設備設計の求人

  • 仕事内容:設備設計業務
  • 応募条件:設備設計の実務経験、一級建築士・設備設計一級建築士・技術士・エネルギー管理士・電気主任技術者・建築設備士・博士(工学)のいずれかの資格
  • 週休2日制(土日祝休み)
  • 年収5,000,000円 〜 10,000,000円
  • 夏期休暇、産前産後休暇、育児休業、リバイバル休暇、リフレッシュ休暇等、多様な長期休暇あり

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おわりに

エネルギー管理士は資源の少ない日本で事業を行うにあたり、より少ないエネルギーで業務を遂行する重要な役割を果たします。省エネやSDGsが求められる時代に、活躍が期待される資格といえるでしょう。

資格の取得は簡単ではありませんが、省エネに関する業務に携わり、社会に貢献できることにやりがいを感じられる点もメリットといえます。設備管理の経験が豊富な方はより一層高いステップとして、エネルギー管理士を目指してみてはいかがでしょうか?尚、建築士の仕事内容についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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