建築CAD検定を取得するメリットは?試験内容や合格率、活かせる仕事・転職先を紹介

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CADを活かした仕事に就きたいという動機から、建築CAD検定の受験を考えている方も多いのではないでしょうか。資格の取得により、転職しやすくなるなどのメリットが期待できます。

この記事では建築CAD検定の試験内容や合格率、資格を活かせる仕事や転職先などの情報を提供します。建築向けのCADに興味をお持ちの方は、ぜひお読みください。

建築CAD検定とは

建築CAD検定は一般社団法人全国建築CAD連盟が実施している資格試験で、毎年1万人以上が受験しています。CADを活用し建築図面を描ける実技能力を試すことが特徴の試験です。知識を問う筆記試験やマークシート式試験はありません。

試験は一般試験と、高校や専門学校などで実施する団体試験に分かれます。4級の試験は高校での団体受験に限られるため、社会人は選べません。

項目 一般試験 団体試験
実施する級 准1級、2級、3級 准1級、2級、3級、4級
試験会場 全国14 在籍する学校内
試験回数 准1級は毎年10月

2級と3級は年2回(4月、10月)

年4回(1月、4月、7月、10月)。但し准1級は10月のみ

受験料は准1級が14,700円、2級と3級が10,500円です。

試験で使う機器は、以下の3種類があります。

  • ご自身のノートパソコンを持ち込み
  • 会場側で用意した、Jw_cadがインストールされた機器を使用
  • 会場側で用意した、AutoCADがインストールされた機器を使用

ノートパソコンを持ち込む方法は、すべての会場で可能です。また多くの試験会場で、Jw_cadによる試験も対応します。一方でAutoCADを選べる会場は少数ですから、よく確認して申し込みましょう。

参考:建築CAD検定 一般社団法人 全国建築CAD連盟

CAD実務認定試験との違い

CAD実務認定試験は一般社団法人コステックエデュケーションが実施しており、4種類の試験に分かれています。

  • TCADs
  • 3次元CADトレーサー認定試験
  • 3次元CADアドミニストレーター認定試験
  • CADアドミニストレーター認定試験

このうちTCADsは年2回実施され、建築部門への対応が明記されています。以下に示す、2種類の試験を受験しなければなりません。学科試験があること、合否の概念がなくスコアにより評価されることは建築CAD検定との大きな違いです。

項目 学科試験 実技試験
目的 図面に関する知識を問う CADを使った図面作成能力を問う
実施方式 CBT方式(四肢選択) 会場のコンピュータにインストールされたCADを使用
試験時間 40分 100分

残り3種類の試験は、いずれも90分の実技試験のみで合否が決まります。また一般の受験者は、自宅での受験となります。試験時間が短いことも、建築CAD検定との大きな違いです。

参考:実務キャリア認定制度について

CAD利用技術者試験との違い

CADのスキルを試す試験には、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施する「CAD利用技術者試験」もあります。建築CADの場合は「2次元CAD利用技術者試験」の2級、および1級の「建築」「トレース」が適しています。

2級はCADシステムや製図に関する問題が多肢選択式で出題され、CBT方式で回答します。試験時間は1時間です。7割以上で合格ですが、CADシステム分野と製図分野それぞれで5割以上の正答が必要です。

1級の試験は年2回実施されます。2級に合格しないと受験できません。以下の2科目が出題され、試験時間は合計で1時間20分です。受験にあたり、CADソフト入りのノートパソコンを持ち込む必要があります。

  • CADシステムを使用した実技試験
  • 筆記試験(専門知識を問う25問を出題)

試験時間が短いこと、2級は実技試験がないこと、1級は筆記試験があることは、建築CAD検定との違いです。

参考:CAD利用技術者試験

建築CADの資格を取得するメリット

建築CAD

建築CAD検定の資格を取ることには、2つのメリットがあります。それぞれのメリットを確認していきましょう。

転職に有利となる

建築CAD検定は建築業界に特化したCADの試験であり、年間1万名以上受験する主な資格のひとつです。一定以上のスキルを持っているわけですから、建築業界への転職に有利となるでしょう。

すでに実務経験のある方は、スキルの裏付けにも使えます。高いレベルの試験に合格すれば、ご自身の評価もより高くなります。

就職後、スムーズな仕事に役立つ

建築CAD検定は、CADを使って図面を作成できないと合格できません。資格があれば、CADをきちんと使える技術者ということを客観的に示せます。入社後は即戦力となり、短期間で実力を発揮できるでしょう。ご自身の仕事能力が認められることも、見逃せないメリットに挙げられます。

建築CADの資格を活かせる仕事・転職先
建築CAD検定の資格を活かせる代表的な仕事には、CADオペレーターや設計・製図の職種が挙げられます。この職種は以下の会社で募集されています。

  • 建設会社
  • 工務店
  • リフォーム会社
  • 建築業や建設業に強い派遣会社

求人件数そのものは多いですが、求人数が求職者数を下回る職種であることに注意が必要です。企業によっては競争率が高くなる場合もあるため、十分な準備とアピールが求められます。

営業のスキルをお持ちの方は、営業職として働く道もあります。リフォーム営業は代表的な職種です。提案営業の形となる場合も多く、顧客からヒアリングした内容を自らCADで描き、提案できることは喜びの一つです。

CADオペレーターはもう古い?

建築CADの資格のメリットを述べましたが、BIMが普及している現代において、「CADオペレーターはもう古いのではないか」と疑念を抱く方も多いのではないでしょうか。

国土交通省が主導してBIMの導入が進められ、BIMオペレーターの育成が喫緊の課題であることはたしかです。しかし、BIMだけで全ての建築図面を作成できる状況ではないのが実状であり、CADオペレーターの活躍の場は今でも多いといえます。BIMを活用した図面作成においても、BIMから切り出した図面の線をきれいにしたり、情報を書き加えたりするのはCADで行っています。

これからでも建築CADの資格を取得するメリットは大きいでしょう。あわせてBIM関連の資格を取得する準備も進められるとベターです。

建築CADの資格検定の試験内容

建築CAD検定は、4つの段階に分かれています。

  • 准1級
  • 2級
  • 3級
  • 4級

このうち4級は高校による団体受験に限られるため、社会人は准1級・2級・3級のどれかを選び出願することとなります。それぞれの級で行われる試験内容を確認していきましょう。

准1級

准1級は多種多様なケースに対応できる、CADのスペシャリストを認定する資格です。試験ではトレースすべき図面が4面出題され、4時間10分かけて実施されます。

CADで描くべき画面は試験問題で指定されますが、全国建築CAD連盟の公式サイトでは以下の例を挙げています。なお縮尺は200分の1です。

  • 配置図、1階平面図
  • 2階平面図
  • 基準階平面図
  • 断面図

試験時間は以下のように割り振られ、専用の時間管理ソフトである「試験時間記録ツール」が使われます。

行うべき作業 時間 備考
CADシステムの設定 10分 試験問題を開いてはいけない
課題図面の読み取り・入力計画 30分
課題の作図 3時間30分

准1級で出題される図面の量や密度は、一級建築士の設計製図試験とほぼ同等です。出題される図面には、寸法が記されていない箇所も多いことに注意しなければなりません。受験者は自らの知識と経験をもとに、適切に作図する必要があります。

また作図すべき量に対して、十分な時間が与えられていません。4つの図面が完成していないと自動的に不合格となるため、スピードも重要です。
尚、建築士のその他の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

2級

2級は与えられた情報をもとに、5時間かけて2種類の図面を完成させる試験です。全国建築CAD連盟の公式サイトでは、以下の例を挙げています。なお縮尺は50分の1です。

  • 平面詳細図
  • 立面図

作図に必要な他の図面は、出題内容に示されています。「補足説明」に書かれた内容や条件も踏まえて図面作成を進めないと、減点対象となることに注意が必要です。

2級では正しい寸法など、指示内容を踏まえた作図が求められます。特に屋根は、2次元の情報からしっかり描けるか試されるため重要なポイントです。満点は250点で、190点~200点で合格となります。

3級

3級はCADを操作し、与えられた完成図と同じ図を独力で作図する試験です。同じ図面を作ることができれば、合格できます。CADを使うスキルが試される級といえるでしょう。出題数は4問で試験時間は2時間、200点中140点~150点で合格です。

CADで作図する際に参考となる情報は「参考図」のほか、補足説明でも示されています。細部まで示されているため、遵守して作図しましょう。なお解答図面データが4つ揃わないと採点対象外となることに注意が必要です。

建築CAD検定の合格難易度(合格率)

建築CAD検定の合格難易度は、どの程度なのでしょうか。過去5年間の合格率を、以下に挙げました。

年度 准1級 2級 3級
2021年度 14.1% 60.3% 61.5%
2020年度 2.0% 67.7% 64.8%
2019年度 24.5% 58.6% 71.7%
2018年度 2.4% 52.1% 67.3%
2017年度 30.3% 51.7% 73.8%

出典:全国建築CAD連盟「統計資料」

3級は受験者のおよそ3人に2人、2級も受験者の5割~6割は合格しています。準備をしっかり行っていれば、合格できる試験といえるでしょう。

一方で准1級は、難度の高い試験です。ここ10年ほどは受験者数が100名未満と少数ですが、合格ラインは下がっていません。たとえば2014年度は全員不合格、2018年度と2020年度は1名しか合格していません。求めるレベルに達しない方は容赦なく不合格となることを心得た上で、試験に臨むことが求められます。

CADオペレーターの平均年収

最後にCAD検定の合格者が多く就く「CADオペレーター」について、平均年収を確認していきましょう。厚生労働省「jobtag」では、令和3年の平均年収を463万2,000円と公表しています。ただし平均年齢は41.5歳と、やや高めであることに注意が必要です。

一方で令和3年度におけるハローワークの求人賃金は、月額25万4,000円です。ボーナスを年2ヶ月と仮定すると、年収は355万6,000円となります。

このことから「入社時点での平均年収は350万円前後。努力と業績への貢献しだいで、年収450万円前後に達する可能性も十分にある」と考えられます。

建築CADオペレーターの仕事については、以下の記事で詳しく解説しています。

おわりに

建築CAD検定は、業界では知名度のある試験です。合格することでCADの実務能力が認められ、CADを使った仕事に就きやすくなります。これからCADのスキルを身に着ける方は、3級を目指すとよいでしょう。また実務経験のある方は、2級を取得しておくと転職の選択肢が広がります。

もっとも、仕事は実務能力ではかられるものです。CADオペレーターも経験を積むことで、年収のアップが期待できます。しかし技術を裏付ける客観的な情報として資格は有効ですから、積極的な取得をおすすめします。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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