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建築士は建物や街といったダイナミックなプロジェクトに携われる職業です。しかし、既に多くの建物が密集しているため、建築士の将来性を心配する方も多いのではないでしょうか。
この記事では、これからの建築士の需要を紹介しながら将来性について解説します。また、AIの登場により建築士の立場を危ぶむ見方に対し、AIとの付き合い方も紹介しますので、ぜひご覧になってみてください。
目次
建築士の将来性
さっそく建築士の将来性についてみていきましょう。はじめに国交省の見解について説明し、これからの新築や既存建物改修での建築士の需要をご紹介します。
建築士の将来に対する国交省の見解
令和2年に建築士資格の受験資格が緩和されました。実務を経験する前から受験できるようになったことや、建築士登録に必要な実務にカウントされる業務が拡大されたことが主な内容です。
改正の背景は、既存建築物の調査・有効活用をはじめとした多様なニーズに対し、建築士の役割が設計・工事監理に留まらず、建築物全般の専門家になってきていることです。
今回拡大された実務にカウントされる業務は、「既存建築物の利活用検討・維持保全計画策定」「建築物に関する調査又は評価」「設計図・施工図の作成」「建築物に係る研究」などが挙げられます。
既存建築物の活用や、高度化が進む設計図・施工図・BIMの作成に、建築士が幅広く活躍することを国交省が望んでいるのがわかる改正内容です。このことから、建築士の活躍の場はますます広がっていくと考えられるでしょう。
建築士の資格の詳細は以下の記事で解説しています。
建物の大規模化と多様化
近年の都心部においては、デベロッパーによる建物の大規模化が進んでいます。複数棟の既存建物を解体し、オフィス・ホテル・商業・住宅などを組み合わせた複合施設を建設するのが都心部開発の主流です。
多くのステークホルダーと方針決定ができる建築士のほか、多岐にわたる専門分野に対応する幅広い知識を有する建築士が求められています。デベロッパーやプロジェクトマネージャーにも建築士がいることが望ましく、建築士の需要はますます増えるでしょう。
また、働き方改革などの環境の変化に対応するため、建物に求められる機能が多様化しています。時代の変化に応じて新築や内装改修は続くことが考えられ、ここでも建築士の活躍が期待されるでしょう。
老朽化建物の保存や耐震改修
旧耐震基準で設計された歴史的建築物や住宅、施設は現在も残っており、それらの保存や耐震改修が続いていきます。クライアントからは、補助金をうまく活用しながら計画を進めていくことが求められるので、補助金制度の知識を身に付けることで、需要の高い建築士になれるでしょう。
AIとの付き合い方
“Midjourney”や“Stable Diffusion”といった画像生成AIによる建築パースの作成が話題を呼んでいます。一方で、AIが建築士の仕事を奪うことを危惧する声も。ここでは、建築業界が目指しているAIとの付き合い方をご紹介します。
クリエイティブな時間を増やすためのAI
建築界が目指しているのは、建築士のクリエイティブな時間を増やすためのAI活用といえます。AIにできる部分はAIに任せて、デザインや施工計画などの楽しい時間を増やすことが望まれているからです。
例えば、建築主から建物の理想像のキーワードを抽出し、キーワードを画像生成AIに伝えることで、イメージパースを手軽に作成できます。そのイメージパースを使用して建築主と方向性を合意できれば、パースの作成に費やしていた時間を大幅に削減することができるのです。
このように、AIを活用しながらクリエイティブで楽しい時間を増やすのが、建築業界が目指しているAIとの付き合い方です。
“人間”の建築士に求められること
それでは、“人間”の建築士にこれから求められるのはどのような能力かみていきましょう。
ひとつは、AIなどの新しい技術を活用して時間をつくれる能力です。これらの技術をうまく活用すればデザインに使える時間が増え、よい建物を設計できるようになります。
もうひとつは、新技術を活用して新たなアイディアを生み出す能力です。BIMやパラメトリックデザイン、生成AIなど、新たな設計手法に使える技術が次々と登場しています。今までは難しかった有機的・曲線的なデザインなど、現代だからこそできるデザインを提案できる能力が求められるでしょう。
また、今までと同様に、建築主の特徴や地域性をうまく設計に取り込む能力もそのひとつです。新技術の活用で検討の時間を多くとれるようになれば、実力の差が設計に表れやすくなるかもしれません。
尚、建築士に求められる能力や必要な資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
実現している設計支援AI
ここで、既に実現している設計支援AIを紹介します。
大林組は、ファサードデザイン検討に使えるAI「AiCorb」を開発しました。
AiCorbは、設計者のスケッチをもとに、複数のファサードデザインを提案し、そのデザイン案を設計用プラットフォームにモデル化することができます。
今までは設計者がデザイン案をスケッチやCADで表現して建築主などと検討していましたが、AiCorbを使えばデザイン提案から表現までの作業をコンピューターで自動的に行えます。
また、竹中工務店では「構造設計AIシステム」を開発しています。
AIを使って社内の類似物件の構造計画を検索したり、自動で部材検討をさせたりすることができます。従来は、解析を繰り返し行いながら部材検討を進めていました。このような単純作業の時間などが削減され、構造デザインのようなクリエイティブな時間を多く取れるようにすることで品質の向上に繋げています。
各社において設計者の負担を減らすAIが開発されており、設計者の働き方は着実に変わってきているといえるでしょう。
建築士の転職先の例
建築士は、さまざまな職場で活かせる資格です。代表的な職場を、以下に挙げました。
- ゼネコンや建設会社、工務店
- ハウスメーカー
- 設計事務所
- アトリエ
- リフォーム業者
- デベロッパー
- 官公庁
- 指定確認検査機関
- 不動産売買の業者
それぞれの職場では、異なる立場から建物に関わります。設計だけでなく、監理や確認検査、建物のチェックなど、資格を活かせる仕事は多数あります。転職先の種類や社会から求められるスキルが多数あるため、資格が無駄になりにくいことも建築士のメリットに挙げられます。
建築士の平均年収
ここからは、建築士の平均年収を確認していきましょう。「求人ボックス 給料ナビ」では、一級建築士の方は平均で499万円の年収を受け取れること、年収500万円を超える方も多いことを示しています。一方で二級建築士の年収は、一級建築士よりも50万円~60万円下がります。
建築士の年収額は、社会人全体の平均以上です。国税庁は「令和3年分 民間給与実態統計調査」において、給与所得者の平均年収額が443万円であることを公表しました。この金額は、二級建築士とほぼ同程度です。また一級建築士は社会人の平均年収よりも1割以上高くなりますから、高収入の職業といえるでしょう。
建築士の求人募集例
「建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、建築士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
転勤なし、年間休日125日以上の求人
- 仕事内容:建造物の基本計画立案から設計・監理までトータルな設計業務全般
- 応募条件:二級建築士以上、普通自動車免許を保有
- 完全週休2日制(休日は土日祝日)
- 年収4,500,000円 〜 8,500,000円
- 転勤なし、年間休日125日以上
一級建築士手当ありの大手不動産会社の求人
- 仕事内容:新築戸建の設計プランナー
- 応募条件:木造住宅設計経験者、実施設計、構造設計の経験者
- 週休2日制(平日)
- 年収5,000,000円 〜 9,000,000円
- 別途一級建築士手当(月5万円)あり
建築業界専門の転職エージェント「建築転職」では、上記以外の好条件の求人のほか、非公開求人情報も紹介しております。下記から無料登録できます。
おわりに
大規模化する建物や既存建築物の利活用で今後も建築士の活躍が期待されています。また、これからはプロジェクトマネージメント・審査・調査・研究など、多岐にわたる役割が建築士に求められるでしょう。豊かな将来性が期待される建築士への転職を考えてみてはいかがでしょうか。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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