【資格解説】管工事施工管理技士:1級・2級の違いや転職先、平均年収を解説(求人例も)

【資格解説】管工事施工管理技士:1級・2級の違いや転職先などを解説

施工管理技士を目指す方のなかには、管工事の分野を選ぶ方もいるのではないでしょうか。管工事施工管理技士には、1級と2級があります。それぞれの違いや資格を取得するメリット、転職先は気になるところです。受験資格や試験内容とあわせて、詳しく確認していきましょう。

管工事施工管理技士とは?何ができる資格?

管工事とは、配管に関する工事を指します。管工事施工管理技士は、管工事の責任者として施工管理を行う資格で、工事の品質・工程・コストなど、工事全般を管理します。工事を安全かつ円滑に進めるうえで、重要な役割を果たす資格です。

管工事には、さまざまな種類があります。国土交通省では、以下の例を挙げています。

  • 冷暖房設備工事
  • 冷凍冷蔵設備工事
  • 空気調和設備工事
  • 給排水・給湯設備工事
  • 厨房設備工事
  • 衛生設備工事
  • 浄化槽工事
  • 水洗便所設備工事
  • ガス管配管工事
  • ダクト工事
  • 管内更生工事

出典:国土交通省「建設業許可制度」

思ったよりも多くの種類があることに、驚いた方もいるのではないでしょうか。例えば「空気調和設備」に代表される設備には、エアコンが挙げられます。

日々の暮らしや社会生活に欠かせない上水道や下水道、ガスだけでなく、空調も配管なしでは使えません。スーパーや工場、飲食店などの施設づくりにも、管工事は必須です。管工事施工管理技士は私たちのインフラを支える、重要な役割を果たしています。

施工管理自体の仕事内容や求められるスキル等は、下記の記事で詳しく解説しています。

水道施設工事や土木一式工事との相違点

配管に関する工事のなかには、水道施設工事や土木一式工事に該当する場合があります。この場合、管工事施工管理技士の資格では施工管理を行えません。どのような工事が該当するか、以下の表にまとめました。

工事の種類 上水道 下水道
管工事 施設の敷地内の配管や給水引込管の工事 家屋から公共汚水ますまでの工事
水道施設工事 取水施設から浄水施設、公道下の配管までの施設の工事 沈砂池、沈殿池、消毒施設、汚泥処理施設の工事
土木一式工事 (該当なし) 公道下に敷設する下水道本管の工事
下水処理場の敷地造成工事

管工事の範囲は、おおむね私有地の敷地内と考えるとよいでしょう。管工事施工管理技士は、この範囲内で業務を遂行することになります。

1級と2級管工事施工管理技士の違い

管工事施工管理技士の場合、1級と2級ではいくつかの違いがあります。主な相違点を、以下の表にまとめました。

項目 1級 2級
必要な実務経験年数 3年から15年
(学歴や卒業した学科による)
1年から8年
(学歴や卒業した学科による)
主任技術者 選任可能 選任可能
監理技術者 選任可能 選任不可
営業所専任技術者 特定建設業、一般建設業どちらも選任可能 一般建設業のみ選任可能
公共工事の入札における経営事項審査「技術力(Z)」への加点 1名当たり5点を加点 1名当たり2点を加点

監理技術者は、以下の要件を両方満たす工事現場に配置する必要があります。ゼネコンなど、規模の大きい建設業者で求められる役割です。

  • 顧客から直接受注する建設業者
  • 下請先に工事を発注する建設業者で、下請契約の総額が4,500万円以上となる

技術力の点数は、456点から2,441点の間で評価されます。数十名から数百名の技術者を抱える企業にとって、2点や5点の加点は小さくありません。無資格よりも2級の方を、また2級よりも1級の有資格者を揃えることで、公共工事への入札が有利になります。

管工事施工管理技士の資格を取得するメリットは?

管工事施工管理技士の資格を持つことで、以下のメリットが得られます。

  • 1.施工管理業務に携わることができ、主任技術者など責任の重い仕事を任せてもらえる
  • 2.給与や手当がアップする
  • 3.求人に応募する際、選考に有利となる
  • 4.他の資格を取得しやすくなる

高いスキルを持つ技術者として認められ社内外の評価が上がること、収入のアップにつながることは、1番や2番の例に挙げられます。3番については、会社が管工事施工管理技士の有資格者を採用することで公共工事の入札に有利となることも選考に有利となる理由です。

4番の例には、浄化槽設備士や建築設備士が挙げられます。管工事施工管理技士は「浄化槽設備士講習」を受講することで、浄化槽設備士になれます。浄化槽設備士試験を受験する必要はありません。また実務経験が2年以上ある1級管工事施工管理技士は、学歴に関わらず建築設備士試験を受験できます。

管工事施工管理技士の主な転職先は?

管工事施工管理技士を求める企業は、多種多様です。ここでは主な3つの転職先を取り上げ、特徴を確認していきます。あなたに合った転職先選びにお役立てください。

ゼネコン

求人数はそれほど多くはないものの、ゼネコンは管工事施工管理技士の転職先の一つに挙げられます。安定していること、大きな仕事を任されることは、ゼネコンならではの強みといえるでしょう。監理技術者を求める工事があるため、1級の資格を役立てる機会があることもゼネコンの魅力です。

人気のある企業ですから、応募のハードルや競争率は高くなりがちです。企業によっては、転職エージェント経由でしか応募を受け付けないケースもあります。

サブコンや専門分野を持つ建設会社、工務店

建設会社はゼネコン以外にも、以下のように数多くの企業があります。

  • ゼネコンの下請けが主体のサブコン
  • 専門分野を持つ建設会社(ハウスメーカーなど)
  • 地元密着の工務店

これらの企業は、ゼネコンよりも数多く存在します。実際には上記いずれかの企業に勤める方が多いでしょう。

配管工事の会社

水道やガスなど、配管工事を専門に行う会社も管工事施工管理技士の転職先に挙げられます。水道工事を専門に行う建設会社はもちろん、ガス会社や水道の修理会社も転職先の候補になるでしょう。いずれも、これまで培った管工事のスキルを活かせる強みがあります。

管工事施工管理技士

管工事施工管理技術検定の受験資格

管工事施工管理技士は有望な資格ですが、資格取得のために合格が必要な「管工事施工管理技術検定」には受験資格があります。どのような要件があるか、確認していきましょう。

1級管工事施工管理技術検定の受験資格

1級管工事施工管理技術検定の代表的な受験資格を、以下に挙げました。1年以上の指導監督的実務経験を持ち、以下どちらかの要件を満たす方は受験できます。

  • 1.管工事施工に関する実務経験を持つ方(必要な年数は3年から15年の間で、学歴や卒業した学科により変わる)
  • 2.配管(選択科目が建築配管作業)の技能検定に合格した方で、10年以上の実務経験を持つ方

また第一次検定に限っては、2級管工事施工管理技士をお持ちの方なら無条件で受験できます。このほかにも受験できる要件はありますから、全国建設研修センターの公式サイトをご確認ください。

2級管工事施工管理技術検定の受験資格

2級管工事施工管理技術検定の第一次検定は、17歳以上の方ならば誰でも受験できます。高校生の受験者が一定数あることは、その裏付けといえるでしょう。試験日の時点では16歳の方であっても、年度末までに17歳に到達する方は受験できます。

第二次検定に出願する場合は、以下に挙げるどちらかの受験資格を満たす必要があります。

  • 管工事施工に関する実務経験を持つ方(必要な年数は1年から8年の間で、学歴や卒業した学科により変わる)
  • 技能検定「配管」に合格し、4年以上の実務経験を持つ方

2番に該当し1級の配管の資格をお持ちの場合、選択科目は「建築配管作業」に限られることに注意してください。受験資格の詳細は、全国建設研修センターの公式サイトでご確認ください。

管工事施工管理技術検定の試験内容

管工事施工管理技士の試験内容は、1級と2級で分かれます。また第一次検定と第二次検定では、試験内容が異なります。事前にしっかり確認し、合格につなげましょう。

1級管工事施工管理技術検定の試験内容

1級の試験内容は、以下のとおりです。第一次検定と第二次検定は、期間を空けて実施されます。

第一次検定 第二次検定
試験科目 機械工学等、施工管理法、法規 施工管理法
試験方式 マークシート方式 記述式
試験時間 午前:2時間30分

午後:2時間

2時間45分
合格ライン 60%以上
但し「施工管理法(応用能力)」で50%以上の得点が必要
60%以上

第二次検定では、あなたが経験した管工事に関する設問が含まれます。適切な回答をするためには、日頃から問題意識を持って仕事に取り組む姿勢が必要です。

2級管工事施工管理技術検定の試験内容

2級の試験内容を、以下にまとめました。1級と異なり、第一次検定と第二次検定を同じ日に受験することが可能です。

第一次検定 第二次検定
試験科目 機械工学等、施工管理法、法規 施工管理法
試験方式 マークシート方式 記述式
試験時間 2時間10分 2時間
合格ライン 60%以上 60%以上

第二次検定では、あなたが経験した管工事に関する設問が含まれます。課題に対する対応方法も設問に含まれますから、業務で発生した問題に対して真摯に向き合い、解決に導く姿勢が求められます。

1級・2級管工事施工管理技士の合格率(合格難易度)

管工事施工管理技術検定は、令和3年から試験制度が変更されました。現行制度での合格率はどの程度なのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

1級の合格率

1級の合格率を、以下の表にまとめました。

年度 第一次検定 第二次検定
令和4年度 42.9% 57.0%
令和3年度 24.0% 73.3%

第一次検定から受験する場合、第一次検定と第二次検定の両方に合格する確率は20%前後にとどまります。豊富な施工管理業務の経験を積んだ方のなかから5人に一人しか合格しない試験は、大変難しいといえるでしょう。合格した方は、高い評価を受けます。

2級の合格率

2級の合格率は、以下のとおりです。

年度 第一次検定(前期) 第一次検定(後期) 第二次検定
令和4年度 50.4% 56.8%
(高校生は37.4%)
59.7%
令和3年度 56.0% 49.8%
(高校生は34.1%)
67.7%

2級の第一次検定は、実務経験がなくても受験できます。実際に高校生も受験しており、一般の受験者より合格率は低いものの合格した方も多いです。未経験者でもしっかり学べば、合格が難しい試験ではありません。

一方で第二次検定は実務経験者しか受験できず、記述式の出題も多いです。合格率は6割前後と高めですが、受験資格や試験内容を踏まえると簡単な試験ではありません。

管工事施工管理技士の平均年収

「求人ボックス 給料ナビ」では、管工事施工管理技士の年収を以下のとおり公表しています。

  • 平均年収は497万円
  • 年収425万円~502万円の方が多い
  • 全体の年収幅は349万円~961万円と広い

世間一般の平均年収より高くなる場合が多いことも、特徴に挙げられます。国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、給与所得者の平均年収が443万円であることを公表しました。管工事施工管理技士の多くは、443万円より多くの年収を得ています。

また600万円から700万円もの年収を得る管工事施工管理技士も、少なくありません。実力しだいで高い年収を狙えることも、メリットに挙げられる資格です。

管工事施工管理技士の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、管工事施工管理技士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

名証メイン上場の中堅ゼネコンの求人

  • 仕事内容:電気、水まわり、空調、昇降機など設備全般に関する設計業務
  • 応募条件:一級建築士、1級管工事施工管理技士、1級電気工事施工管理技士、建築設備士の資格
  • 土曜、日曜、祝日休み、年間休日120日
  • 年収5,000,000円 〜 7,000,000円
  • 教育や資格取得に対する意識が高く、サポートが充実している企業

東証プライム上場の中堅ゼネコンの求人

  • 仕事内容:建設プロジェクトにおける設備設計・設計監理業務
  • 応募条件:建築設備士、1級管工事施工管理技士、1級電気施工管理技士の資格
  • 土・日・祝休日
  • 年収5,500,000円 〜 9,970,000円
  • 創業70年以上、元請け工事9割のエンジニアリング会社

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おわりに

ここまで管工事施工管理技士について、さまざまな観点から詳しく解説しました。管工事は日々の生活を支えるうえで欠かせない工事であり、管工事施工管理技士は社会的にも重要な資格です。資格を持つ方は能力の高い技術者として迎えられ、やりがいのある仕事を任されることでしょう。

このこともあり、確かな実力を持つ方のみ受験が可能です。特に第二次検定を受験するハードルは高くなっています。実務経験者でも、楽に合格できる試験ではありません。日々の実務を確実に遂行することに加えて、試験対策を行い確かな知識を身につけることが合格の秘訣です。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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