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建築業種における施工管理業務の概要、求められるスキルや資格について解説します。国家資格である1級・2級建築施工管理技士の資格を取るメリットや、転職を考える時にも役立つ内容になっています。
目次
施工管理とは?何を管理する仕事?
施工管理とは、何を管理するのでしょうか?一言でいうと、工事現場を管理することです。具体的には、計画通りにモノを造るために各項目で適切に管理する業務を施工管理と呼びます。
さて、これでは非常に大枠のイメージしか想像できないので具体的な管理項目を挙げて詳細を解説していきたいと思います。
建築現場における施工管理では下記の5項目を管理します。
- 1.品質(Quality)
- 2.コスト・原価(Cost)
- 3.工程・工期(Delivery)
- 4.安全(Safety)
- 5.環境(Environment)
これら5項目は、頭文字を取って「QCDSE」と呼びます。現場施工管理業務においてこれらの管理項目は一つ一つに大きな役割があり、どれか1項目でも基準を満たしていないと現場施工管理が不十分と判定されてしまいます。ここからは、各項目の概要とどのような技術やスキルが求められるのかを詳しく解説します。
品質管理(Quality)
品質管理とは、建設物の品質や安全面を規定に満たすために工事を管理する業務です。担当者(施工管理技士)は、商品(建設物)の品質を保つために、設計図面通りに造られているかを管理します。発注者や第三者機関である設計事務所にも立会等を依頼して確認・検査を実施してもらい、要求品質を満足しているか確認する作業が求められます。
コスト・原価管理(Cost)
原価管理とは、人件費や材料費といった原価やコストを管理する業務です。施工会社も営利組織として利益を出すためにコスト管理をしなければなりません。主な業務内容は、作業工程と人件費を踏まえ、下請け業者などの作業員の人数なども管理することです。
工程・工期管理(Delivery)
工程管理とは、建設物が工事期間内、工程通りに完成できるよう管理する業務です。工事を期間内に完成させるために毎日の現場の流れを把握し、遅れてしまった場合には対策を行い、完成日を目標に作業工程のスケジュールを組むことが求められます。現場は外の作業になるため天候や気候の影響に大きく左右されます。現場が忙しくなると事故やケガに繋がる可能性が高くなるため、適切な工程・工期管理が求められる重要な業務です。
安全管理(Safety)
安全管理とは、建設現場において作業員が事故や怪我を起こさないようにするように安全面を管理する業務です。建設現場では、常に危険と隣り合わせのため、安全管理を怠ることで大きな災害に発展するケースもあります。そのため、施工管理技士は作業員が安全に作業できるよう、危険な場所を見定めて対策を行わなければいけません。そこで、危険な場所やポイントを見定め、作業員が危険作業をしていないかしっかり確認します。時には作業員に厳しく指導する事も安全施工管理の仕事です。
環境管理(Environment)
環境管理とは、自然環境・周辺環境・職場環境の3つの要素において影響を最小限にする業務です。
- 自然環境:
地盤や土壌、空気汚染など建設現場周辺の環境に影響が出ないように対策を行う - 周辺環境:
重機の音や振動、騒音や粉塵、車や重機の排気ガスなど、建設現場周辺の住民に影響が出ないように対策を行う - 職場環境:
現場の作業員が働きやすい環境を整えるための対策を行う
上記の管理項目で示したように、どれか1項目だけでも欠けるだけで現場は「悪い」という評価になります。そのため、施工管理技士としてそれぞれの項目で求められる技術を培いつつ、良いモノを造ることが重要です。
施工管理と現場監督は同じ仕事?違いは?
施工管理は「現場監督」と表現されることがあります。現場監督は俗称のようなもので、基本的には同じ意味として使われるのが一般的です。
会社や現場によっては、施工管理は施工計画・工程管理・資材発注などを含めた業務を意味するのに対し、現場監督は現地での安全指導や品質管理を指すこともあります。
また、もうひとつの似た言葉が「現場代理人」、いわゆる“所長”です。現場代理人は、工事請負業者の経営者の代理として工事の責任者を務める役割。現場代理人は法的な配置義務はありませんが、公共工事や大規模工事では契約によって配置が求められるケースが一般的です。現場代理人は施工計画などの責任者となるだけでなく、工事をスムーズに進めるための社内外関係者との調整業務を任されることから、幅広い高度な知識とコストマネージメント能力が求められます。
詳しくは後述しますが、施工管理(現場監督)は資格を持っていなくても従事することが可能です。一方で、国家資格を取得したり、実績を積み重ねたりすることで、ステップアップを目指しやすい職業でもあります。現場代理人に選任されるほどの実績を積むことができれば、長期にわたり会社から求められる人材となれるでしょう。
施工管理の仕事の一日の流れ
ここでは、短期的な工程作成を任される中堅社員を想定した施工管理の1日の流れをご紹介します。担当する役割によって1日の流れは変わりますが、参考にしてみてください。
7:30 | 朝礼の準備、新規入場者の受け入れ |
8:00~8:30 | 朝礼(作業説明、立入禁止エリアの共有、体操) |
8:30~9:30 | 現場巡回(品質・安全管理) |
9:30~11:00 | 施工計画(工程作成、職人との個別調整) |
11:00~11:30 | 昼礼(全職長に週間工程や翌日の作業を説明、課題の調整) |
11:30~12:00 | 昼礼での課題を個別調整 |
12:00~13:00 | 昼休憩 |
13:00~15:00 | 施工計画(製作図の確認、品質管理資料の整理) |
15:00~17:00 | 打ち合わせ(設計者や建築主など) |
17:00~17:30 | 現場巡回(品質・安全管理) |
施工管理の仕事のやりがい
非常に忙しく、心身への負担が大きい施工管理の仕事ですが、多くの人が続けるこの仕事のやりがいとはなんでしょうか。
やりがいのひとつは、大きなものをつくりあげる達成感でしょう。多くの関係者と携わりながら施工計画を進め、数々の課題をクリアして竣工を迎えたときは、大きな達成感を味わえます。それまでの苦労があるからこそ達成感は強まり、建築主・設計者・施工管理の仲間・職人など、多くの人とその喜びを共有できるため、これ以上ない幸福を感じられます。
もうひとつのやりがいは、自身の価値を強く感じられることです。施工管理は、若いうちから特定の職種の担当を任され、工程を管理しながら職人とともに工事を進めます。うまくいけば職人は喜んでくれ、うまくいかなければ叱られるようなケースもあるでしょう。責任が伴うからこそ自身の価値を強く感じられ、経験を積んでその範囲が広がっていくとますます仕事が楽しくなります。
施工管理の仕事に向いている人
先述のとおり、施工管理は常に責任を伴う仕事です。向き不向きもあります。そのため、向かない人はつらく感じることが多いかもしれません。ここでは、施工管理に向いている人の特徴をみていきましょう。
施工管理は“ものづくり”がメインテーマです。そのため、「ものづくりが好き」であることが施工管理に向いている人の最も大きな特徴です。施工管理の役割は、工事全体の施工計画から細かいディテールの検討まで多岐にわたります。理想の建物の実現のために、あらゆる課題に対してものづくりの観点からこだわり抜ける人は、この仕事を楽しめるでしょう。
もうひとつの施工管理に向いている人の特徴は、「ストレス耐性が高い」ことです。建設業は社内外ともに関係者が多いため、施工管理に限らずそれぞれの立場で板挟みになるケースが多々あります。そのような場面で、自身の立場で譲れないことを躊躇わずに発言できる人や、相手を気遣いながらもそれがストレスにならないよう上手に立ち振る舞える人は、施工管理に向いているといえます。
施工管理の資格の種類
後述するとおり、施工管理の仕事は資格を所有していなくても従事することが可能です。しかし、資格を所有することで知識を増やすことができ、また、自身の価値を高めることができます。ここでは、施工管理に関する資格を関連記事とあわせてご紹介しますので、参考にしてみてください。
1級建築施工管理技士/2級建築施工管理技士
施工管理に関する最もベーシックな資格は、国家資格「1級/2級建築施工管理技士」です。施工管理の高度な知識を有することを示せる資格であり、また、所有することで“主任技術者”や“監理技術者”として工事現場に配置されることができます。2級は工事の規模に制限がありますが、1級であれば規模の制限なくポストを得られるので、活躍の場を広げられるでしょう。
1級土木施工管理技士/2級土木施工管理技士
土木の施工管理に関しては、国家資格「1級/2級土木施工管理技士」があります。建築施工管理技士と同様に、所有することで土木工事現場の“主任技術者”や“監理技術者”として配置されることが可能です。土木工事に関する幅広い知識を有していることを示せる説得力のある資格なので、関連工事に携わる場合は取得を目指しましょう。
1級施工管理技士補
1級施工管理技士の第一次検定のみで取得できるのが「1級施工管理技士補」です。取得することで“監理技術者補佐”の役割を担えます。取得が難しい「1級施工管理技士」になるまでのステップアップ期間にも、責任ある仕事をできるように設置された資格です。1級施工管理技士の取得を難しいと感じる方は、こちらを取得してみるのもひとつの方法でしょう。
電気工事施工管理技士(1級・2級)
いくつかの工事には専門の施工管理技士の資格が設置されています。そのうちのひとつが、「電気工事施工管理技士」です。電気工事は、衛生・空調設備工事とならんで設備工事の主要項目のひとつで、高度な知識が求められます。特に、電気工事を専門とするサブコントラクターで働く場合は、必須ともいえる資格なので、実務を積みながらでもぜひ取得を目指しましょう。
管工事施工管理技士(1級・2級)
空調設備や衛生設備などの配管工事に関する資格が、「管工事施工管理技士」です。衛生設備などを専門とするサブコントラクターで働く場合は、取得することで活躍の場が大きく広がります。
施工管理技士の資格なしでも施工管理の仕事はできる?
結論は、施工管理技士の資格なしでも施工管理の仕事は出来ます。そのために重要になってくるのが、類似現場における経験実績を積み上げておくことです。
建設分野は、業界的にも経験工学と言われており、新規(未経験者)採用の窓口が非常に狭いです。特に、大手5大ゼネコンや準大手ゼネコンと呼ばれる企業への転職(社会人技術系採用)を希望する場合、原則、建設会社で実務経験のある人が対象になります。
そんな中で、病院・学校・商業ビル工事などの現場経験を保有していると、企業側からも必要な人材になるケースが多いのが現状です。専門的な現場は、工期が長い傾向があり、一定の実績があると類似現場への即戦力として派遣することが出来ます。
加えて、経験工学ならではの知見から、自分の知っている分野、かつ経験したことが場所(会社や土地)を変えるだけで仕事が出来ることから転職者の心理的ハードルも低くなることもメリットの一つです。
以下の記事で建設業界で好条件の転職を実現する方法を解説ししています。こちらもぜひ参考にしてください。
ゼネコンへの転職については、以下の記事で詳しく紹介しています。建築業界で転職を希望される方はぜひ参考にしてください。
施工管理技士の資格は取ったほうがいい?
結論は、国家資格(施工管理技士1・2級)の取得を強くお勧めします。
たとえば、大手5大ゼネコンや準大手ゼネコンと呼ばれる企業への転職(社会人採用)を希望する場合、原則、「建築施工管理技士1級」の資格保有が募集条件となっている場合が多いです。本資格を保有していると管理技術者として案件受注条件の一助になるため、企業側からも欲しい人材になることが出来ます。
そのほかの例でいうと、建築施工管理技士には2級資格もあり、下請負金額が4,000万未満までの工事を受注することが出来るようになります。地方中小ゼネコンであれば、2級でも受注の一助になるケースが多く、企業側のメリットも少なからずありますが、本業界で活躍を目指すならば1級の資格が必要になります。本資格のメリットは給料にも大きな差が出る企業もあることに留意して取得を前向きに検討することが重要です。
施工管理に求められるスキル
さて、施工管理における管理項目は理解いただけたかと思います。次は、施工管理に求められるスキルに関して解説したいと思います。
明確な答えのある項目ではないため、主観によるところが大きいかと思いますが、「技術力」と「人間力」、この2つのスキルが施工管理の仕事には必要となります。それぞれを詳しく解説します。
技術力
2級建築施工管理技士など、比較的難易度の低いものから取得を考えるのも技術力を身に付ける方法の一つです。資格に関しては後述しますが、施工管理技士1級、2級を取得するために学習時間を確保することが技術力向上の第一歩となるでしょう。
もちろん技術力は現場でも学べますし、目に見えない技術力は下請け業者として身に付ける分には大きいですが、施工管理技士として従事するためには目に見える資格を持つことが重要です。
人間力
施工管理の仕事では人間力も重要なスキルです。現場では日常的に不具合が発生します。職人や発注者とコミュニケーションをとる力はもちろんのこと、偶発的な問題が発生した場合でも職人に動いてもらうためには人情や人徳といった人間力が非常に重要になるのです。
下記の動画で施工管理の仕事に向いている人・向いていない人を紹介しています。こちらもぜひ参考に。
施工管理の転職先の例
ここでは、施工管理の仕事をできることで考えられる転職先をいくつかご紹介します。
デベロッパー
都市やマンションなどの大規模開発を行うデベロッパーでは、さまざまな専門家が必要とされ、建築や土木の施工的な強みをもつ人材もそのひとつです。開発者として風上でプロジェクトに携わりたい場合はよい選択肢でしょう。
プロパティマネジメント
プロパティマネジメントとは、不動産の所有者の代わりにオフィスや商業施設などの運営管理を行う仕事です。建物の維持管理において、施工管理で培った知識や技術が役に立ちます。
メーカーの工場の管理
メーカーは自社の工場に建物の維持管理をする担当者を設置しています。工場での不具合は迅速に対応する必要があるため、施工管理の知見をもった人材が適しています。また、工場を新築する計画がある場合、プロジェクトに配置され、設計者やゼネコンとの調整を任させるケースもあるようです。
施工管理の平均年収はどれくらい?
施工管理の仕事の平均年収は、求人ボックスによると“445万円”前後です。国税庁の民間給与実態統計調査では、令和3年度の平均年収は“443万円”程度なので、施工管理は平均程度の年収ということになります。
施工管理の給料は高いと言われるのはなぜ?その理由
求人サイトなどの平均年収が日本の平均と比べてそれほど高くないにも関わらず、施工管理の給料は高いと言われるのはなぜでしょうか。
その理由は、実績に応じてステップアップを望めるからでしょう。大手ゼネコンともなれば他の業種と比べても大企業です。このような企業であれば、若いうちでも600万円程度の年収が期待でき、実績を積んで所長クラスになればより高い年収を得られます。
企業の規模によって差はありますが、資格の有無や携わってきたプロジェクトの実績、役職によって自分に力に見合ったステップアップを期待できます。このようなことから、施工管理の給料は高いというイメージを持たれているのでしょう。
施工管理の求人募集例
最後に、「建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、施工管理の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年9月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
大手ハウスメーカーの施工管理の求人
- 仕事内容:建築施工管理(新築・改修・リフォーム)
- 応募条件:高卒以上、要普通自動車免許、建築系学部出身(建築士の受験資格あり)または施工管理の実務経験(規模問わず)、一級建築士、二級建築士、一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(技士補可)の資格にいずれかの資格
- 週休2日制(日祝他、月2~4回月曜休み)
- 年収3,500,000円 〜 7,500,000円
- 資格取得奨励制度(1級建築士:120万円等)あり
各種資格手当ありの求人
- 仕事内容:木造住宅の施工管理
- 応募条件:高卒以上、普通免許(AT限定可)、2級建築施工管理以上
- 完全週休2日制(日曜+他1日)、年間休日121日
- 年収3,300,000円 〜 10,000,000円
- 資格手当(建築士:1級/2万5000円・2級/2万円、建築施工管理技士:1級/2万円・2級/8000円、宅建:2万円など)あり
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おわりに
ここでは、建築の施工管理の仕事内容と求められるスキルに加えて、転職する際に有利になる資格と理由を解説しました。建設業は、一つの企業以外でも使える資格のため、転勤に伴い地方へ移動しても同業種の仕事に就くことが可能です。この記事を読んで一人でも多くの建設業従事者が増える事、資格受験者が増えることを願っています。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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