電気工事施工管理技士(1級・2級)の資格紹介、電気工事士との違いから取得するメリット、転職先例・求人例まで総解説

電気工事施工管理技士(1級・2級)の資格紹介、電気工事士との違いから取得するメリット, 転職先の例まで総解説

電気工事の仕事で実績をあげている方のなかには、電気工事施工管理技士に興味がある方もいるのではないでしょうか。上司から資格取得を勧められ、どのような資格か調べ始めた方もいるかもしれません。電気工事施工管理技士ができることやメリットには何があるか、知りたい方も多いでしょう。

この記事では電気工事士との違いや資格を取得するメリットも含めて、電気工事施工管理技士について詳しく解説します。資格を知り、スキルや給与、働きがいの向上に役立てましょう。

電気工事施工管理技士は何ができる資格?

電気工事施工管理技士は、電気工事を営む会社や工事現場で欠かせない資格です。以下の職責を担えることができます。

  • 電気工事の営業所に必須の「専任技術者」になれる
  • 工事現場に必須で、工事の管理を行う「主任技術者」「監理技術者」になれる

このように、電気工事施工管理技士は、電気工事に関する会社で求められる資格です。こうした仕事を担当できるのは、大きな強みとなるでしょう。

ただし、1級と2級ではできる業務の範囲が異なります。電気工事の仕事でよく知られている「電気工事士」との相違点も含めて、確認していきましょう。

なお電気工事の施工管理がどのような仕事なのかという解説は、以下の記事をご参照ください。

また、その他の施工管理の資格や仕事内容については以下の記事をご確認ください。

1級と2級の違い

電気工事施工管理技士の1級と2級では、以下に挙げる相違点があります。

項目 1級 2級
工事現場に配置すべき技術者 主任技術者に加えて、監理技術者にもなれる 主任技術者のみ可能
営業所の専任技術者 一般建設業・特定建設業ともに可能 一般建設業のみ可能
実務経験が無い方の出願 不可
(ただし、2024年度からは、第一次検定のみ可となる予定)
第一次検定のみ受験可能
資格取得に必要な実務経験年数 3年~15年 1年~8年

1級は以下のように、下請業者への発注額が大きな工事や、受注額そのものが大きい工事を扱う元請企業で活躍できることが強みです。

  • 下請契約の合計額が4,500万円以上となる工事で必要な「監理技術者」
  • 下請契約の合計額が4,500万円以上となる場合に必要な「特定建設業許可」を持つ企業

一方で2級の場合は実務経験がない方でも第一次検定を受験でき、合格すると技士補になれます。実際に、2級電気工事施工管理技士補になった高校生もいます。必要な実務経験の年数も、2級のほうが1級より短いです。

電気工事士資格との違い

電気工事士は、よく知られている資格の一つです。両者の違いを、以下の表にまとめました。

項目 電気工事施工管理技士 電気工事士
認定するスキル 電気工事の施工管理を適切に行えるスキル 電気工事の実作業を安全に行えるスキル
受験資格 2級の第一次検定を除き、所定の実務経験がないと出願できない 不要。ただし1級は合格しても3年以上の経験がないと免状を受け取れない
技能試験の有無 なし 第一種・第二種とも、学科試験の合格者に課される
学科試験・第一次検定のみ合格者の扱い 技士補の資格を得られる。第二次検定には何度でも出願可能 特に資格は得られない。次回の技能試験は免除される

電気工事施工管理技士は工事現場を管理・監督する方を、電気工事士は電気工事の実作業に携わる方を対象とした資格です。どちらも電気工事に関する資格ですが、対象となる職種は異なるわけです。

また、電気工事施工管理技士の場合、第一次検定に合格すると電気工事施工管理技士補になれ、さまざまな工事現場で活躍できます。第二次検定に出願する時期もご自身で選べるとともに、合格するまで何度でも受験できます。

一方で電気工事士の場合は、学科試験に合格すると次回の技能試験は免除されるものの、その後は学科試験から受験し直さなければなりません。

電気工事士の資格については以下の記事で詳しく解説しています。

電気工事施工管理技士の資格を取るメリットは?

電気工事施工管理技士の資格を取ることには、さまざまなメリットがあります。ここでは3つの項目に分け、どのようなメリットがあるか解説していきましょう。

現場の主任技術者や営業所の専任技術者として社内で貴重な人材になれる

電気工事施工管理技士は、工事現場の主任技術者や営業所の専任技術者になれる資格の一つです。あなたが資格を取ることで、会社は工事現場や営業所を増やせます。ご自身の高いスキルも示せるため、職場で高い評価を受けることもできるでしょう。

また、電気工事施工管理技士を雇用する会社は、公共工事を受注しやすくなります。この点で会社の発展に貢献できることも、メリットに挙げられます。

収入のアップが期待できる

電気工事施工管理技士は、現場を管理・監督する仕事を任される資格です。一般の作業員よりも、高い給与を得られるでしょう。資格による手当を設ける企業もあります。賞与も上がるため、全体的な収入のアップも期待できます。

より良い転職先を見つけやすくなる

施工管理技士は不足しているため、多くの企業で求人が行われています。お勤めの企業の待遇に不満がある、より高いレベルにステップアップしたいという方も、より良い転職先を見つけることが可能です。ご自身の経歴や魅力を適切にアピールすることで、今よりも働きがいのある企業に転職しやすくなるでしょう。

電気工事施工管理技士になると、どんな転職先がある?

電気工事施工管理技士は、以下のとおり多種多様な業種で求められています。

  • 電気工事会社
  • 設備管理会社
  • 建築業者
  • 設備工事会社
  • 太陽光発電設備業者

どの転職先でも資格を活かすことはできますが、携わる案件や設備は大きく異なります。あらかじめ仕事内容を調べイメージしたうえで、活躍できそうと思った企業に応募するとよいでしょう。

電気工事施工管理技士試験の概要

ここからは電気工事施工管理技士になるために合格が必要な試験「電気工事施工管理技術検定」の概要を解説します。試験は1級と2級の2種類に分かれており、第一次検定と第二次検定の両方に合格しなければなりません。

出題対象の科目と解答方式は、1級と2級で共通です。

  • 第一次検定:電気工学等、施工管理法、法規(マークシートによる選択式)
  • 第二次検定:施工管理法(マークシートによる選択式、および記述式)

1級と2級の違いを、以下の表にまとめました。

項目 1級 2級
実務経験 学歴や資格、実務経験の内容などにより、3年から15年 学歴や資格、実務経験の内容などにより、1年から8年
試験の実施回数 年1回(第一次検定と第二次検定は別の日に実施) 第一次検定:年2回
第二次検定:年1回
試験地 10箇所 13箇所
試験時間 第一次検定:4時間30分
第二次検定:3時間
第一次検定:2時間30分
第二次検定:2時間
合格ライン 第一次検定・第二次検定ともに60%以上
ただし、第一次検定においては、施工管理法(応用能力)で50%以上の正答も必要
第一次検定・第二次検定ともに60%以上
受験手数料 第一次検定・第二次検定ともに13,200円(両方受験する方は26,400円) 第一次検定・第二次検定の両方:13,200円
第一次検定・第二次検定のどちらか:6,600円

第一次検定の合格者は、第二次検定に進みます。第二次検定では、実務経験を踏まえて解答する設問があります。日ごろからどのような職務を経験し、どのような創意工夫を行ったか記録しておくとよいでしょう。

電気工事施工管理技士試験は難しい?合格率からみる難易度

試験の出願を検討するうえで、難しいかどうかは重要なポイントの一つです。電気工事施工管理技士試験は、難しいのでしょうか。ここでは合格率を中心に、難易度がどの程度か解説していきます。

1級電気工事施工管理技術検定の合格率

1級の合格率は、どのくらいなのでしょうか。過去5年間に実施された試験の結果を、以下の表にまとめました。

実施年度 第一次検定(学科試験) 第二次検定(実地試験)
令和4年度 38.3% 59.0%
令和3年度 53.3% 58.8%
令和2年度 38.1% 72.7%
令和元年度 40.7% 66.3%
平成30年度 56.1% 73.7%

数字だけを見ると、やさしい試験のように感じられます。しかし、1級には実務経験を含めた受験資格があることを忘れてはいけません。3年以上の実務経験がない方は、出願すらできないわけです。

豊富な実務経験を積んだ方ばかりが受験する試験において、第一次検定は40%~50%の合格率にとどまっています。この関門をくぐり抜けた方が受験する第二次検定で、さらに3割から4割の方が不合格となります。プロの方でも多くの方が合格できない試験の難易度は高いといえるでしょう。

2級電気工事施工管理技術検定の合格率

2級の合格率は、第一次検定の前期と後期、第二次検定それぞれについて公表されています。以下の表でご確認ください。

実施年度 第一次検定(学科試験)・前期 第一次検定(学科試験)・後期 第二次検定(実地試験)
令和4年度 59.3% 55.6% 61.8%
令和3年度 60.3% 57.1% 68.7%
令和2年度 (中止) 58.5% 64.1%
令和元年度 56.3% 50.0% 61.3%
平成30年度 65.3% 66.3% 57.4%

2級の第一次検定は、未経験者でも受験できます。合格率は50%~60%ありますから、試験対策をしっかり行った方の多くは合格できる試験です。

一方で第二次検定は、受験資格が設けられています。出願できる方は実務経験者に限られる一方で、合格率は60%~70%にとどまります。3分の1の方が不合格となる試験の難易度は、低くありません。過去問などをよく確認して、万全な準備を行うことをおすすめします。

電気工事施工管理技士の平均年収

「求人ボックス 給料ナビ」では、電気工事施工管理技士の平均年収を496万円と公表しています。この金額は、電気工事士(平均年収413万円)よりも2割程度高いです。また国税庁が「令和3年分 民間給与実態統計調査」で公表した給与所得者全体の平均給与(443万円)よりも、50万円ほど高くなっています。

全体の給与幅は、337万円~923万円と広範囲におよびます。300万円~500万円の年収額にとどまる方が多い一方で、500万円を超える年収を得る方も少なくありません。経験を積み実力を高めることで、年収のアップにつなげられる資格です。

電気工事施工管理技士の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、電気工事施工管理技士の資格保有を応募条件に含む求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

創業70年のゼネコンの求人例

  • 仕事内容:電気・水まわり・空調・昇降機など設備全般に関する設計業務
  • 応募条件:一級建築士、1級管工事施工管理技士、1級電気工事施工管理技士、建築設備士
  • 年間休日:120日
  • 年収5,000,000円 〜 7,000,000円
  • 名証2部上場の関連会社で資金面で安定した経営を誇る

尚、建築士の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

東証プライム上場のゼネコンの求人

  • 仕事内容:設備設計・設計監理業務(電気設計と機械設計)
  • 応募条件:建築設備士、1級管工事施工管理技士、1級電気施工管理技士
  • 土・日・祝休日
  • 年収5,500,000円 〜 9,970,000円
  • 50カ国以上での工事実績を持つ

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おわりに

電気工事施工管理技士の資格を取ることで、ご自身の能力と待遇のアップが見込めます。主任技術者や営業所の専任技術者になることで、社業への発展にも貢献できるでしょう。実力のある方は、ぜひ目指していただきたい資格です。

試験の合格率は高めですが、受験資格があるにも関わらず多くの不合格者が出ているため、難易度は低くありません。実務経験豊富な方でも、試験対策は必須です。しっかり準備を行って合格を勝ち取り、さらなる活躍につなげましょう。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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