1級建築施工管理技士の資格を取って転職を有利に!2級との違いや取得するメリット、取得難易度、試験内容を解説
建築施工管理技士には、1級と2級があります。1級は出願のハードルが上がるぶん、転職に有利となる資格です。特にゼネコンなどで、1級建築施工管理技士が求められています。
資格の取得により、どのようなメリットがあるのでしょうか。また試験は難しいのでしょうか。この記事で、しっかり確認していきましょう。
目次
1級建築施工管理技士とは
1級建築施工管理技士は国家資格の一つで、「一般財団法人建設業振興基金」が実施しています。施工管理の対象となる建物に制限がないため、ゼネコンや大規模な建設現場で活躍できる資格です。2級の上位資格であるため、合格には高いスキルが求められます。
試験は年1回、第一次検定と第二次検定の2段階で実施されます。合格者は国土交通省に申請することで、有資格者と認定されます。
2級建築施工管理技士との違い
1級と2級の相違点は、2つあります。
1つ目は、2級の合格者が主任技術者になれることに対し、1級の合格者は主任技術者や監理技術者になれることが挙げられます。1級をお持ちならば、どの建築工事でも監督業務に就けるというわけです。
国土交通省は建設業の許可要件を、一般建設業と特定建設業に分けて定めています。発注者から直接請け負った工事について、下請け契約の契約金額が4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上となる場合は特定建設業となります。この工事現場に必要な監理技術者は2級建築施工監理技士ではなれず、1級の資格が必要です。
もう1つの相違点は、専門分野に特化していないことが挙げられます。2級は建築・躯体・仕上げの種別に分かれており、主任技術者となれる工事の種類も種別ごとに異なっていました。1級に合格すれば、すべての工事で監理技術者になれます。そのぶん合格には、建築工事の全般に関する知識とスキルが求められます。
2級建築施工管理技士の資格内容については、以下の記事で詳しく解説しています。
1級建築施工管理技士の受験資格
1級建築施工管理技士の受験資格は、一次試験と二次試験で異なる部分があります。それぞれの受験資格の内容を確認していきましょう。
一次試験(第一次検定)の受験資格
一次試験の受験資格は、「イ」「ロ」「ハ」「ニ」の4つの区分に分かれます。必要な経験年数を確認していきましょう。「イ」「ロ」「ハ」に該当する方は、一次試験と二次試験の両方に出願できます。
2級建築施工管理技士、建築士いずれも持っていない方は、区分「イ」となります。必要な実務経験の年数を確認しましょう。あわせて、1年以上の指導監督的実務経験も必要です。
区分 | 学歴・資格 | 建築施工管理の実務経験年数 (1年以上の指導監督的実務経験を含むこと) |
||
---|---|---|---|---|
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学 専門学校の「高度専門士」 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の「専門課程」 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 15年以上 | |||
ロ | 二級建築士試験合格者 | 合格後5年以上 | ||
ハ | 2級建築施工管理技術検定 第二次検定合格者 (※令和2年までは実地試験) |
合格後5年以上 | ||
2級建築施工管理技術検定 第二次検定合格後、実務経験が5年未満の者 (※令和2年までは実地試験) |
短期大学 高等専門学校(5年制) 専門学校の「専門士」 |
イの区分参照 | 卒業後9年以上 | |
高等学校 中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の「専門課程」 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | ||
その他(学歴は問わず) | 14年以上 | |||
二 | 2級建築施工管理技術検定 第二次検定合格者 (※令和2年までは実地試験) |
実務経験年数は問わず |
指定学科には工学や建築、土木、林業、情報工学などの学科が含まれます。詳しくは建設業振興基金が毎年公表する「受検の手引」をご確認ください。
二級建築士の方は、区分「ロ」となります。合格後5年以上の実務経験と、1年以上の指導監督的実務経験が必要です。
2級建築施工管理技術検定・第二次検定の合格者も受験可能です。試験合格後5年以上の実務経験を有する方、または以下いずれかの要件を満たした方は区分「ハ」となります。1年以上の指導監督的実務経験が必須であることに注意してください。2級の資格をお持ちでも要件を満たさない方は区分「ニ」となり、一次試験しか出願できません。
なお、一級建築士で区分「イ」「ロ」「ハ」のいずれかに該当する方は、一次試験をスキップできます。また、大卒や専門学校の高度専門士をお持ちの方は、一級建築士をお持ちの場合を除き、区分「イ」で出願するとよいでしょう。必要な実務経験年数がより少なく済むメリットがあります。
二次試験(第二次検定)の受験資格
二次試験は、一次試験の区分「イ」「ロ」「ハ」いずれかに該当することが最低条件です。従って、実務経験がない方の受験はできません。そのうえで、以下いずれかの項目に該当する方が受験できます。
- 平成15年度から前年度までの一次試験合格者
- 本年度の一次試験合格者で、出願時に「第一次・第二次検定」の試験区分を指定した方
- 一級建築士
1級建築施工管理技士を取得するメリット
1級建築施工管理技士の取得には、3つのメリットがあります。どのようなメリットがあるか、順に確認していきましょう。
より規模の大きな仕事を任されやすい
1級建築施工管理技士は特定建設業に該当する建設会社でも、監理技術者として活躍できます。これは2級の有資格者に制約があることと対照的です。
大規模なプロジェクトを任され、存分に能力を発揮できるでしょう。規模の大きな仕事を指揮できることは、技術者の醍醐味です。
転職活動を有利に進められる
1級建築施工管理技士は実務経験がないと受験できず、合格も難しい資格です。資格を持っていること自体が業界で長年活躍した証であり、高いスキルの証明です。
このため即戦力として、転職活動を有利に進められることでしょう。40代や50代の方でも、この資格があると転職しやすいこともメリットに挙げられます。
収入が上がりやすい
1級建築施工管理技士は2級と比べて、収入が上がりやすいこともメリットに挙げられます。求人ボックスによると2級の平均月給が373,000円であることに対し、1級は404,000円です。2級をお持ちの方が1級を取得すれば、年間で少なくとも35万円以上の増収が期待できます。
そもそも1級建築施工管理技士は大規模な工事現場において、不可欠の存在です。高いスキルが求められるため、誰でも取れる資格ではありません。このため有資格者は高い評価を受け、年収も高くなります。
1級建築施工管理技士を持っていると有利になる転職先
1級建築施工管理技士の取得で有利になる転職先は、大きく分けて2つあります。いずれも大きな、また社会に役立つ仕事に携われるメリットがあります。
ゼネコン
ゼネコンでは発注元企業から元請けとして直接受注し、多くの下請け企業と協力して建物を作り上げています。監理技術者を要する工事の多さは、ゼネコンならではの特徴です。
1級建築施工管理技士の有資格者は監理技術者になれるため、ゼネコンへの転職に有利となります。ただし、競争率が高い場合もあるため、ご自身が持つ高いスキルのアピールが欠かせません。
公共工事が主力事業の建設会社
1級建築施工管理技士は、公共工事を主力事業とする建設会社でも有利です。それは公共工事の入札や受注にあたり、決算期ごとに経営事項審査を受ける必要があるためです。経営事項審査のなかには「技術職員数」という項目があり、資格により1名当たりの点数が異なります。
- 1級建築施工管理技士、1級建築士:5点(監理技術者資格者証を交付されている者は6点)
- 2級建築施工管理技士、2級建築士:2点
- 実務経験10年の主任技術者:1点
高い点数をもらえるほど入札に有利となり、公共事業を受注しやすくなります。公共事業を主力とする企業では、ぜひ欲しい人材といえるでしょう。
1級建築施工管理技士の試験内容
試験内容を知ることは、短い時間で適切な準備を行う必須条件です。ここからは一次試験と二次試験について、試験内容を確認していきましょう。
一次試験(第一次検定)
第一次検定はマークシート方式で実施され、以下のスキルを問う問題が出題されます。
問題の内容 | 出題形式 | 問題数・解答数 |
---|---|---|
建築学等、施工管理法、法規の知識を問う問題 | 四肢択一式 | 必須問題:20問
選択問題:46問(34問を選択して解答) |
施工管理の応用能力 | 五肢二択式 | 6問(全問必答) |
全問選択式だからと侮らず、しっかり準備をして臨みましょう。
二次試験(第二次検定)
第二次検定は、施工管理法の知識と能力を試す試験です。出題形式は記述式が基本で、一部に選択問題が含まれます。また第一次検定と異なり、すべての設問に解答しなければなりません。
設問 | 問題の内容 | 出題形式 |
---|---|---|
問題1 | 実務経験をもとに解答する設問 | 記述式 |
問題2~4 | 監理技術者にふさわしい応用能力を問う設問 | 記述式 |
問題5~6 | 施工管理に関する知識を問う設問 | 五肢択一式 |
試験時間は3時間です。記述式の設問が多いため、正しい知識がないと合格は期待できません。特に問題1への解答は、実務経験や品質管理の経験が求められます。
二次試験では施工管理者としての意識が評価される
二次試験問題1は、実務経験をもとに回答する設問です。令和5年度1級建築施工管理技術検定では、以下のような内容でした。
- あなたが現場で重点的に品質管理を行った事例について、「品質管理項目とそれを設定した理由」「品質管理項目について実施した内容とその確認方法及び検査方法」を記述しなさい。
- あなたの今日までの建築工事の経験を踏まえて、「品質管理を適確に行うための作業所における組織的な取組」「その取組によって得られる良い効果」を記述しなさい。
これらは、参考書に書いてある内容ではなく、自分が実務で取り組んできた施工管理業務について答えるものです。1級施工管理技士試験は、知識だけでなく、施工管理者としての意識も評価される試験といえるでしょう。
充実した実務経験を積んでいれば優れた回答を用意しやすくなるので、高い意識を持って実務に取り組むことが大切です。
参考: 一般財団法人建設業振興基金「令和5年度 1級施工管理技術検定 第二次検定問題」
1級建築施工管理技士の取得難易度は高い?
1級建築施工管理技士は、難しい試験なのでしょうか。過去5年間の推移を、以下に挙げました。
年度 | 第一次検定(学科試験) | 第二次検定(実地試験) |
---|---|---|
令和3年度 | 36.0% | 52.4% |
令和2年度 | 51.1% | 40.7% |
令和元年度 | 42.7% | 46.5% |
平成30年度 | 36.6% | 37.1% |
平成29年度 | 39.7% | 33.5% |
一次検定・二次検定ともに、35%~50%の合格率で推移しています。合格率だけを見ると難易度が高くないように見えますが、そうではありません。両方の試験をあわせた合格率は13%~20%程度であり、狭き門です。
加えて本試験は出願の際に実務経験が求められるため、業務経験が豊富なプロフェッショナルでないと受験すらできないことが特徴です。このような受験者のなかで20%以下の合格率というわけですから、難易度はとても高い試験といえるでしょう。
1級・2級建築施工管理技士の平均年収
1級建築施工管理技士を取得するメリットは、年収にもあらわれています。求人ボックスが公表したデータをもとに、1級と2級の平均年収を確認していきましょう。
建築施工管理技士 | 平均月給 | 平均年収 (ボーナスは2カ月分と仮定) |
---|---|---|
1級 | 40万4,000円 | 565万6,000円 |
2級 | 37万3,000円 | 522万2,000円 |
また施工管理の平均年収は、445万円となっています。1級建築施工管理技士の平均年収とは、およそ120万円の差があります。また2級建築施工管理技士の方が1級を取得すると、40万円以上の年収アップが期待できます。1級建築施工管理技士は、年収のアップが期待できる資格です。
1級建築施工管理技士の求人募集例
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(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
資格手当ありの求人
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- 資格手当(月):
1級建築施工管理技士 30,000円
2級建築施工管理技士 10,000円
1級建築士 30,000円
2級建築士 20,000円
宅地建物取引士 30,000円
商業建築の工事監理の求人
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35歳→年収6,018,000円
40歳→年収6,318,730円
45歳→年収6,616,400円
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おわりに
1級建築施工管理技士の合格も狭き門であるため資格の価値は高く、ゼネコンなど建設会社で重視される資格となっています。転職の後押しともなり、年収のアップも期待できます。
受験資格で実務経験が重視される1級建築施工管理技士の受験は、長年建設業で活躍した方の特権です。「大きな仕事を任されたい」「建設の仕事で一旗あげたい」という方は、ぜひ合格を目指し取り組んでください。
施工管理の仕事内容や求められるスキル等は、下記の記事で詳しく解説しています。
また、建築士の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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