設備設計一級建築士の資格とは?受験資格や講習内容、修了率をまとめて紹介

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大規模建築物が増加している現代では、設計業務にも専門性が求められています。一級建築士の次のステップとして、設備設計一級建築士を考えている方もいるのではないでしょうか。そもそもどのような条件をクリアすれば資格を取れるのかということは、気になるポイントです。

この記事では設備設計一級建築士について、詳しく解説します。資格の内容やメリット、受験資格や講習内容、修了率について確認していきましょう。

設備設計一級建築士の資格とは?

設備設計一級建築士は一級建築士の上位となる資格で、設備設計に関するプロフェッショナルです。3階建て以上で床面積が合計5,000平方メートルを超える大規模建築物でも、自ら設備に関する設計を行えます。また、一級建築士が行った設備設計について法適合確認を行える資格でもあります。

設備設計一級建築士は、建築設備士よりも高いレベルの資格です。建築設備士は建築士に対する助言にとどまる一方で、設備設計一級建築士は自ら設計者になれるという相違点があります。

設備設計に関する項目は、以下のとおり多岐にわたります。

  • 電気設備
  • 空調・換気設備
  • 給排水衛生設備
  • 輸送設備(エスカレーターやエレベーターなど)

いずれも、屋内で安心・快適に過ごすうえで欠かせない設備です。建物の頑丈さを確保することと同じくらい、重要な役割を持つ資格といえるでしょう。
尚、建築士のその他の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

設備設計一級建築士の資格を取るメリットは?

設備設計一級建築士の資格を取ることで、さまざまなメリットが得られます。ここでは3つの観点から、どのようなメリットが得られるか確認していきましょう。

大規模建築物の設計には欠かせない一方で、資格を持つ方が少ない

設備設計一級建築士の人数は、令和4年の講習修了者を加えても6,525名にとどまります。一方で一級建築士の人数は、令和4年4月1日の時点で375,084名です。現状では設備設計一級建築士を持つ方は、一級建築士の約1.7%しかいません。

設備設計一級建築士は、大規模建築物の設計に欠かせない役割を担っています。3階建て以上で床面積が合計5,000平方メートルを超える建物の設備を設計する場合は、設備設計一級建築士のチェックを受けなければ設計を完了できません。

大規模建築物の設計業務に欠かせない役割を果たす一方で、資格を持つ方は少ないわけです。職場において、欠かせない存在となることでしょう。

社内での地位や待遇が向上する

もし社内に設備設計一級建築士がいれば、どの会社でも貴重な存在となります。長く社内で活躍してもらうため、相応の地位と待遇が与えられることでしょう。昇進につながりやすいことは、メリットの一つに挙げられます。また、社内で「設備設計のプロ」とされ、頼られる存在になることをメリットに感じる方もいることでしょう。

金銭的なメリットも、見逃せない項目に挙げられます。給与も一級建築士より高く設定される可能性があり、年収のアップが期待できます。企業によっては、資格手当が支給されるかもしれません。

転職も有利になる

設備設計一級建築士は、ゼネコンや設備設計事務所などで特に求められています。設備設計一級建築士が不足している会社にとって、資格を持つ方はぜひ欲しい人材です。このため転職がしやすいこと、より条件の良い会社への転職を目指せることもメリットに挙げられます。

設備設計一級建築士の将来性

設備設計一級建築士は、将来的にも高い需要が期待できます。近年の建築において、日進月歩の建築設備を自在に操り、快適性を担保する設備設計の重要度は年々増しているからです。

設備設計は、環境配慮という観点でも注目を集めています。企業は、施設の建設にあたり環境に配慮することでSDGsやサステナブルな社会への貢献をアピールし、イメージアップに繋げています。

また、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の概念が広く認知され始めていることも追い風です。ZEBやZEHは補助金を受けられることからも需要が高まっています。

以上のことから、これからもさまざまな建物で設備設計一級建築士が活躍していくことでしょう。

設備設計一級建築士講習の受講・受験資格

設備設計一級建築士講習や修了考査(試験)の受験を申し込める方は、限られます。一級建築士として5年以上、以下に挙げるいずれかの業務に携わった経験をお持ちであることが必要です。いずれも、建築設備に関する業務であることが求められます。

  • 1:設備設計の業務
  • 2:確認審査等の業務
  • 3:「建築設備士」として従事する建築設備に関する業務
  • 4:確認審査等の補助業務
  • 5:工事監理の業務
  • 6:消防同意の審査に関する業務

出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和4年度設備設計一級建築士講習 受講要領」

1番と5番は、平成25年9月までに携わっていた補助業務も業務経験として認められます。また3番は、建築設備士として携わっていた期間と一級建築士として携わっていた期間を合算できます。

一方で建築設備以外の業務、行政での仕事(確認申請の審査業務のみ業務経験の対象)、研究や教育の場合は、業務経験として認められません。

申込み方法は、原則としてインターネットに限られます。講習当日に必要な「受講票」も、事前にマイページからダウンロードして印刷する必要があります。パソコンやインターネットを使えることも申込みの要件となることに注意してください。

設備設計一級建築士の講習内容

設備設計一級建築士の講習は7つの分野について、21時間かけて行われます。スケジュールとともに、以下の表で確認していきましょう。

日程 講義内容(講義時間) 対応する修了考査の科目
初日 建築設備関係法令(2時間)
建築設備設計総論(1時間)
法適合確認(4時間)
法適合確認
2日目 電気設備の設計技術(4時間)
空調・換気設備の設計技術(3時間)
設計製図
3日目 空調・換気設備の設計技術(1時間)
給排水衛生設備の設計技術(4時間)
輸送設備の設計技術(2時間)
設計製図

講習は3日間とも朝10時から正午まで、午後1時から6時まで実施されます。

会場での受講と配信動画の視聴による受講を選べる

令和4年の講習は受講方式として、会場または配信動画の視聴のどちらかを選び、申込みの際に記入する方式です。会場での講習は全国7カ所で実施され、9月下旬から10月上旬のうち連続する3日間で実施されました。一方で配信動画の視聴による講習は、9月26日から10月10日の間で受講できました。

申し込み後、受講方式の変更はできません。但し会場での受講を選んだ方が体調不良となった場合は、前日までに申し出ることで配信動画を視聴する方式への変更が可能です。

建築設備士や科目合格者は、一部の講習が免除される

3日間の講習は、すべて受講することが原則です。講義の一部を欠席した場合は、講習修了となりません。一方で以下の要件に当てはまる方は、一部の講習が免除されます。

保有する資格等 受講すべき科目 出席すべき講習日
建築設備士 法適合確認 初日
前年または2年前の修了考査で科目「設計製図」に合格した方 法適合確認 初日
前年または2年前の修了考査で科目「法適合確認」に合格した方 設計製図 2日目、3日目
前年または2年前の修了考査で科目「法適合確認」に合格した建築設備士 なし なし

免除要件に該当する資格等をお持ちの方は、申込みの際に忘れず申告しましょう。講習に出席すべき日数を減らせるため、実務への影響を最小限に抑えることが可能です。

講習の修了は修了考査により認定される

設備設計一級建築士の講習は、受講すれば自動的に修了できるものではありません。後日実施される修了考査を受験し、合格する必要があります。令和4年は、11月20日に丸一日かけて実施されました。講習の受講後、1カ月半から2カ月後に実施されたわけです。

修了考査は記述式ですが、当年度の講習で使われた「設備設計一級建築士講習テキスト」を参照しながら解答できます。加えて設計製図の科目には、製図の出題もあります。平成30年度から令和4年度の課題は、いずれも「市街地に建つ本社事務所」でした。

修了考査の結果は後日通知され、以下の4種類に分かれます。令和4年の場合は、令和5年1月27日に結果が発表されました。

結果 発行される通知書や特典等
修了 設備設計一級建築士講習修了証が発行される
法適合確認に合格 未修了通知書が発行される。翌々年度までの講習で「法適合確認」が免除される
設計製図に合格 未修了通知書が発行される。翌々年度までの講習で「設計製図」が免除される
未修了 未修了通知書が発行される。特典はない

設備設計一級建築士の修了率

設備設計一級建築士の修了考査は、どのくらい難しいのでしょうか。平成30年度から令和4年度までの修了率と修了者数を、以下の表にまとめました。

年度 修了率 修了者数
令和4年度 67.7% 195名
令和3年度 64.9% 262名
令和2年度 42.8% 146名
令和元年度 67.6% 254名
平成30年度 40.4% 137名

申込区分別の合格率も公表されています。令和4年度の講習について、以下の表で確認していきましょう。

申込区分 修了率 修了者数
1(全科目受講) 46.2% 61名
2(法適合確認のみ受講) 90.9% 10名
3(設計製図のみ受講) 75.0% 18名
4(建築設備士) 87.6% 106名

1回の講習受講と修了考査で修了の判定を受けた方は、半数に届きません。経験豊富な一級建築士ばかりが受講することを考えると、難度の高い資格といえるでしょう。

設備設計一級建築士の転職先の例

設備設計一級建築士は、3階建て以上で床面積の合計が5,000平方メートルを超える建物を設計する際に求められる資格です。以下の職場では資格を活かせるため、代表的な転職先に挙げられます。

  • 1.設備設計事務所
  • 2.組織設計事務所
  • 3.ゼネコン

1番は、設備設計を専門に行う職場です。2番は社内に意匠設計や構造設計の部門が、3番は設計部門に加えて施工部門も持っています。専門性を究めたいのか、幅広いスキルを身につけたいのかを踏まえたうえで、転職先を選ぶとよいでしょう。

設備設計一級建築士の平均年収

求人ボックスでは業種ごとに、設備設計一級建築士の平均年収を公表しています。

  • 設計事務所:597万円
  • ゼネコン:648万円
  • デベロッパー:700万円

年収の幅は300万円~900万円と広範囲ですが、デベロッパーの場合は求人のほとんどで年収500万円を超えています。

一方で「求人ボックス 給料ナビ」では、設備設計の平均年収が435万円、一級建築士の平均年収は499万円と公表しています。設備設計一級建築士は設備設計職に就く方や一級建築士全体のなかでも、高い年収を得られる資格です。

設備設計一級建築士の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、設備設計一級建築士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

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  • 仕事内容:設備設計業務
  • 応募条件:設備設計の実務経験、または一級建築士、設備設計一級建築士、エネルギー管理士、電気主任技術者、建築設備士、技術士、博士(工学いずれかの資格
  • 週休2日制(土・日・祝)、年間休日125日
  • 年収5,000,000円 〜 10,000,000円
  • 世界最高水準の技術力を持つ大手ゼネコン

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  • 年収5,000,000円 〜 10,000,000円
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おわりに

設備設計一級建築士にチャレンジするには、一級建築士として5年以上の経験を積むことが前提です。試験対策講座も少ないため、設備設計一級建築士講習と日ごろの実務経験が合格の鍵となるでしょう。資格取得のハードルを下げたい方は、建築設備士の資格を取ってから目指すこともおすすめです。

資格を取れば社内で貴重な存在となり、地位や収入のアップも期待できます。さらなるステップアップに向けて、ぜひチャレンジしてみましょう。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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