建築士になるまでの流れや勉強方法、キャリアパスを解説

建築士になるまでの流れや勉強方法、キャリアパスを解説

資格を取得したうえで建築の設計・工事監理を行う職業を建築士といいます。この記事では建築士になるまでの流れや、資格取得の勉強方法、その後のキャリアパスについて解説いたします。建築士に向いている人についても説明いたしますので、今後のキャリアプランの参考として、ぜひご覧になってください。

建築士になるには

ここでは建築士に必要な資格や、建築士になるまでの流れを解説いたします。

建築士に必要な資格

建築士の資格は一級建築士・二級建築士・木造建築士があり、扱う建物の規模などによって必要な資格が異なります。すべて国家資格であり、受験資格・試験の難易度も高いので、受験資格をしっかりと確認したうえで、勉強を進めてみてください。

下記の記事ではそれぞれの資格について詳しく解説しています。



未経験でも建築士になれる?

建築士の受験資格を得るには、大学などで建築に関する科目を一定数履修するか、最短で7年の実務経験が必要です。

即戦力を期待される設計事務所などで未経験の方が中途採用され、実務経験として認められる内容の業務に7年間携わるのは非常に難しいのが実情です。そのため、資格を取得して建築士として活躍したい場合は、新卒採用・中途採用に関わらず、学校で必要な科目を履修することをおすすめします。建築は広範囲の専門的な知識が必要となるので、学校で体系的に勉強する内容は実務でも役に立ちます。

短期大学や建築専門学校では効率的に受験資格を得られるので、中途採用の場合には有用な選択肢です。通う学校の種類によって必要な実務経験の長さが変わるので、その点には注意しましょう。

建築士になるまでの流れ

ここでは建築士になるまでの流れの例をご紹介いたします。

新卒採用の場合

令和2年から建築士試験の受験資格が緩和され、大学の指定科目を履修して卒業すれば、すぐに一級建築士を受験できるようになりました。一次試験が7月頃なので、在学中から勉強を進めていた方は1年目、入社してから勉強を始める方は2年目から受験するのが一般的です。試験に合格後、国土交通大臣の免許を受け取り、建築士名簿に登録することで建築士になれます。

免許を受け取るには所定の実務経験(60科目を履修し、大学を卒業している場合は2年)が必要なので、免許を受け取れるようになったタイミングで手続きを進め、建築士となります。

未経験の中途採用の場合

未経験の中途採用を考える場合、二級建築士を取得することもひとつの選択肢です。二級建築士は短期大学などで40科目を履修することで卒業後すぐに受験・免許登録を行えます。さらに、二級建築士であれば、すぐに一級建築士を受験可能です。卒業後に二級建築士試験に合格し、価値を高めたうえで転職活動に取り組み、入社後は一級建築士を目指すことでスムーズにキャリアアップを目指せます。

建築士になるにはどのような勉強をすればいい?

建築士になるにはどのような勉強が必要か、資格取得と能力向上の2つの側面で解説いたします。

資格取得のための勉強

資格取得のための勉強は、必要な内容を効率的にインプットすることが重要です。1級建築士試験に合格するために必要な勉強時間は700~1,500時間とされています。実務と並行して勉強するには、適切な教材を用意し、スキマ時間も活用しながら効率的に進める必要があります。資格学校を利用するかが大きな選択ですので、自分の適正と環境に合わせて勉強方法を選びましょう。

建築士試験は学科試験と製図試験があります。学科試験はマークシート形式の一般的な試験なので、独学で受験する方も多いです。ウェブ教材を扱う資格学校も増えているので、自宅学習用の教材を入手しやすくなっています。試験範囲は広大なので、自分で体系的に学ぶのが苦手な方は資格学校を利用するケースが多いです。いずれにしても、過去問を中心に数をこなし、解ける問題を増やしていくのがポイントです。

製図試験は独学が非常に難しい試験です。なかには独学で製図試験に合格している方もいますが、試行錯誤を繰り返し、数年かけて合格しているケースがほとんどです。金銭的なハードルはありますが、資格学校に通い、アドバイスを受けながらノウハウを身に付けていくことをおすすめします。製図の技術だけでなく、課題条件整理・計画のまとめ・答案作成後の漏れの確認など、試験に合格するためのルーティンを身に付けるのがポイントです。

建築士を目指して勉強する人

よい建築士になるための勉強

よい建築士になるには自己研鑽が欠かせません。街の建物を見る・本を読む・先輩の図面を見る・講演会を聴講する、さまざまな方法で見聞を広め、引き出しを増やすことが重要です。必要なのは建築の勉強だけではないこともポイント。医療系の建物を扱う場合は医療に関する専門的な知識が必要ですし、サッカースタジアムを設計する場合は大会のレギュレーションを学ぶ必要があります。

また、コミュニケーションの仕方を学ぶのも大切な勉強です。建築主の要望をうまく聞き出し、図面と会話を通して施工者に設計の意図を伝えるなど、建築士はコミュニケーションが重要な職業です。シチュエーションによってどのようなコミュニケーションが効果的かを意識して実務に取り組むことでよい建築士に近づけます。

建築士はどのようなキャリアパスが可能?

建築士資格を取得し、設計者として建物に携わるのが建築士の主な在り方ですが、建築士資格が役に立つ職業は建築士だけではありません。ここでは建築士のキャリアパスについてご紹介いたします。

設計者としてのキャリアアップ

建築士が設計者として働く場合、設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカーなどが選択肢となります。設計者の年収は会社によって大きく差があるので、自分の能力に合わせてキャリアアップを目指すのが一つのキャリアパスです。

施工管理者

ゼネコンの施工管理においても建築士資格を持つ高い能力の方は重宝されます。実際に施工を進めるに当たり、建築に関する総合的な知識をもって下請業者と調整できることが重要なためです。ものづくりの現場に携わり、建物を作りあげていきたい方には魅力的な選択肢です。
尚、施工管理の詳しい業務内容や必要な資格等はこちらの記事をご覧ください。

指定確認検査機関

行政に代わり、建物の設計が法基準に則っていることを確認する機関を「指定確認検査機関」といいます。建築士資格を有していることが採用条件であるのが一般的なので、建築士資格を活かして働ける選択肢のひとつです。

建設コンサルタント

大企業では必要な施設が多いため、建設専門の部署を有していたり、建設コンサルタントを抱えていたりする場合があります。設計業務で携わった建築主にヘッドハンティングされ、建設コンサルタントとして活躍している方もいます。

建設コンサルタントの仕事内容について詳しくは以下の記事をご参照ください。

建築士に向いている方

建物は地球上で最大の人工物です。そんな建物を設計し、作りあげていく建築士はとても魅力的な職業です。その一方で、検討事項が多く労働時間が長い、責任が重くストレスが多いなど、肉体的・精神的なタフさが求められます。下記に建築士に向いている人の特徴をまとめるので、参考にしてみてください。

  • ものづくりが好き
  • とことん建築が好きでプライベートでも建物を見るのが好き
  • コミュニケーションが好き
  • 細部までこだわるのが好き
  • 多忙な中でも仕事に優先順位を付け、スケジュールの中で成果を出せる
  • 多くの関係者との調整が得意
  • 体力に自信がある
  • 重責の中でも決断できる

建築士の転職先の例

建築士を求める職場は、数多くあります。「建築士はどのようなキャリアパスが可能?」で取り上げた「設計事務所」「ゼネコン」「ハウスメーカー」「指定確認検査機関」は、代表的な転職先です。それ以外にも建築士は、以下の職場で活躍できます。

  • 建設会社や工務店
  • アトリエ
  • リフォーム業者
  • デベロッパー
  • 不動産売買の業者
  • 官公庁

仕事内容や求められるスキルは、転職先によって大きく異なります。まずはどのような建物に携わりたいか、またどのような形で携わりたいかはっきりさせておくとよいでしょう。そのうえで企業研究をしっかり行うことが、納得できる転職先選びにつながります。

建築士の平均年収

建築士を目指す方は、年収もぜひ知っておきたい項目に挙げられます。「求人ボックス 給料ナビ」では一級建築士の平均年収が499万円であること、500万円以上の年収を得ている方も多いことを公表しています。また二級建築士の年収額は、一級建築士と比べて50万円~60万円下がります。

建築士は、社会人平均以上の年収が期待できる職業です。国税庁が公表した「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、給与所得者の平均年収額が443万円となっています。二級建築士は社会人の平均以上、一級建築士は平均よりも高い年収が期待できる職業です。
尚、建築士の仕事内容や必要な資格についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

未経験可の建築士の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、未経験でも応募可能な建築士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

入社後のサポート体制が充実

  • 仕事内容:お客様へのヒアリング、プランの提案、見積り作成、発注から最終的な引き渡しまで
  • 応募条件:普通自動車免許(AT限定可)
  • 勤務時間:9:30 ~ 18:00 / 時間外勤務有(月平均7時間)
  • 年収3,080,000円 〜 7,700,000円
  • 経験・スキルに応じてマネジメント関連の知識・スキルを学べる

木造新築アパートの設計

  • 仕事内容:賃貸アパートの提案設計・実施設計
  • 応募条件:2級建築士の資格、建築設計の実務経験、未経験歓迎
  • 週休2日制
  • 年収3,500,000円 〜 6,000,000円
  • 資格手当(建築士、施工管理士、宅地建物取引士等)あり、転居を伴う転勤なし

建築業界専門の転職エージェント「建築転職」では、上記以外の未経験可の求人のほか、非公開求人情報も紹介しております。下記から無料登録できます。

↓無料登録はこちらから

おわりに

建築士になるまでの流れや、キャリアパスについて解説いたしました。建築士になるまでのハードルは高く、建築士としての業務はつらいことも多くあります。しかし、建物が完成したときの達成感は言葉を言い表せないほどで、建物の利用者が喜んでいるのを見ると、「また次もがんばろう!」と思える魅力的な職業です。ぜひ計画的に準備を進め、建築士を目指してみてください。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

関連する記事