木造建築士の資格を取るメリット、取得難易度、一級・二級建築士の違いをまとめて解説(資格を活かせる転職先や求人の年収相場も)

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建築士には一級や二級のほかに、木造建築士という資格もあります。木造建築士は、一級や二級建築士よりも難しいのでしょうか。またそれぞれの資格とどのような相違点があるのでしょうか。資格を選ぶ際には、特徴と相違点をしっかり把握することが重要です。

この記事では木造建築士にフォーカスを当て、資格の特徴や難易度、取得するメリットを解説します。そのなかで、一級建築士や二級建築士との違いにも触れます。木造建築士のことを知りたい方は、ぜひお読みください。

木造建築士の資格とは?

木造建築士は、以下の建物を設計・工事監理できる資格です。

  • 平屋か2階建てで、延床面積が30平方メートル以下の建物
  • 木造の平屋か2階建てで、延床面積が300平方メートル以下の建物

このうち「無資格の方は設計できず、木造建築士ならば可能」という範囲は、以下の条件を両方満たす建物です。

  • 延床面積が100平方メートルを超え、300平方メートル以下
  • 木造の平屋か2階建て

試験は年1回実施されます。合格者は所定の手続きを取ることにより、木造建築士の資格を得られます。
尚、建築士のその他の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

木造建築士と一級・二級建築士の違い

木造建築士は、一級建築士や二級建築士と比べて大きな制約がある資格です。以下の建物は、一級建築士や二級建築士でないと設計できません。

  • 3階建て以上の建物
  • 延床面積が300平方メートルを超える建物
  • 延床面積30平方メートルを超える、木造以外の建物

このため「木造建築士ならば、木造のすべての建物を設計・工事監理できる」と考えないように注意が必要です。

一級建築士と二級建築士については、それぞれの記事で詳しく解説しています。


基本的には2級建築士以上の資格がおすすめ

木造建築士は、一級建築士や二級建築士と比べると規模が小さい資格です。参考として、令和5年度の各建築士試験における学科試験の受験者数は以下のとおりです。

一級建築士:28,118人
二級建築士:17,805人
木造建築士:704人

木造建築士は受験者数が非常に少ないことがわかります。二級建築士と木造建築士は受験資格要件が同じです。それにも関わらず、木造建築士は二級建築士と比べて扱える建物の範囲が狭いというデメリットがあります。

木造建築士のメリットは、試験範囲が狭いことです。働きたい職場が戸建て住宅専門の工務店などであれば、手軽に木造建築士を取得する手もありますが、基本的には二級建築士以上の資格を取得して将来に備えるのがおすすめです。

木造建築士になるには?

木造建築士の受験要件は、資格、学歴、実務経験の3種類に分かれます。それぞれについて、受験と資格を取れる要件を確認していきましょう。

建築設備士の資格をお持ちの方

すでに建築設備士の資格を持っている方は、木造建築士試験の合格により木造建築士になる資格を得られます。

学歴による取得を目指す方

大学や短大、専門学校、高校などで建築を学び卒業した方は、試験の合格と実務経験により木造建築士になれます。このうち試験は、実務経験なしでも受験できることが原則です。ただし以下のどれかに該当する方は、実務経験がないと受験できません。

  • 高卒かつ高校で建築を学んだ方で、建築の単位数が15単位以上20単位未満の方
  • 中学校卒業の方(修業年限3年以上の職業訓練校に通っていた方は除く)

試験合格者は建築の単位数や在籍していた課程に応じて、卒業後4年以内の実務経験が必要です。但し以下のどれかに該当する方は、実務経験なしで木造建築士になれます。

入学した年 実務経験が免除される要件
平成20年度以前 大学や短大、高専の建築課程を卒業
平成21年度以降 大学や短大、高専等で建築の単位を40単位以上修得し卒業する

高卒で建築の専門学校(修業2年以上)に入り、40単位以上修得して卒業する

実務経験により受験する方

以下の要件を満たす業務に7年以上就いていた方は、木造建築士試験を受験できます。合格者は、木造建築士になれます。

  • 設計図書・施工図等の図書と密接に関わりをもちつつ、建築物全体を取りまとめる、建築関係法規の整合を確認する又は建築物を調査・評価するような業務

引用:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和4年 二級建築士試験 木造建築士試験 受験要領」

建物の設計業務だけでなく、耐震診断や施工管理、建築行政、インターンシップなども実務経験に含まれます。詳しい条件は「二級建築士試験 木造建築士試験 受験要領」をご参照ください。

なお実務経験で受験する場合は他の要件と異なり、7年以上の実務経験がないと受験そのものができないことに注意してください。

木造建築士の資格を活かせる転職先

ハウスメーカーや工務店は、木造建築士の代表的な転職先に挙げられます。平屋や2階建ての木造建築物に対して資格を活かせることは、主な理由です。

転職にあたり、木造建築物のプロであることはアピールできるポイントです。古民家や歴史的建造物の移築・復元といった仕事は、木造建築士が適しているでしょう。木造建築を扱うリフォーム会社も、知識を活かせる仕事です。これらの事業を行う会社も、転職先の候補に挙げられます。

木造建築士の試験内容

木造建築士の試験は、学科試験と設計製図の試験に分かれています。それぞれの試験内容を確認していきましょう。

学科試験

学科試験は以下のとおり、4科目を2つの時間帯に分けて実施します。

  • 学科Ⅰ(建築計画)および学科Ⅱ(建築法規):3時間
  • 学科Ⅲ(建築構造)および学科Ⅳ(建築施工):3時間

出題数は各科目とも25問、合計100問です。また全問が5肢択一式となっています。

設計製図の試験

設計製図の試験は提示された設計条件に基づき、以下の要求図書を作成する試験です。試験時間は5時間と、長丁場の試験です。

  • 平面図(1階、2階)
  • 基礎伏図
  • 2階床伏図兼1階小屋伏図
  • 2階小屋伏図
  • 軸組図
  • 主要構造部材表(木拾い書)
  • 柱杖図または矩計図

ここ数年の課題は、木造2階建ての専用住宅となっています。解答にあたっては、柱杖図と矩計図で答案用紙が異なることに注意が必要です。

木造建築士の取得難易度

木造建築士は専門知識やスキルを持つ方でも、半数以上の方が不合格となる試験です。平成29年から令和3年までの合格率を確認していきましょう。

総合 学科試験 設計製図の試験
令和3年 33.0% 49.9% 67.7%
令和2年 37.8% 53.0% 72.1%
令和元年 33.3% 56.1% 59.4%
平成30年 35.8% 57.4% 64.9%
平成29年 40.1% 48.1% 76.0%

出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「木造建築士試験 試験結果」

学科試験は5割前後、設計製図の試験は6割から8割の方が合格しています。これだけを見ると合格しやすい試験と思いがちですが、両方の試験に合格できる方は3分の1程度しかいません。受験資格が設けられていることを踏まえると、難しい試験ともいえるでしょう。油断せず、しっかり対策を取ることが合格への近道です。

木造建築士

木造建築士に合格するポイント

木造建築に合格するポイントは、「十分な勉強時間を確保すること」と「学科・設計製図試験のそれぞれに向けて最適な勉強法で学習すること」です。

木造建築士に合格するには、300~400時間の勉強が必要とされています。一級・二級建築士と比べると少ないですが、それでも働きながら勉強時間を確保するのは難しいものです。大切なのは、隙間時間を有効活用すること。移動や休憩の時間など、日常のなかで活用できる隙間時間を見つけ、少ない時間でも勉強を進めるリズムをつくりましょう。

学科試験で有効な勉強法は、過去問をベースとしたアウトプットの繰り返しです。テキストを読んで最低限のインプットを行った後は、過去問を解きながら知識の定着を図ることをおすすめします。

設計製図試験で重要なのは、「効率的なエスキスを身に付けること」と「短時間で作図を仕上げること」です。短時間の作図は反復練習で身に付きますが、独学でエスキス手法を身に付けるのは難しいとされています。場合によっては、資格学校を利用することも視野に入れるとよいでしょう。

木造建築士の平均年収は?

求人ボックスによると、木造建築士の平均年収は497万円です。分布を見ると370万円から520万円程度の年収という方が多く、520万円を超える方は急に少なくなることが特徴です。また年収600万円以上の求人は少ないため、木造建築士だけでは高い給与を実現しにくくなっています。

一級・二級建築士との年収差

木造建築士の平均年収は、一級建築士や二級建築士よりも低くなっています。以下の表で比較してみましょう。

資格 平均年収 備考
木造建築士 497万円
二級建築士 520万円~560万円 平均月収は37万4,000円
ボーナスは2~3カ月分で計算
一級建築士 565万円~606万円 平均月収は40万4,000円
ボーナスは2~3カ月分で計算

上記のとおり、二級建築士と比べると60万円、一級建築士と比べると100万円以上の差がつく可能性があります。

年収550万円以上、残業20時間以下、土日休みなどの好条件の求人は、転職エージェントで非公開求人として扱われていることがあります。企業が応募殺到して混乱を避けるために、付き合いのある転職エージェントに限定して、求職者の対応を依頼していることがあるためです。

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木造建築士に関するよくある質問

ここからは、木造建築士に関する4つの質問について回答します。試験対策やキャリア形成の参考にしてください。

木造建築士の資格を取得するメリットは?

木造建築物のスペシャリストを目指せることは、主なメリットに挙げられます。近年は、伝統的な日本の住宅で感じられた「木の温もり」が再び脚光を浴び、木造戸建て住宅の需要が増加傾向です。従来よりも断熱・環境性能に優れた戸建て住宅が人気であり、優秀な工務店や設計者が求められています。また、歴史的建造物や古民家といった、古い建物の仕事に関わりやすいこともメリットといえるでしょう。

合格のしやすさも、メリットに挙げられます。建築の課程を学んだ方は、実務経験無しで資格を取れます。二級建築士よりも試験対策を立てやすく、合格しやすいこともメリットの一つです。

木造建築士の資格を取得するデメリットは?

木造建築士のデメリットは、扱える建物が限定的であることです。戸建て住宅以外の建物で需要の高い鉄筋コンクリート・鉄骨造に関しては、延べ面積が30㎡以下でないと設計・監理を行えません。そのため、仕事の幅を広げたいときは、二級建築士を取得する必要があります。

また、一級建築士にステップアップしにくいこともデメリットです。建築に関する学歴がない場合は、二級建築士を取得しないと一級建築士を受けることができません。将来的なステップアップを考えている場合は、はじめから二級建築士を取得しておくことをおすすめします。

木造建築士の取得には何年かかる?

実務経験だけで取得する場合、木造建築士になるまでには少なくとも8年を要します。

一方で大学や短大、高等専門学校などで建築を学び、40単位以上修得した方は短期間で木造建築士になれます。卒業した年の試験に合格すれば木造建築士の登録申請ができ、最短で1年前後で資格を得られるというわけです。

木造建築士は独学でも取得できる?

環境が整っていれば、独学でも取得することは可能です。学科試験は、独学で十分に対策できます。設計製図の試験対策も、適切なアドバイスを受けられる環境があれば独学でも学習を進められるでしょう。一例として、職場で経験豊富な建築士に質問できる、学校で先生に聞けるといった環境が挙げられます。

設計製図の試験対策を、まったくの独学で進めることはおすすめできません。試験の傾向はある程度決まっているものの、練習すれば合格に近づくとは限らないためです。例えば考え方の方向性が誤っていても、本人はなかなか気づけないといった点が挙げられます。

専門家による適切なアドバイスは、合格への近道です。独学で進めたい方は設計製図の試験だけでも、通信講座やスクールの活用をおすすめします。

木造建築士と二級建築士はどちらが難しい?

木造建築士と二級建築士の難しさは、受験者の興味や関心、キャリアにより異なります。木造建築士の試験範囲は二級建築士よりも狭く、設計製図の試験は傾向がある程度決まっています。対策の取りやすさという点では、木造建築士よりも二級建築士のほうが難しいといえるでしょう。

一方で木造建築士は、木造建築に特化した資格です。コンクリート造に興味を持つ方は、難しさを感じるかもしれません。合格率こそ木造建築士の方が高めですが、このことをもって木造建築士の方が簡単とはいえないわけです。興味関心に合った試験を選ぶことは、あなたのキャリアアップにもつながります。

おわりに

「木造建築物が好き」「古い建築物に関わる仕事をしたい」という方にとって、木造建築士はおすすめの資格です。仕事の範囲、需要ともに二級建築士と比べて少なめですが、木造建築物のプロフェッショナルをアピールできることは見逃せません。比較的取得しやすい資格ですから、興味のある方は取得を目指してみてはいかがでしょうか。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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