施工図(建築施工図)はどんな職場で働ける?転職先の候補や格を上げる資格を紹介

施工図(建築施工図)はどんな職場で働ける?転職先の候補や格を上げる資格を紹介

建物を施工するために欠かせないのが施工図(建築施工図)です。各所のおさまりの豊富な知識を有し、課題を解決しながら施工図を描ける担当者は常に求められています。近年では、3次元モデルでの検証が活発に行われているので、3次元の扱いに長けていると、さらに重宝されることでしょう。

この記事では、施工図(建築施工図)がどんな仕事かを解説し、職場の選択肢や、持っていると格が上がる資格をご紹介します。施工図は、資格がなくても携わることができ、建設におけるものづくりを体験できる仕事です。建設業への転職を考えている方は、ぜひご覧になってみてください。

施工図(建築施工図)の仕事内容

それでは、施工図(建築施工図)の仕事内容について解説します。この仕事ができるメリットや、求められている人材もみていきましょう。

施工図(建築施工図)が担う役割

施工図とは、施工者が扱う図面のひとつで、「実際に建物を施工するために必要な図面」をいいます。設計者が作成した設計図(意匠図、構造図、設備図)をもとに、施工者が作成します。

専門工事業者は、施工図をもとに建具や鉄骨などの製作図を作成して実際の施工にあたります。そのため、ミリ単位の正確な情報を盛り込み、スムーズな施工につなげることが施工図の重要な役割です。

実務では、一般的な建築に関する知識だけでなく、各メーカーの製品や、各専門工事業者の仕事の進め方に関する豊富な知識を有し、施工性を考慮した図面を作成できる担当者が求められています。

よい施工図を作図するには、設計者や専門工事業者との調整が欠かせません。設計図書どおりに施工するために、設計者との会話をとおして意図を汲み取るのが重要。図面どおりに施工できない部分は、設計者と調整しながらおさめていきます。

また、実際に施工するのは専門工事業者なので、施工図を共有して問題がないかの確認を依頼し、不具合が生じている場合は知識を借りながら作図を進めます。

設計者や専門工事業者とお互いに相談しやすい良好な関係を築くことが、施工図担当者の重要なポイントといえるでしょう。

施工図(建築施工図)の仕事のメリット

施工図(建築施工図)を担当できると、全国で求人があるため、どこへいっても職に就ける可能性が高いです。人手不足が課題となっている仕事であり、優れた施工図担当者は常に求められています。

知識や技術が評価に直結するのが、施工図の特徴。現場の所長は、優れた施工図担当者を見つけると、次の現場でも採用する傾向があります。信頼できる施工図が、スムーズな現場運営に繋がるからです。

工程・品質・安全を管理するうえで有用な施工図を作成できる知識や技術を身に付けられれば、所長からの評価につながり、安定した職場環境を得られる可能性が高まります。

また、内勤と外勤の選択肢があることも施工図のメリットのひとつです。施工図は、現場の施工図担当者が作図するのが一般的ですが、企業によっては内勤部署で施工図の作成支援を行っています。外勤勤務は建物が竣工すると勤務地が変わりますが、内勤勤務は職場が安定するため、人によってはうれしいポイントでしょう。

施工図(建築施工図)に向いている人材

施工図(建築施工図)でもっとも求められているのは、豊富な知識と技術を有した即戦力です。施工に向けた最後の調整を任される重要なポジションなので、課題を自ら抽出し、解決できる人材が求められています。

一方で、慢性的な人手不足の問題や、3次元への対応から、育成に力を注がれている分野でもあります。実務では、ベテラン担当者のもとで経験の浅い担当者が手を動かしながら経験を積むのが一般的な進め方。3次元モデルでの干渉チェックは若い人材の方が得意であるケースが多く、幅広い人材が得意分野に応じて活躍できるのが特徴です。

施工図は、知識と技術が必要な仕事ですが、未経験でも建物に興味をもち、常に向上心をもって積極的に学ぶ心をもっている人材が求められています。

施工図(建築施工図)の転職先

ここでは、施工図(建築施工図)で働ける職場をご紹介します。

ゼネコン

ゼネコンは、建築施工の最先端に位置する存在です。大規模プロジェクトでは、数十人に及ぶ施工図担当者を抱え、2次元図面・3次元モデルの両方を使いながら調整を進めます。大きなプロジェクトでやりがいのある仕事に就きたい方におすすめです。

また、ゼネコンでは、内勤部署で施工図支援を行うケースが一般的になってきています。設計に近い川上段階で施工の課題を抽出し、早期の解決を図るのが主流となっているからです。内勤部署の施工図支援チームは、設計部と現場の橋わたしとしての役割を担います。

サブコン

サブコンの施工図は、管工事や電気工事などの専門分野に関する施工図を作成します。専門分野に特化した知識を有し、職人がスムーズに作業できる施工図を作成するのが重要です。

施工で扱う図面のひとつに、「総合図(プロット図)」があります。建築図に、電気設備・空調設備・衛生設備を組み込み、ひとつの図面に仕上げたものです。この総合図をもとに、専門業者間の確認・調整を行ったり、施主に対する説明や運用の調整を行ったりします。

サブコンが作成する施工図は、総合図に取り込まれる重要な情報のひとつ。サブコンの施工担当者は、建物の最終調整で活躍する重要なポジションです。

工務店・内装業者など

施工図は、工事を行う会社であれば必要となるポジションです。そのため、工務店やハウスメーカー、建売住宅業者、内装工事業者といった会社で求人があります。勤務地や勤務時間は会社によってさまざまで、ライフスタイルに合わせて働き方を選びやすいのがメリットです。

派遣会社

施工図担当者を派遣する会社も選択肢のひとつです。その場合、ゼネコンなどの現場に派遣され、施工図を担当します。派遣という特性上、勤務地が安定しないデメリットはありますが、派遣会社の方針によっては、時間外労働は契約外になるケースがあるのがメリット。ライフワークバランスを重視し、家庭の時間を多く取りたい方におすすめです。

施工図(建築施工図)で持っていると役立つ資格

施工図には、持っていなければいけない資格はありません。しかし、取得することで知識がつくほか、転職などに役立つ資格はあるので、ぜひ取り組んでみてください。

建築士

建築士は、建築を設計・監理するうえで必要な国家資格。建築全般に関する基礎知識が求められ、建築士を取得していることで建築に関する包括的な理解ができていることを示せます。建築におけるもっとも基本的な資格であり、職種に関わらず、建築関係者であれば取得しておきたい資格。転職においては、説得力のある資格となるでしょう。

計画・設備・環境・法規・構造・施工の科目があり、どれもが施工図で役立つ内容。実務をとおして知識を身に付けるのが基本の建設業において、座学で体系的に建築を学べる最適な教材です。

建築士の資格については以下の記事をご覧ください。



建築施工管理技士

建築施工管理技士は、建築の施工管理に関する国家資格。施工計画や、工程・品質・安全の管理が主に扱う内容です。施工図担当者の重要な役割は、スムーズな施工ができる図面を作成すること。作図の指示を出す施工者が意識している内容を理解できることは、施工図を作成するうえで重要なポイントです。

建築施工管理技士を有していれば、施工者の重要な役割である工程・品質・安全の管理について基礎的な知識を有していることを示せるので、転職で有利になるでしょう。

建築施工管理技士の資格については以下の記事をご覧ください。



CADやBIMに関する検定

施工図は、コンピューターソフトウェアを使って作図します。そのため、CADやBIMに関する検定を受けていると、採用においてわかりやすい技術の指標になります。例としては、Autodesk社「Revit Architectureユーザー試験」や、Graphisoft社「Archicad認定試験」などがあります。

また、2024年から、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が「BIM利用技術者試験」の運用を開始する予定です。新時代の建築・建設業界の担い手として活躍できるBIM技術者の指標として期待されている試験であるため、チェックしてみてください。

施工図(建築施工図)に関わる仕事の平均年収

施工図の作成に携わる施工管理職(建築/土木)の年収は、転職サービスdoda「平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)」が451万円と公表しました。年代が上がると平均年収もアップし、30代以上では年収500万円以上となります。

また求人ボックスでは、関連する資格の年収を以下のとおり公表しています。

資格 平均年収額
1級建築施工管理技士 565万円
2級建築施工管理技士 522万円
一級建築士 499万円

いずれも、社会人平均よりも高い年収が期待できるでしょう。施工図に関わる仕事の平均年収は、国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」が公表した給与所得者の平均年収(443万円)を上回っています。

施工図(建築施工図)に関わる求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、施工図(建築施工図)に関わる求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

東証一部上場企業の求人

  • 仕事内容:施工図作成業務
  • 応募条件:施工図作成経験または施工管理経験3年以上(戸建住宅を除く)、無資格者の方でも応募可
  • 週休2日制、年間休日126日
  • 年収5,000,000円 〜 8,500,000円
  • 事務所ビル、工場、学校、病院、共同住宅、社寺など様々な工種に携わることができる

CAD扱える方優遇の求人

  • 仕事内容:建築施工図、実施設計図の作図・修正
  • 応募条件:業務経験1年以上、CAD扱える方優遇
  • 週休2日制
  • 年収2,800,000円 〜 4,900,000円
  • 給与例:30歳・経験 5年/年収400万、37歳・経験12年/年収600万、55歳・経験37年/年収950万

建築業界専門の転職エージェント「建築転職」では、上記以外にも施工図(建築施工図)に関わる求人を取り扱っています。登録いたただいた方には非公開求人情報も紹介しておりますので、ぜひ下記から無料登録ください。

↓無料登録はこちらから

おわりに

施工図(建築施工図)は、スムーズな工事の進捗に必要な図面を作成するやりがいのある仕事です。全国で求人があり、働き方の選択肢が多いのがメリット。3次元モデルの登場により活躍の幅が広がっている注目度の高い仕事です。

育成に力が注がれており、即戦力だけでなく、未経験者でも向上意欲の高い人材が求められています。資格がなくても携われる仕事なので、建設に興味のある方は、ぜひ目指してみてください。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

関連する記事