3,156人の方が、この記事を参考にしています。
「建設コンサルタント」の名前を耳にしたことがあるものの、どんな職種か詳しくは知らない方も多いのではないでしょうか。建設コンサルタントは、建設現場でよく見かける建設会社の方とは異なります。公共インフラの工事の計画や遂行などで重要な役割を果たしている職種で、一般市民の目に見えない部分で活躍しています。あまりその仕事内容は知られていませんが、なくてはならない仕事なのです。
この記事では、建設コンサルタントにスポットを当て、職種について掘り下げていきます。どのような仕事や役割があるか、仕事に就くにはどのような方法があるか、詳しく確認していきましょう。
目次
建設コンサルタントはどんな仕事をする職種?
私たちの生活は、さまざまな公共インフラによって支えられています。代表的なものを、以下に挙げました。
- 道路
- 橋
- 河川やダム
- 上下水道
- トンネル
- 地下道や交通広場
- 建物
建設コンサルタントはこれらの公共インフラに対して、専門的な技術コンサルティングサービスを行う仕事です。その仕事は企画や設計といった計画段階から施工管理、供用開始後の維持管理まで、多岐にわたります。なお実際の工事は建設会社が担当するため、建設コンサルタントが作業に携わることはありません。
建設コンサルタントの仕事内容・役割
建設コンサルタントは発注者からの依頼に基づき、技術コンサルティングサービスを提供します。発注者は国や地方自治体の場合が多いですが、民間企業や国外から発注される場合もあります。
仕事内容や役割は、大きく3つに分かれます。それぞれの仕事内容や役割を確認していきましょう。
仕事を取るよう工夫し、発注者から依頼を受ける
発注者から直接依頼を受ける工事ばかりであれば楽ですが、実際の受注はコンペによるケースも多いです。このため、待っていれば仕事が舞い込むとは限りません。自ら提案を行い、仕事を取りに行く必要があるわけです。
選定方法には、プロポーザル方式や総合評価落札方式があります。最も高い評価を得られれば受注でき、計画や設計の段階へ進めるわけです。
調査や設計を行い、ベストな方法を提案する
正式な依頼を受けた後は、課題や検討すべき事項を把握する「基本事項検討」を行います。現地調査やアンケートを取る場合も多いです。
データが集まった後は、課題を解決する方法を検討します。技術的に可能かどうかはもちろん、コストや周辺への影響、納期なども考慮しなければなりません。方向性が固まった後は設計や図面の作成を行い、報告書として発注元に提出します。
これらの仕事を進める際には、必要に応じて発注元との打ち合わせも実施します。状況によっては、住民などに対する説明会の実施を要する場合もあるかもしれません。
施工管理や維持管理を行う
工事が開始された後は設計内容どおりに工事が行われているか、スケジュールに問題がないかチェックする施工管理業務を行います。
竣工後は、できるだけ長く使うための業務と提案が求められます。維持点検を行うとともに、維持管理計画や補修計画の策定、修繕工事などの提案も重要な役割の一つです。
尚、施工管理職の仕事内容についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
建設コンサルタントの仕事のやりがいは?仕事はきつい?
職種を選ぶうえで、やりがいの有無や仕事のきつさは気になるポイントです。それぞれについて、確認していきましょう。
建設コンサルタントのやりがい
建設コンサルタントが計画した建造物は、目で確認しやすいことが特徴です。つまり、成果物が目に見える=実感を得やすい仕事と言えます。橋や道路など、多くの人の目に触れる場合もあるでしょう。仕事の成果が形になることは、やりがいの一つです。
また、インフラの建設に携わることで社会貢献を感じられるのも特徴です。「関わった仕事が人々を支えている」という自負も、やりがいにつながることでしょう。
また、資格を取得し経験を積むことで市場価値をアップできることも、やりがいにつながります。
建設コンサルタントの仕事できつい点
建設コンサルタントの仕事にきつさを感じる理由の一つに、納期の厳格さが挙げられます。調査や設計にどれだけ手間がかかっても、納期をずらすことはできません。もちろん安全性や高い品質も求められるため、手を抜くこともできません。このため残業や休日出勤を余儀なくされるケースもあります。
また、発注元と建設会社の間で板挟みになることも、きつい点に挙げられます。相手の話を理解しつつ、主張すべきはしっかり主張することも求められるスキルです。
特に新人の時期は、苦労が多いです。仕事を覚えつつ、技術士やRCCMの取得に向けた勉強もしなければなりません。仕事一筋の生活になる可能性があることも、きつい点に挙げられます。
建設コンサルタントの登録制度について
建設コンサルタントという職種は、なぜ求められているのでしょうか。建設コンサルタントの資格を持つ方を雇用すると、会社自体も国土交通省が定める「建設コンサルタントの登録」を行えるためです。これにより、対外的な信用度がアップします。
ここからは建設コンサルタントの登録制度について、確認していきましょう。
法人として建設コンサルタント登録を行うための要件
法人として登録する場合、資本金が500万円以上で自己資本が1,000万円以上であることが必要です。そのうえで登録を希望する部門(申請部門)について、以下いずれかの要件を満たした技術上の管理をつかさどる専任者(技術管理者)を置く必要があります。
- 申請部門の技術士
- 申請部門以外の技術士で、申請部門に関する実務経験が10年以上
- 申請部門のRCCMの資格を持ち、申請部門に関する「技術上の管理を行う業務」の実務経験が5年以上
- 申請部門に関する実務経験が30年(大学・高専卒業者は20年)以上
登録部門は道路、下水道、造園、トンネルなど、21の部門に分かれています。1つの会社では1つの部門につき、1名しか技術管理者を置けません。これから入社を希望する応募者の側から見た場合、希望する部門ですでに技術管理者が登録されている場合は、建設コンサルタントの職種に就けないかもしれないことに注意が必要です。
建設コンサルタントは要件を満たせば個人でも登録できる
建設コンサルタントは法人として登録する要件を満たせば、個人でも登録できます。資本金の規定はありませんが、1,000万円以上の自己資本が必要という点に留意してください。
建設コンサルタントになる方法は?資格は必要?
建設コンサルタントは資格がなくても、実務経験を積めばなれる可能性があります。しかし資格を取ることで、短い年数で建設コンサルタントの職に就き、さらなる実績を積むことが可能です。
ここからは建設コンサルタントに役立つ、技術士とRCCMの資格について簡単に紹介します。
技術士の資格を取る
技術士は、技術職における最高レベルの資格として位置付けられる国家資格です。出願時に第一次試験は20の技術部門から、第二次試験は21の技術部門から選択します。
第一次試験はマークシート方式であり、誰でも受験できます。合格率は30%~50%程度です。一方で第二次試験は、以下の実務経験がないと出願できません。
- 7年を超える実務経験
- 技術士補または修習技術者になった後、4年を超える実務経験
第二次試験は筆記試験の後に、合格者に対して口頭試験が課されます。合格率は10%前後と、大変狭き門です。技術士の資格を得るために、数年にわたる長い年月を要する方も多いでしょう。
RCCMの資格を取る
RCCM(Registered Civil engineering Consulting Manager:シビルコンサルティングマネージャ)は、一般社団法人建設コンサルタンツ協会が認定する資格です。学歴に応じて、建設コンサルタント業務における5年から14年の実務経験がないと出願できません。
出願の際、22の技術部門から1つを選んでください。試験はプロメトリック株式会社が設置する試験会場において、CBT方式(コンピュータを利用して実施される試験方式)で実施されます。合格率は40%前後であり、受験資格があることを踏まえると、決してやさしい試験ではありません。
建設コンサルタントはこんな人に向いている
建設コンサルタントは施工業務を行わないものの、デスクワークから打ち合わせ、現地調査などさまざまな業務を行います。「社会に役立つものをつくりたい」という意欲を持ったうえで、以下の資質がある方が向いています。
- 優れたコミュニケーションスキルを持っている
- 視野が広い
- 重要なポイントでは妥協しない
- フットワークが軽く、体力がある
- 土木や建築など、専門分野のスキルを備えている
職人のイメージとして持たれがちな「口数が少なくて頑固だが仕事ができる人」とは異なります。高い技術力と重要なポイントでは妥協しないことに加えて、コミュニケーション能力や柔軟性も求められる仕事です。
建設コンサルタントへの転職を目指すには?
建設コンサルタントは転職サイトなどで募集されており、転職者も多くなっています。未経験でも転職は可能ですが、設計や施工管理などの経験があると有利です。転職を成功させるためにはこれまでの業務を棚卸しして、建設コンサルタントの業務に活かせる項目をピックアップするとよいでしょう。
加えて技術士や建築士、施工管理技士の資格があると、転職に有利となります。中長期的に転職を考えている方は資格を取り、転職に役立てることもよい方法の一つです。
尚、建築士の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
建設コンサルタントの平均年収
「求人ボックス 給料ナビ」では、建設コンサルタントの年収について以下のように公表しています。
- 平均年収は482万円
- 年収660万円以下の方が多い(456万円~525万円の層が最も多い)
- 全体の年収幅は317万円~873万円と広い
建設コンサルタントは、社会人の平均よりも年収額が多くなりやすい職種です。国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、給与所得者の平均給与が443万円となっています。この額よりも高い年収を受け取っている建設コンサルタントの方も多いでしょう。また実力を上げれば、さらに年収をアップすることも可能です。
建設コンサルタントの求人募集例
「建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、建設コンサルタントの求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
準大手ゼネコン:公共施設の設備設計の求人
- 仕事内容:設計・監理業務
- 応募条件:高卒以上で建設会社や建設コンサルタントにて土木設計の実務経験が3年以上、一級土木施工管理技士・技術士・RCCM等の資格
- 完全週休2日制
- 年収4,746,000円 〜 5,810,000円
- 技術研修、階層別研修等あり
建築設計(建設コンサルタント)の新卒採用の求人
- 仕事内容:企画・設計・監理・調査・診断
- 応募条件:専門・大卒・院卒の建築系学生
- 週休2日制、年間休日116日
- 年収3,000,000円 〜 7,000,000円
- フレックスタイム制、研修制度あり
建築業界専門の転職エージェント「建築転職」では、上記以外にも建設コンサルタントの求人を取り扱っています。登録いたただいた方には非公開求人情報も紹介しておりますので、ぜひ下記から無料登録ください。
おわりに
建設コンサルタントは責任こそ重いものの、社会に役立つ建造物の建設に関われる重要な職種です。仕事を通して、やりがいを感じる方も多いでしょう。
活躍するためにはやりがいや仕事の内容だけでなく、きつい点や大変さなどのマイナスポイントも把握した上で転職することが重要です。建設コンサルタントを正しく理解したうえで、納得ゆく転職の実現につなげましょう。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
建築転職に無料登録いただくと
- 表には出ていない、各企業・職場のリアルな情報
- 年収750万円以上の非公開求人情報
がもらえます。
まだ転職を決めていなくても利用できますので、
ぜひご活用ください。