意匠設計の仕事内容 – 実務や転職に役立つスキル・資格、他の設計者との関わり方を解説

意匠設計の仕事内容 - 実務に必要なスキルや資格、他の設計者との関わり方を解説

意匠設計とは、建物の外観デザインや室レイアウト、仕上材料などを決定し、魅力的で快適な空間を生み出す仕事です。実務においては、建築基準法をはじめとした法律を遵守するための知識や、他の設計者をまとめあげるリーダーシップ・コミュニケーション能力が求められます。
この記事では、そんな意匠設計の仕事内容や求められるスキルをご紹介します。建築デザインに興味のある方、建設業への転職を考えている方は、ぜひご覧になってください。

意匠設計の仕事内容(実務)

それでは、意匠設計の仕事内容について解説します。仕事の流れや、構造設計者・設備設計者とのプロジェクトの進め方、施工者との関わり方などをみていきましょう。

意匠設計とは

意匠設計は、建築主の要望を汲み取り、建物の役割・使われ方を十分に理解したうえで、建物をデザインする仕事です。建設地の歴史や風土を踏まえた外観デザインやランドスケープデザイン、利用者や従業員の動線を意識した室構成、適切な仕上げによる豊かな空間の演出、法基準の遵守など、複雑かつ多岐にわたる要素をまとめあげ、建物の設計に落とし込む必要があります。

日本の設計者は、「意匠設計者」「構造設計者」「設備設計者」という専門に分かれており、それぞれの専門性は発揮しながらひとつの建物を昇華させていくことが大切です。なかでも、意匠設計者は、建築主との打ち合わせの主体的に進める存在であり、建築主の意向を構造設計者・設備設計者に共有しながら建物の方向性を決定する設計チームのリーダーです。

意匠設計の具体的な業務は、建築主との打ち合わせ、室構成や動線の設計、防水性や遮音性などの建物性能の設定、外装・内装などの材料の選定、建築基準法や消防法などの法基準の遵守、設計図書の作成、申請業務、着工後の建築主や現場の対応などです。

特に重要なのは、建築主との打ち合わせ。うまく要望を汲み取れないと、デザイン提案を気に入ってもらえず、やり直しになってしまいます。建築主は建築の知識がないケースが一般的です。建築の専門知識を持っていない人でもわかりやすい説明を徹底することが、プロジェクト全体の効率化に繋がるでしょう。

他の設計者(構造設計者や設備設計者)との関わり方

意匠設計者・構造設計者・設備設計者は、密にコミュニケーションを取りながら設計を進めるのが重要。日本のさまざまな災害に対して安全な建物をデザインする構造設計者、四季をとおして快適な建物をデザインする設備設計者は、意匠設計者だけでは専門知識や技術が足りない部分を補ってくれる存在です。

構造設計者は、意匠設計者による室レイアウトに対して、柱は梁を配置します。大空間には柱がない方が好ましいですが、構造設計者としては柱をなくすのは大きな課題です。場合によっては梁を大きくするなどの対策が必要となるでしょう。その場合は、天井が低くなるなど、意匠設計者も影響を受けることになります。大空間などの特殊条件は早い段階で共有し、どのような対策が必要かお互いに把握しておくのが大切です。

また、地震や台風に対する安全性を高めるために、ブレースや壁といった意匠設計・設備設計に大きな影響を与える部材が必要になるケースもあります。意匠設計者も構造計画を理解し、どのような部材が必要かを把握しておくことで、設計を進めやすくなるでしょう。

設備設計者は、空調デザインや照明デザイン、給排水計画など、快適な建物に必要な設備と環境を設計する存在で、天井高の調整などをともに行う必要があります。打ち合わせをせずに天井高を決めてしまうと、天井裏を通る配管の計画が成り立たず、天井を下げることになります。このようなことにならないように、天井高などの設備計画に影響のある変更が生じた際は、設備設計者とこまめに情報共有をするのが大切です。

また、設備設計で近年注目を集めているのが環境に配慮したデザインです。例えば、建物の外周に窓が多いと外気の影響で必要な空調量が多くなり、省エネルギー性の観点からは望ましくありません。建築主から環境への配慮や省エネルギー性を求められるケースが増えており、設備設計者との協業はますます重要になるでしょう。

施工者との関わり方

設計がまとまり、着工が近づくと施工者とのやりとりが始まります。設計図書で描き切れていないディテールや、調達できない材料の代替品の決定など、施工に向けた調整が主な業務です。

また、建築主との打ち合わせは継続して行われ、着工後も変更要望が出てくるのが一般的。予算内での変更案を施工者とともに検討し、スケジュールとコストをコントロールしながら対応する必要があります。変更により無理が生じないよう、施工者との密なコミュニケーションを心がけましょう。

意匠設計の仕事の一日の流れの例

ここでは、意匠設計者の一日の流れ(一例)をご紹介します。

8:30~9:30 プロジェクトメンバー(意匠・構造・設備)と情報共有
9:30~12:30 意匠検討(室構成・ディテールの検討、作図指示など)
12:00~13:00 昼食
13:00~14:00 意匠検討(室構成・ディテールの検討、作図指示など)
14:00~15:00 施工者との打ち合わせ
15:00~17:00 建築主との打ち合わせ
17:00~17:30 打ち合わせ議事録作成

意匠設計の実務や転職に役立つスキル・資格

ここでは、意匠設計で役立つスキルや資格をご紹介します。

スキル

意匠設計で特に大切なスキルは、「デザイン力」「コミュニケーション能力」「バランス感覚」です。設計職である以上、「デザイン力」は欠かせません。直感による設計や、条件を整理してひとつずつ課題を解決していくパズルのような設計など、手法は設計者によって異なりますが、優れた設計をまとめあげるデザイン力が求められます。

また、建築主が求める空間を実現することが建築の大きな目的なので、要望を汲み取り理解する「コミュニケーション能力」が重要。前述のとおり、構造設計者・設備設計者・施工者など、プロジェクトメンバーとの密なコミュニケーションがよい建物に繋がることからも大切なスキルです。

最後に挙げるのが「バランス感覚」。意匠設計者はさまざまな要素を天秤にかけながら設計を進めます。魅力・性能・コスト・施工性・スケジュールなど、メリットとデメリットを比較しながらトータルで建物がよくなるような決定ができるバランス感覚が優れた意匠設計者のポイントです。

資格

意匠設計の資格には、「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」があります。それぞれ扱える建物の規模が決まっているので、業務で扱う建物に合わせて取得するとよいでしょう。上位の資格であればステップアップに役立ちます。

また、「インテリアコーディネーター」「カラーコーディネーター」といったデザインの資格があります。これらの資格を取得する過程で得た知識は設計で役に立つだけでなく、デザインに説得力が生まれるので建築主との合意形成にもつながるでしょう。

一級建築士、二級建築士、木造建築士の資格の要件などは、下記の記事で詳しく解説しています。

尚、建築士の仕事内容についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。

意匠設計の魅力

意匠設計の魅力は、自分がデザインした建物を利用者に喜んでもらえること。多くの人に利用される商業施設や、企業の命運を握るオフィルビルや研究所、夢のマイホームなど、さまざまな思いを背負って実現させた建物を喜んでもらえることが、意匠設計の大きな魅力です。プロジェクトをやりきった達成感と建築主からのあたたかい言葉が、次のモチベーションに繋がることでしょう。

意匠設計に向いている人

ここまで、意匠設計の仕事内容などについて解説しました。そこで、意匠設計に向いている人の特徴を以下にまとめます。

  • 建築が好き
  • デザインが好き
  • コミュニケーションが得意
  • 多くの人とものをつくりあげていくことが好き
  • バランス感覚が優れている

意匠設計の平均年収

「求人ボックス 給料ナビ」では意匠設計の年収について、以下のとおり公表しています。

  • 平均年収額は525万円
  • 年収455万円~519万円で働く方が最も多い
  • 全体の給与幅は329万円~836万円。年収600万円~700万円の方も多い

この年収が高いのかどうか、気になる方も多いのではないでしょうか。

転職サービスdoda「平均年収ランキング【最新版】」は「設計(建設/土木)」の平均年収が456万円であることを公表しています。意匠設計の平均年収は、設計業務全体の平均年収を上回ります。努力しだいで600万円や700万円といった、高い年収が期待できる職種といえるでしょう。

意匠設計の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、意匠設計の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

スーパーゼネコンの意匠設計の求人

  • 仕事内容:中規模~大規模案件の意匠設計
  • 応募条件:意匠設計の経験、一級建築士所有が望ましいが資格なしでも経験を勘案して選考
  • 完全週休2日制(休日は会社カレンダーによる)
  • 年収4,200,000円 〜 10,000,000円
  • 数々の有名建築物を手掛けるスーパーゼネコンの意匠設計職の募集です

高年収の総合建築会社の求人

  • 仕事内容:非住宅やマンションなどの意匠設計
  • 応募条件:意匠設計の経験(S、RC、SRC造の経験)、1級建築士の資格
  • 完全週休2日制(土・日)、祝日
  • 年収6,200,000円 〜 9,000,000円
  • 同規模ゼネコンではトップクラスの年収

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意匠設計の仕事は、業種や会社によって仕事の進め方が異なります。転職エージェントはより細かい仕事内容、仕事への適性、就職活動の有利な進め方などをアドバイスしてくれます。興味がある方は、ぜひ転職エージェントに相談してみてください。

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おわりに

意匠設計は、魅力的な建物をデザインし、建築主の夢を叶える素敵な仕事です。建築は非常に大きな「ものづくり」であり、自己実現ができる仕事でもあります。そんな夢のある意匠設計の仕事を目指してみてはいかがでしょうか。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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