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土木設計とは、インフラストラクチャーの整備をとおして人々の生活を豊かにする仕事です。橋梁・道路・ダム・トンネルなどを扱い、人々の移動やガス、水道など、生活の基盤を整えます。構造技術者としては建築を超える大きさの構造物を設計することができ、大スケールのものづくりを楽しめます。
この記事では、そういった土木設計の仕事内容や求められるスキル、関連する資格をご紹介します。構造設計に興味のある方、建設業への転職を考えている方は、ぜひご覧になってみてください。
目次
土木設計とは?建築設計との違いは?
建設業は、「土木」と「建築」にわかれます。
「土木」で扱うのは、土地造成・橋梁・道路・鉄道・ダム・トンネルなどです。主にインフラストラクチャ―(インフラ)を扱う分野で、人々の生活を基盤から支える仕事といえるでしょう。一方、「建築」で扱うのは建物です。魅力的な空間を生み出し、人々の生活を豊かにする仕事です。
建築設計は、意匠設計者・構造設計者・設備設計者が協力して建物を設計します。他方で、土木設計は意匠的・設備的要素が限定的であり、土木工学に基づく構造安全性の検討が大きな比重を占めるのが特徴です。
そのため、土木設計に携わるには、力学に関する知識や、コンクリート・鉄骨の材料に関する知識など、土木工学の素養が必要になります。また、土木設計は、施工に十分配慮した設計が求められるため、施工に関する知識や資格の取得が推奨されるのが特徴です。
土木設計の仕事内容
土木設計の仕事は、調査・設計・申請・施工時対応の順で進めていきます。ここでは、各プロセスの具体的な内容をみていきましょう。
調査
設計に先立ち、建設地の調査を行います。現地で敷地の測量、ボーリング調査(地盤調査)などを行い、地形や地質を調べます。工事車両の搬入動線や、施工地盤の確認も重要です。また、気象条件や周辺環境、関係法令の規制などの情報を収集し、設計の与条件を揃えます。
設計・申請
土木設計は、「概略設計(基本設計)」と「詳細設計」の2段階にわかれます。
「概略設計」は、初期段階の設計であり、調査に基づきプロジェクトの大枠を決める工程です。構造物の形状や架構形式、材料、工法などを検討します。このとき、現地の状況や地質を踏まえ、工事を実現できるかを検討することも欠かせません。また、土木工事は、地球環境や周辺住民に大きな影響を与えるケースがあるため、完成後にどのような状況になるかを検討するのは重要なポイントです。
「詳細設計」は、概略設計で決めた方針に基づき、より具体的な検討を行うプロセスです。橋梁を例にすると、橋梁の幅や長さなどの詳細な寸法、柱や梁のサイズ、柱と梁の取り合いのディテールなどを細かく決めていきます。また、工事費の見積や、工期の設定、住民への説明などを行い、工事の準備を進めることも重要です。
設計がまとまり、官公庁の諸手続きを済むと、いよいよ工事に着手します。
着工後の業務
着工後は、設計図書のとおりに施工されているかを確認する「監理業務」がひとつの役割です。施工に間違いがあった場合は是正指示を行い、適切に工事を進めます。
また、工事中に発生するトラブルへの対応も重要です。基礎施工中の地中障害物や、トンネル掘削中の障害物など、調査ではわからなかった事象によるトラブルに対し、設計変更を視野に入れながら適切に対処する能力が求められます。設計変更には時間を要するため、施工者と連携を取りながら工期に遅れが生じないようにスケジュールを管理するのが大切です。
土木設計に求められるスキル・関連する資格
ここでは、土木設計で役立つスキルや資格をご紹介します。
スキル
土木設計で大切なスキルは、「構造力学」「広い視野」「調整能力」です。
先述のとおり、土木設計では構造的な検討が重要なので、「構造力学」のスキルが求められます。土木の分野は「土木工学」として独立した学問が確立されており、建築の「構造工学」とは細かい部分で異なるので、留意しておきましょう。
次に重要なのが、「広い視野」です。土木工事は大規模な工事が多く、さまざまな与条件を整理して進める必要があります。また、周辺環境への影響が大きいため、完成後の状況を見据えながら計画しなければなりません。そのため、プロジェクトに対して「広い視野」を持って取り組むのが大切です。
最後に重要なスキルとして挙げるのは、「調整能力」です。土木工事は、従事者が多く、設計内容の伝達や工事の進め方など調整事項も膨大です。そのため、多くの関係者がうまくいくように調整する能力が求められます。また、土木工事の事業主は国や都道府県などの官公庁であることが多いので、必然的に官公庁とのやりとりが増えます。官公庁の審査は厳格で時間を要するのが一般的であるため、スムーズに進められる調整能力が大切です。
資格
土木設計技術士に関連する国家資格は、「1・2級土木施工管理技士」「技術士(建設部門)」「1・2級土木施工管理技士補」です。
「土木施工管理技士」と「土木施工管理技士補」は級によって扱える工事が異なるため、業務内容に応じて必要な資格を取得するようにしましょう。
さらに、建設コンサルタントになれる「RCCM」や、構造計算や施工計画などを評価する「土木設計技士」といった民間資格が存在します。これらの国家資格や民間資格は、キャリアアップや設計コンサルタント業として独立する際に役立つので、ぜひ取得を目指してみてください。
土木施工管理技士と土木施工管理技士補の資格については、それぞれ別記事で詳しく解説しています。
土木設計の魅力
土木設計の魅力は、「人々の生活を支えられること」と「大スケールのものづくり」でしょう。
土木設計は主にインフラを扱い、人々の生活を基盤からサポートするのが大きな役割。高速道路やトンネルの建設などにより新たな生活スタイルを提供できれば、地域から喜びの声を聞けることでしょう。このように「人々の生活を支えられること」が土木設計の大きな魅力のひとつです。
もうひとつの魅力は、「大スケールのものづくり」です。土木設計は、橋梁や高速道路、ダムなど、スケールの大きなものを扱うのが特徴。スケールの大きな構造物を設計するのは多くの構造技術者の夢です。土木設計者はその夢を実現できる素敵な仕事。さまざまな困難を乗り越え完成を迎えたときは、大きなやりがいを感じられるでしょう。
土木設計に向いている人
ここまで、土木設計の仕事内容などについて解説しました。そこで、土木設計に向いている人の特徴を以下にまとめます。
- スケールの大きなものづくりをしたい
- 構造計算が好き
- 多くの関係者との調整が得意
- 広い視野を持って課題に取り組める
- スケジュール管理が得意
- バランス感覚が優れている
転職するならエージェントに相談してみよう
土木設計の仕事は、会社によって扱う構造物が異なります。また、仕事の進め方や業務範囲がさまざまです。転職エージェントはより細かい仕事内容、勤務時間、勤務地、就職活動の有利な進め方などをアドバイスします。興味がある方は、ぜひ転職エージェントに相談してみてください。
土木設計の平均年収
厚生労働省では、土木設計技術者の年収を573万2,000円と公表しました。また令和4年度におけるハローワークでの求人賃金は、月額33万1,000円です。ボーナスを2カ月分と仮定すると、年収は463万4,000円となります。
土木設計技術者は、平均的な社会人よりも多めの収入が期待できる職種です。国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、給与所得者の平均年収を443万円と公表しています。土木設計技術者の年収は、この金額を上回っています。
土木設計の求人募集例
「建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、土木設計の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
資格取得助成制度ありの求人
- 仕事内容:新築工事(RC造、S造等)の施工管理業務
- 応募条件:経験者の方を優遇
- 完全週休2日制(土日祝休み)、年間休日123日
- 年収4,500,000円 〜 7,500,000円
- 資格取得奨励金制度、資格取得助成制度等、各種制度あり
尚、施工管理職の仕事内容についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
公共事業の設計業務メインの求人
- 仕事内容:土木施設計画、設計業務
- 応募条件:設計業務経験者
- 完全週休2日制(土日祝休み)
- 年収2,800,000円 〜 5,600,000円
- 技術研修、階層別研修等あり
建築業界専門の転職エージェント「建築転職」では、上記以外にも土木設計の求人を取り扱っています。登録いたただいた方には非公開求人情報も紹介しておりますので、ぜひ下記から無料登録ください。
おわりに
土木設計は、インフラを整えることで人々の生活を豊かにし、スケールの大きなものづくりを実現できる魅力的な仕事です。構造技術者としての夢が詰まった仕事なので、構造設計が好きな方、ものづくりが好きな方は、ぜひ目指してみてはいかがでしょうか。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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