建築設計ってどんな仕事?社会人から転職する方法や求人募集の年収相場を紹介
「建築設計」とは、建築に関わる設計を広く指す言葉です。
建築設計にはさまざまな分野が存在するため、仕事の具体的なイメージが湧かない方がいるかもしれません。
この記事では、建築設計として一般的な意匠・構造・設備設計について解説します。
自分の能力や適性を生かせる分野を見つけ、ぜひ建築設計者を志してみてください。
目次
さまざまな専門分野に分かれる「建築設計」
「建築設計」という表現には、さまざまな専門分野が含まれています。
なかでも、設計プロセスの主体となるのが意匠・構造・設備設計です。
それに加え、音響・採光・インテリアデザインなどが例として挙げられるでしょう。
ここでは、建築設計の代表として、意匠・構造・設備設計の仕事内容について解説します。
意匠設計の仕事内容とは
意匠設計は、建築のデザインや建物・室配置、空間構成などの建築計画を決めるのが主な役割です。
意匠設計者がプランを描き、それを実現するために構造・設備設計者がそれぞれの計画を進めるという流れで設計プロセスが進められます。
そのため、意匠設計者は設計チームのリーダーといえるでしょう。
また、建築主との打ち合わせの進行役は意匠設計者が行うのが一般的です。
意匠設計者が建築主の意向とプロジェクトの方向性をうまくコントロールできるかが、プロジェクトの成否を握っているといっても過言ではありません。
コストや施工性、技術的な課題などの観点から建築主要望の実現可否をタイムリーに検討し、実現可能な方向でプロジェクトをまとめていくのが大切です。
法基準やその土地の気候風土、建物に求められる機能、建築主要望などの条件を整理して建築計画を作成し、設計チームのリーダーとして旗振りをしながらプロジェクトをまとめあげていくのが意匠設計者です。
構造設計の仕事内容とは
構造設計は、建築計画が成立するように構造計画を行うのが主な役割です。
構造計画の主な作業は、“構造種別(鉄筋コンクリート・鉄骨・木造など)”、“構造形式(ラーメン・ブレース・免震・制振など)”、“構造部材(柱・梁・壁・スラブなど)”を決めること。
地震大国である日本においては重要なポジションであり、優れた構造設計者の活躍によりさまざまな魅力的な空間が実現されています。
構造設計者は、構造計画をディテールにわたるまで施工者に正しく伝えるのが大切です。
構造図に漏れなく記載するのはもちろんのこと、打ち合わせや製作図チェック、製品検査を通して構造設計の意図が確実に実現されていることを確認しなければいけません。
構造設計者には、高度な技術だけでなく、細かい内容を正しく伝える伝達力、漏れなく確認できる緻密さが求められます。
それに加え、確かな知識と技術に基づく大胆な発想力があると、無柱空間などの建築主・意匠設計者が喜ぶ構造設計を実現できるでしょう。
設備設計の仕事内容とは
設備設計の目的は、建物内の環境を快適にすることです。
そのために、“空調・照明デザインや給排水計画”などを行い、空気・熱・光環境を整え、配水管を建物に張り巡らせます。
大手デベロッパーによる高級志向の建物の増加により、“建物の快適性の実現”という設備設計者が担う役割は重要性が増しています。5つ星ホテルのような最上級の空間に必要な設備システムの提案ができると、需要のある設備設計者に近づけるでしょう。
また、建築の“環境問題”は設備設計者の重要な課題です。建築における環境問題は注目を集めて久しく、「サステナブル建築」や「SDGs」という言葉が定着しました。
設備設計者は、建物の使われ方やその土地の気候風土に合わせて適切な設備システムを提案し、省エネなどの優れた環境性を実現することで、持続可能な建築に貢献するのが大切な役割です。
“建物の快適性”・“環境問題”という近年の建築に関する重要課題により、設備設計者の活躍の場はますます広がっているといえるでしょう。
社会人から建築設計に転職する方法
建築や街づくりにより魅力的な空間を実現できる「建築設計」の仕事ですが、プロとして活躍するには“建築士”の資格が必要です。
しかし、建築士試験を受けるためには高いハードルがあるのをご存じでしょうか。
ここでは、建築士資格の種類、建築士試験の受験資格要件、社会人から建築設計に転職する方法について解説します。
建築設計に役立つ建築士資格
建築設計に役立つ資格のうち、一般的なのが“建築士”です。
建築士資格には、一級・二級・木造建築士の3種類があり、下図のように業務範囲が異なります。
出典元:建築士の種類と業務範囲(公益財団法人建築技術教育普及センター)
一級建築士は構造種別・規模に関わらずすべての建築物の設計・監理を行えます。
一方、二級・木造建築士は戸建て住宅の設計が主な役割であり、建築物の高さや面積などに制限が設けられているのが特徴です。
戸建て住宅を扱うハウスメーカーや工務店であれば二級建築士資格で仕事を得られますが、組織設計事務所やゼネコンで設計を行いたい場合は、一級建築士の取得が望ましいといえるでしょう。
また、構造・設備設計には、専門資格として「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」が存在します。
どちらも“一級建築士として5年の実務”が受験資格要件として定められている難関資格です。
活躍の場を広げられるので、取得のチャンスがあればぜひ目標にしてみてください。
尚、建築士の資格についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
建築士資格の受験資格要件
一級及び二級・木造建築士試験の受験資格要件は以下のとおりです。
一級建築士
・建築に関する科目を履修して大学・短期大学・高等専門学校を卒業する
・二級建築士である
・建築設備士である
二級・木造建築士
・建築に関する科目を履修して大学・短期大学・高等専門学校・高等学校を卒業する
・実務経験7年
建築に関する科目を履修して学校を卒業していない場合、“実務経験7年”という高いハードルがあります。また、学歴なしの場合は、二級建築士を取得しないと一級建築士試験を受験できません。
令和4年一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者のうち、7割超が“大学卒業”を受験資格要件としています。
このことからも、基本的には学校で建築に関する科目を履修していることが前提である資格といえるでしょう。
社会人から建築士になる方法
前述のとおり、建築の学校を卒業していることが基本的な受験資格要件である建築士資格ですが、社会人から一級建築士を取得している方もいます。
ここでは、社会人がゼロから一級建築士を目指す方法を2つのルートでみていきましょう。
学校に通うルート
1つ目は、学校に通うルートです。
短期大学などであれば、2年で一級建築士の受験資格要件を満足できます。
ただし、一級建築士試験に合格したのち、免許を登録するには所定の実務経験年数が必要であることに留意しましょう。
例えば、2年制の短期大学であれば4年の実務経験というように、合計6年の通学と実務経験で一級建築士の免許登録ができるように設定されているのが一般的です。
以上のように、最短で一級建築士を取得できるのは、学校に通い直して6年で取得するルートです。
大学や短期大学の夜間コースなど、社会人でも通いやすいカリキュラムを組んでいる学校があるので、有効に活用してみてください。
学校に通わないルート
学校に通わないルートでは、実務経験年数で受験資格要件を満たすことになります。
学歴なしで一級建築士を受験することはできないので、7年の実務経験ののちに二級建築士を取得し、一級建築士を受験します。
一級建築士の免許を登録するには、二級建築士として4年の実務経験が必要なので、一級建築士の登録までに最短でも11年が必要なことに留意しましょう。
学校に通わず、実務に集中したい方におすすめのルートです。
建築設計に携われる求人例
建設・建築業界専門の転職エージェント「建築転職」で取り扱っている求人の中から、意匠・構造設計の求人募集の例を紹介します。
(※2023年10月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
ゼネコンの意匠設計の求人
仕事内容:意匠設計業務
応募条件:20代 1年以上の経験
30代 実務経験5年以上
週休2日制(土・日)
年収6,000,000円 〜 9,500,000円
夏期休暇、年末年始、有給休暇、慶事休暇 等
ゼネコンの構造設計の求人
仕事内容:構造設計業務
応募条件:一級建築士
ゼネコン設計部または設計事務所でRC造、S造の構造設計経験
完全週休2日制(土日)、祝日
年収7,500,000円 〜 10,000,000円
夏期休暇、年末年始、有給休暇、慶事休暇、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇 等
「建築転職」では、上記のような意匠・構造設計者の求人のほか、非公開求人情報も多数取り扱っています。非公開求人は無料登録いただいた方にご紹介しております。
求人募集における建築設計の年収相場
建築士の求人募集における年収相場は以下のとおりです。
建築士の年収は企業規模によって異なるのが特徴。大手ゼネコンや大手組織設計事務所であれば、年収1,000万円も現実的といえるでしょう。
- 一級建築士:550~700万円前後
- 二級建築士:350~450万円前後
- 木造建築士:350万円前後
転職するならエージェントに相談してみよう
建築設計の仕事は、業種や会社によって仕事内容や働き方が異なります。
自分の環境や適性に合わせ、働きやすく、才能を生かせる会社を見つけるのが成功への第一歩。
転職エージェントはより細かい仕事内容、仕事への適性、就職活動の有利な進め方などをアドバイスしてくれます。
興味がある方は、お話からでも、ぜひ「建築転職」にご相談ください。
おわりに
建築設計は、建築や街づくりを通して社会に貢献する夢のある仕事です。
意匠・構造・設備設計をはじめとしたさまざまな分野が存在するので、自分の能力や適性を生かせる働き場所を探してみてください。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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