設計監理とは?「工事監理」や「施工管理」など混合しやすい言葉を正しく理解しよう

「設計監理」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、実は、正確な言葉ではありません。資格を所有する建築士の独占業務である「設計」と「工事監理」が混合して使われているのかもしれませんね。

「工事監理」と「施工管理」が間違って使われているケースも多く、役割を正しく理解するためには言葉の意味を正確に知っておく必要があります。

今回は、これらの類似している言葉の意味についてわかりやすく解説します。建設業に入ったばかりの方や、これから挑戦しようと考えている方は、ぜひご覧になってみてください。

設計・工事監理・施工管理の違い

まずは「設計」「工事監理」「施工管理」という3つの業務の違いについてみていきましょう。

設計:設計図書を作成する

設計とは、建築主の要望や予算、建設地の風土、法規制などを踏まえて、建物の規模、デザイン、構造、設備、環境などを計画していく業務です。建築士法により「建築士でなければ一定の建築物の設計・工事監理を行ってはならない(建築士法第3条~第3条の3)」とされており、後述の工事監理と合わせて建築士の独占業務のひとつです。

設計業務の基本的な流れは以下のとおりです。

  • 建築主の計画・要望のヒアリング
  • 基本計画:建物の企画・大きさ・周辺との関係性などの検討
  • 基本設計:部屋のレイアウト、構造・設備の初期検討
  • 実施(詳細)設計:細部の検討、構造・設備計画、設計図書・仕様書作成、確認申請
  • 着工後の変更対応:未決事項の決定、施工性を考慮した変更対応
  • 竣工時の引き渡し及び建築主への説明

各フェーズでコストを算出しながらこれらの作業を進め、建築主と合意を形成していきます。場合によってはイメージを共有するために模型・パース・3Dモデルなどを作成し、建築に詳しくない建築主にもわかりやすいように説明することが大切です。

着工後は施工者と連携し、工事監理業務と並行しながら設計変更に対応していくのが一般的です。

工事監理:設計図書どおりにつくられていることを確認する

工事監理とは、「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかと確認すること(建築士法第2条第7項)」とされています。建築士の独占業務のひとつであり、第三者の目線で品質・工期・コストを確認しながら建築主に丁寧に説明していく大切な役割です。

工事監理の主な役割は以下のとおりです。

  • 建築主に対する工事監理体制及び工事監理方針の説明
  • 設計図書の内容把握及び矛盾や不適切な納まり等の報告
  • 施工図・製作図・工事書類などの確認
  • 工事と設計図書との照合
  • 工事進捗及び工事監理状況の報告
  • 特定行政庁もしくは指定確認検査機関による中間・完了検査の立ち合い
  • 工事監理報告書などを提出

工事監理は、設計図書のとおりに施工されていることを確認することが重要な役割であり、設計図書と異なる部分を発見した際は施工者に是正を指示します。

また、建築主と施工者の橋渡しのような役割も担っています。工事進捗や品質検査の結果を報告しながら建築主の不安を取り除き、要望があれば施工者・設計者と連携してしっかり対応することも重要です。

施工管理:工事現場を運営する

施工管理は、品質・原価・工程・安全などを管理しながら工事現場を運営する業務です。基本的には元請会社に所属する施工管理者が担います。

工事監理と施工管理という言葉が似ているため、実務では工事監理を「さらかん」、施工管理を「たけかん」と呼ぶことがあります。漢字(監・管)の部首から由来した呼び方であり、イメージしやすくなるので覚えておきましょう。

施工管理者の主な役割は以下のとおりです。

  • 施工計画の立案
  • 作業員(職人)や材料の手配・調達
  • 設計図書や仕様書に指定された品質を確保できていることの確認
  • 工事費が原価を超えないようにコントロール
  • 工事進捗を踏まえながら工程を調整
  • 安全巡回及び作業員に対する安全指導
  • 施工性を踏まえた設計者との調整
  • 特定行政庁もしくは指定確認検査機関による中間・完了検査の対応

施工管理の業務は多岐にわたりますが、代表的なのは品質・工程・原価・安全の「4大管理」です。設計図書や仕様書を読み込み、高品質な建物を目指して合理的な工事計画を立てます。

実際に工事作業を行うのは下請業者の作業員なので、打ち合わせでつくり方を共有し、施工状況に間違いがあれば是正方法を検討して対応を指示します。工事計画や作業環境の整備が不十分だと作業員が危険に晒されることもあるので、高い安全意識を持って進めることが大切です。

建築士と施工管理者の違い

前節では「設計」「工事監理」「施工管理」という業務の違いについて触れました。ここでは「建築士」「施工管理者」という職能の違いについて解説します。

建築士とは

建築士とは、一定の建築物の設計・工事監理を行うことができる専門資格の所有者であり、設計事務所やゼネコンの設計部に所属しています。建築士資格には以下の3つがあります。

  • 一級建築士:すべての建築物を扱える
  • 二級建築士:比較的小規模な建築物を扱える
  • 木造建築士:より小規模な木造建築物を扱える

建築士と聞くと設計者をイメージするかもしれませんが、実際には設計者と監理者がいます。兼任するケースもありますが、建築士のなかには設計者と監理者がいると覚えておきましょう。

施工管理者とは

施工管理者は、4大管理を実行しながら現場を運営する役割です。ゼネコンやサブコンといった元請の施工会社に多く所属しています。施工管理者には以下のような国家資格があり、級数によって扱える工事の規模や役割が異なります。

  • 1級建築施工管理技士:大規模工事の監理技術者など
  • 2級建築施工管理技士:小規模工事の主任技術者など
  • 1/2級管工事施工管理技士:管工事に特化した1級施工管理技士
  • 1/2級電気工事施工管理技士:電気工事に特化した1級施工管理技士

その他にも、さまざまな工事に特化した施工管理技士の資格があります。所属する会社や自分の役割に応じて必要な資格を目指しましょう。施工管理者は労働環境の厳しさが指摘されてきましたが、近年は業界全体で環境改善に取り組んでいます。ものづくりの醍醐味を楽しめる職能なので、やりがいを感じながら働きたい方は挑戦してみましょう。

工事監理者は厳しい目を持つことが大切

工事監理者は、第三者の目線で品質や工期を担保することが重要です。建築主・設計者・施工者の間に立つ存在であり、しっかりと監理業務を遂行しながら建築主に対して丁寧に説明して不安を取り除くことができれば、工事がスムーズに進捗していきます。

ゼネコンの設計施工一貫方式の場合は施工者と監理者が同じ会社のケースもありますが、業務の遂行に当たっては常に厳しい目を持ち、しっかりと必要な対応を指示することが大切です。

おわりに

建築士の独占業務である「設計」と「工事監理」、類似している「工事監理」と「施工管理」といった言葉が混同され、間違って使われているケースが少なくありません。これらの言葉を間違えてしまうと意思疎通がうまくできなかったり、技術者としてのレベルを低く見られてしまったりすることがあります。これを機に言葉の意味を正しく理解し、しっかりと使い分けて専門性の高い技術者を目指しましょう。

この記事を監修した人

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株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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