建築積算士とは?仕事内容や資格、将来性、上位資格の「建築コスト管理士」についても解説

建設プロジェクトで欠かせないのが、コスト管理です。建築積算士は建設コストを算出するプロであり、これからも高い需要を見込める非常に大切な役割です。建設会社などで積算や工事費算定といった業務に携わっている方は、積極的に資格試験に挑戦してみましょう。
今回は、建築積算士の基本的な仕事内容から資格の概要、さらに広範なコストマネジメントに関われる上位資格についてわかりやすく解説します。実務で経験を積みながら資格取得を目指し、自分の市場価値を高めていってください。
目次
建築積算士の仕事内容
はじめに、建築積算士の仕事内容をご紹介します。
建築工事分野の数量積算及び工事費算定
建築積算士の主業務は以下の3つです。
- 数量積算
- 工事費算定
- コスト管理
数量積算
数量積算は、設計図書や仕様書から必要な資材の数量や工数(作業完了に必要な作業量)を算出する作業です。積算基準は官庁営繕の資料などに定められているため、それらのルールを学び、原則に従いながら数量を積み上げていきます。高度な知識と正確かつスピーディーな作業が求められます。
工事費算定
工事費算定は、積算数量に単価を入れ、工事にかかる費用を算定する作業です。材料・労務単価は社会情勢により時々刻々と変わるため、常にアンテナを張って建材・人材価格の変化を把握しておく必要があります。
コスト管理
コスト管理は、建設費が予算内に収まるようにコストをコントロールする作業です。コストは数量と単価で決まるため、設計者や施工者と連携しながら数量を削減したり仕様を調整して単価を下げたりすることで、全体の建設費を予算内に収めていきます。優秀な建築積算士は、コストに大きな影響を与えている要素を見極めて適切なアドバイスをすることで、コストを削減しながら高品質な建物の実現をサポートします。
設計図書の読み込み
数量積算を正確に行うために必要なのが、高い精度で設計図書を読み込むことです。設計図書や仕様書から建物の概要、全体の建築・構造・設備計画、各部の細かい納まりを読み取り、数量に反映していきます。設計図書から読み取れない部分は必要に応じて設計者に質疑を挙げ、お互いに詳細度を上げていくことも大切です。
設計図書の読み取り精度は個人の力量によって差が大きいため、一つひとつのプロジェクトを大切にしながら精度を高めていく努力を継続していきましょう。
施工計画の想定
建築の積算は工事費を算定する作業なので、工事中に必要な仮設足場やクレーンなどの費用も積み上げる必要があります。しかし、仮設足場などの工事で一時的に必要な資材・機械・車両などは設計図書に記載されていません。建物の形から施工計画をイメージして必要な仮設資材などを想定する必要があるため、現場経験がないと非常に難易度の高い作業といえます。
自分が積算業務を担当した現場を見学させてもらうことでより具体的にイメージできるようになるので、機会があれば積極的に足を運んでみてください。
建築積算士の資格
次に、建築積算士の資格について解説します。
資格の概要
建築積算士の資格は、2001年に「建築積算資格者」の大臣認定が廃止されたことを受け、日本建築積算協会が民間資格認定制度として発展させてきた背景があります。現在の概要は以下のとおりです*1。
- 資格の名称:建築積算士
- 実施団体:公益社団法人日本建築積算協会
- 資格の定義:建築生産過程における工事費の算定並びにこれに付帯する業務に関し、高度な専門知識及び技術を有する専門家
- 求められる技術:建築工事分野の数量算出、工事費算定
- 試験:学科試験(一次試験)、実技試験(二次試験)
- 試験の時期:毎年度1回以上、一次試験は10月頃、二次試験は1月頃
- 受験資格:受験年度の4月2日現在、満17歳未満のものは受験できない
建築積算士を所有していると公共事業への入札で求められる有資格者数として加点されるため、企業としても価値の高い資格です。関連資格である建築積算士補の認定校の授業を受けた上で試験に合格して登録することで、建築積算士の一次試験が免除されます*2。建築積算士補の利用も視野に入れながら効率よく取得を目指しましょう。
試験の難易度
建築積算士試験の合格率は、一次・二次ともに60%前後です。他の資格試験と比べて合格率が低いというわけではありませんが、設計図書の読み取りといった特有の能力が求められるため、実務経験が少ない受験者は難しく感じるケースもあります。
建築積算士の将来性
建設会社が競争力を高めていくには、品質とコストの両立が欠かせません。そのためには優秀な建築積算士の存在が必要不可欠であり、設計者や施工者と連携して性能を確保しながらもコストを削減していくサポートが求められます。
近年は建築主が建設コストの透明化を求めるケースも増えており、業界全体でコスト意識が高まっています。これらの背景から、建築積算士は将来性がある職業といえるでしょう。
建築積算士の上位資格:建築コスト管理士
建築コスト管理士は、積算業務の経験が豊富ならチャレンジしたい関連資格のひとつです。
建築コスト管理士とは

図1 日本建築積算協会の資格の関係性*3
引用)公益社団法人日本建築積算協会「建築と積算 No.494 春 2019」p.8
建築コスト管理士は、積算のみに留まらず、コストマネジメントの領域まで活躍の場を広げる資格です。日本建築積算協会は建築コスト管理士を建築積算士の上位資格に位置付けており、プロジェクトの初期段階から全体のコストマネジメントに寄与できる高度な人材の育成を目指しています*3。
過去の試験の実施結果をみると、建築コスト管理士の受験者数はこの7年間で倍増しています*4。合格者数を一定とする意図が読み取れるので、受験者数が今後も増えていくと難易度が上がっていくかもしれません。取得したい方は早いうちに挑戦するとよいでしょう。
【建築コスト管理士の過去の試験実施結果】
- 2018年度:受験者数159名、合格者数118人、合格率74.2%
- 2019年度:受験者数155名、合格者数128人、合格率82.6%
- 2020年度:データなし
- 2021年度:受験者数221名、合格者数140人、合格率63.3%
- 2022年度:受験者数288名、合格者数138人、合格率47.9%
- 2023年度:受験者数292名、合格者数160人、合格率54.8%
- 2024年度:受験者数359名、合格者数146人、合格率40.7%
建築積算士との違い
建築コスト管理士と建築積算士の役割の大きな違いは以下のとおりです。
- 建築コスト管理士:プロジェクトの企画・構想から維持・廃棄までにわたるコストマネジメント
- 建築積算士:建物の生産過程に関わる数量積算・工事費算定
建築積算士が「建物をつくること」に関するコストを扱うのに対し、建築コスト管理士は「建物のライフサイクル全般」にわたるコストを扱います。より広範な知識や高度な技術・倫理が求められますが、さまざまな角度から社会に貢献できる人材になれるでしょう。
おわりに
建設業界では以前にも増してコストの重要性が高まっており、建築積算士は将来性が高い仕事・資格であるといえます。
建築コスト管理士という上位資格があるので、実務で経験を積みながらステップアップしていくことで、よりやりがいのある役割を担当できます。数量積算のような地道な作業が求められる仕事ですが、ぜひ挑戦してみてください。
積算の仕事で転職を考えている方は、以下の記事が参考になります。
【出典】
*1 公益社団法人日本建築積算協会「建築積算士制度の概要」
*2 公益社団法人日本建築積算協会「建築積算士補制度の概要」
*3 公益社団法人日本建築積算協会「建築と積算 No.494 春 2019」p.8
*4 公益社団法人日本建築積算協会「過去のお知らせ」|各年度のリンク
この記事を監修した人

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
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