技術士補の制度・資格はいつから廃止される?現状と将来について解説

将来的に技術士となる人材を育成するための制度・資格である「技術士補」。認知度が低く、制度の利用者が少ないことから、いつから廃止されるのか心配している方が少なくないようです。
そこで今回は、技術士補の現状と将来の可能性についてわかりやすく解説します。技術士を目指す若手技術者を支援する仕組みとして期待されている制度なので、ハイレベルな技術者を志している方はぜひご覧になってみてください。
目次
技術士補の廃止は決定されていない
結論から述べると、技術士補の制度が廃止される予定はありません(2025年12月時点)。現在、文部科学省を中心に制度の見直しが検討されている状況であり、今後も将来的な技術士を育成する制度として継続される予定です。
しかし、一部で廃止が心配されているとおり、現状の技術士補の制度・資格がさまざまな課題を抱えているのは事実です。技術士は非常に難易度が高いため、「将来的な技術士を育成する」という本来の役割を全うできるように技術士補制度が見直され、多くの方が技術士として活躍できるようになるとよいですね。
技術士と技術士補の関係
技術士補の現状や将来について述べる前に、まずは技術士と技術士補の関係性について解説したいと思います。技術士補の基本的な立ち位置を理解し、メリットがあるなら積極的に活用していきましょう。
技術士とは
はじめに、技術士とは、高度な専門知識、応用能力、実務経験を有し、それらを社会のために使える高い技術者倫理を備えた技術者です。技術者試験は文部科学省令で定められた技術部門ごとに実施されています。
【技術士の技術部門】
| 機械部門 | 船舶・海洋部門 |
| 航空・宇宙部門 | 電気電子部門 |
| 化学部門 | 繊維部門 |
| 金属部門 | 資源工学部門 |
| 建設部門 | 上下水道部門 |
| 衛生工学部門 | 農業部門 |
| 森林部門 | 水産部門 |
| 経営工学部門 | 情報工学部門 |
| 応用理学部門 | 生物工学部門 |
| 環境部門 | 原子力・放射線部門 |
| 総合技術監理部門 | |
総合技術監理部門を除き、試験は「技術士第一次試験」と「技術士第二次試験」に分かれています。令和6年度の結果をみると、第一次試験の合格率が37.4%、第二次試験の合格率が10.2%であり、難易度の高い試験であることがわかります*1*2。
技術士補は将来の技術士を育成するための資格
技術士補とは、登録を受けたうえで、技術⼠となるのに必要な技能を修習するため技術⼠を補助する者です。将来の技術士を育成するための制度・資格であり、下図のとおり技術士の第二次試験を受ける経路のひとつとして認められています*3。

↑技術士試験の仕組み(引用:公益社団法人日本技術士会「技術士になるには」)
技術士試験の第二次試験を受けるための経路は以下の3つです。
- 技術士補に登録し、指導技術士の下での4年を超える実務経験
- 職務上の監督者の下での4年を超える実務経験
- 7年を超える実務経験
技術士補は技術士を目指す人材の可能性を広げる制度として期待されているものの、利用者は少ないのが実情です。
技術士補の現状と制度の見直しが検討されている理由
現在、技術士補の制度が効果的に機能しているとはいえず、文部科学省は制度の見直しを検討しています。ここでは技術士補の現状についてみていきましょう。
技術士補を経由して技術士になる人が少ない
文部科学省の資料によると、令和元年度の技術士第二次試験において、技術士の経路を選択しているのは全体の1.99%に留まっています*4。一方、93.44%の受験者が選択しているのが「7年を超える実務経験」です。指導技術士や監督者の制限がないので、さまざまな環境の技術者が満たしやすい条件といえます。
技術士補を指導する技術士が少ない
技術士補を経由して技術士を目指す場合、指導技術士が必要です。ところが、自分が受験したい技術部門を専門とする指導技術士を確保するのは難しいのが実情であり、技術士補の制度が機能しない一因となっています。
制度の認知度が低い
前述のとおり利用者が非常に少ないことから、制度が広く認知されていないようです。そもそも、各業界では高度な専門知識として認知されているものの、技術士という資格自体が世間一般で高い認知度を持っているとはいえません。文部科学省も認知度の低さを課題として挙げており、技術士資格の活用促進・普及拡大を継続的に実施しています。
将来的な制度変更に向けて検討されている内容
次に、文部科学省で検討されている将来的な制度変更の内容をご紹介します。
名称変更
技術士補を「修習技術者」といった名称に変更する案が検討されています。名称変更の目的は、技術士を目指す資格であることを明確にすることです。現在は技術士補の登録を受けること自体を目的としている受験者もおり、「将来の技術士を育成する」という本来の目的を果たせていないことが名称変更の背景にあります。
登録期間の制限
技術士第二次試験の傾向をみると、技術士補になってから10年程度の合格者が多く、15年を超えると合格者が減っています。この状況を変えるために検討されているのが、技術士補の登録期間を15年程度に制限し、技術士第二次試験に進むことを促す案です。これにより、決められた期間のなかで技術士を目指すモチベーションが生まれます。
指導技術士の制限の緩和
現在は指導技術士の部門制限が設けられており、受験者が希望する技術部門を専門とする指導技術士を確保しにくいのが実情です。そこで、専門科目の補完はIPDシステムでの履修に任せ、指導技術士の部門制限を撤廃する案が検討されています。
IPDシステムとは、高等教育機関を卒業した若手技術者などが、技術的実務に就いてから技術士資格を獲得するまでの間、「卒業生としての知識・能力」を「専門職としての知識・能力」へと成長させるための活動を社会全体で支援する仕組みです。
IPDシステムの検討・整備を進めることで指導技術士の制限を緩和し、技術士補の制度が利用しやすくなるように見直しが進められています。
在学中の一次試験受験の奨励
在学中でも技術士一次試験に合格して登録すれば技術士補を取得することができます。技術士を目指すのであれば大きなメリットがあるチャレンジといえるでしょう。今後は大学で技術士制度の説明会を実施するなど、在学中の一次試験受験を奨励することが検討されています。
おわりに
技術士補は将来の技術士を育成する制度として期待されているものの、現状では利用者が少なく、よく機能しているとはいえません。文部科学省では幅広い人材が技術士を目指せるように技術士補制度の見直しが検討されており、さまざまな変更内容が示されています。技術士補が利用しにくかった直接的な原因である「指導技術士の部門制限」が撤廃されるのは特に大きな変更であり、多くの若手技術者が技術士補を利用するきっかけになることでしょう。技術士を目指す方は技術士補の最新情報を確認し、効果的に活用してください。
【出典】
*1 公益社団法人日本技術士会「技術士第一次試験 統計情報」
*2 公益社団法人日本技術士会「技術士第二次試験 統計情報」
*3 公益社団法人日本技術士会「技術士になるには」
*4 文部科学省「技術⼠制度をめぐる現状と課題」p.12
この記事を監修した人

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
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