女性の施工管理の実情について解説。妊娠・育児と仕事の両立はできる?
ダイバーシティ(多様性)は企業の在り方においても重要視されるようになり、さまざまな個性を持った人が等しく働ける環境づくりが進められています。
そのような社会の流れを背景に、建設業においては女性の活躍しやすい環境づくりが喫緊の課題です。
令和2年には国土交通省が「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」を策定し、官民一体の取り組みを呼び掛けています。
この記事では、女性の施工管理の実情について解説します。妊娠・育児との両立についても触れるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
女性視点からみた施工管理
まず、女性視点からみた施工管理という職種について解説します。
これから述べるとおり、女性だからといって不利になることは基本的にはないといえるでしょう。
施工管理は力仕事ではない
勘違いされやすいことですが、施工管理は力仕事ではありません。
実際の施工を行うのは専門工事業者の職人であり、施工管理者の仕事は工程・原価・品質・安全の4大管理を主とした業務です。
施工管理の仕事で重要なのは、数多くの専門工事業者が気持ちよく作業できるように業者間の調整を行うこと。
力以上に気配りやコミュニケーション能力が必要とされる仕事です。
留意点として、施工管理は力仕事ではありませんが、体力仕事ではあります。
現場管理のために1日の歩行が10,000~20,000歩に及ぶことも珍しくありません。体力に自信がない方は、慣れるまで慢性的な疲れを感じてしまうかもしれません。
また、力仕事ではないと述べましたが、少し重いものを運ぶことはあります。
通常時は気にならない程度ですが、妊娠中のように数kgの物も持てない時期は注意が必要です。
妊娠初期で事情を説明できない歯がゆい時期もあるかもしれませんが、普段から職人に物を運んでもらえるような関係づくりを心がけ、変わりなく働けるようにしておくとよいでしょう。
女性に配慮した設備は欲しい
女性用トイレや更衣室の有無は働くにあたって気になるポイントです。
近年は女性定着促進のため、現場事務所に女性用トイレと更衣室が設置されるケースが増えています。
しかし、中小規模の現場では、予算やスペースの関係上、現場内トイレが男女共用とされていることがあります。
現場事務所に戻らないと女性用トイレを使えないのが気になる方がいるかもしれません。
基本的に男性との差はない
ここまで説明したとおり、施工管理の仕事には女性と男性で差はないといえるでしょう。
施工管理で必要なコミュニケーション能力を磨き、施工管理の仲間、建築主、設計者、下請業者などと良好な関係を築ければ、第一線での活躍が期待できます。
令和2年に国土交通省が策定した「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」(以下、「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」)では、女性が「働きがい」と「働きやすさ」を両立できる環境の整備が謳われています。
このことからも、女性が活躍しやすい環境づくりがますます進むと考えられるでしょう。
男性と大きく異なるのは、やはり妊娠・子育てのライフステージがあることです。
これについては次節に譲るので、参考にしてみてください。
また、施工管理のより詳しい仕事内容や求められる資格は以下の記事をご参照ください。
施工管理と妊娠・育児を両立するポイント
女性特有のライフステージといえば、妊娠と育児です。
ここでは、施工管理と妊娠・育児を両立するポイントについて解説します。
積極的に休暇の必要性などを説明するべき
どの職場についてもいえることですが、ルールや制度が整っても現場の意識が追いついていないのが実情。女性が働き続ける上で必要な休暇や施設、設備の重要性を積極的に説明する姿勢が大切です。
各企業で女性が働きやすい環境づくりが進められているものの、そもそも上長がどんな環境を目指せばよいのか分かっていないケースがほとんどだからです。
「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」において、以下のようなポイントが挙げられています。
- 現場のトイレや更衣室などの整備(ハード面)
- 現場での調整参加の柔軟化や、作業分担による現場直行や直帰などの配慮(時間面)
- 管理職や現場従事者に対する助成との適切な接し方に関する講習の実施(意識面)
具体的に必要な設備などが十分に明記されているとはいえず、企業の裁量に任されている部分が大きいのが実情です。
例えば、月経時の出勤時間の調整や休日取得、子どもの看護時のリモートワークなど、実際に働いている女性ならではの視点から生じる要求があるでしょう。会社はこれらの対策を取る気がないわけではなく、見えていないことがほとんど。
積極的に必要性を説明し、働きやすい環境をみんなでつくる気持ちで取り組むとよいでしょう。女性の労働環境改善のためには、女性だけが声を上げ努力するべきではありません。性別を問わず、改善の必要性を理解する人すべてにその姿勢が求められます。
このような発信をするのは勇気がいるものですが、そのような勇気も施工管理で活躍する上で必要な素質です。
育児休暇について
育児休暇からの復帰については「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」でも触れられており、問題なくキャリアを形成できる復職支援が会社に求められています。
施工管理のキャリア形成で難しい点は、キャリアがプロジェクトの竣工で区切られることです。
プロジェクトに最後まで携わることで得られることは多いですが、プロジェクトは数年にわたって進められるため、中途半端なタイミングで育児休暇を迎えることが多いでしょう。
2人、3人の子どもを産む場合は、キャリア形成に不安を感じることがあるかもしれません。
これについていえるのは、育児休暇を取得する期間は数十年というキャリアで考えればごく一部であるということ。
全体の工事は数年に及ぶ場合でも、鉄骨建方などの一つひとつの工程は限られています。
上長と相談しながら区切りよくできる仕事を担当し、子育てが終わってから存分に活躍できるよう研鑽を重ねましょう。
また、これからも女性定着促進に向けた動きが進み、女性の施工管理者は増えていくと考えられます。そのとき、自分が育児と両立した経験が生き、女性施工管理者の育成に繋げられるかもしれません。
社会のニーズに合ったマネージャーになれる可能性を秘めているというプラスの見方もあるでしょう。
育児との両立について
育児休暇から復職し、働き始めたときの課題は時間外労働です。
施工管理の仕事は、昼間に現場管理、時間外労働で施工計画というのが一般的な流れ。昼間の現場管理の合間に施工計画を進められるのが理想ですが、イレギュラーが発生しやすい特性上なかなか難しいのが実情です。
施工管理と子育てを両立するには、お互いの突発的な対応を依頼できる二人一組の人員配置や、定時で全うできる仕事の担当など、職場の理解と環境づくりが重要といえます。これらの対応はケースバイケースであり、現場としてはどのような対策が最善か分かりかねていることが多いため、自分から発案することも考えてみるとよいでしょう。
また、ベビーシッターや学童保育などの外部サービスを使うのもひとつの方法です。保育園のお迎えから依頼できるサービスもあります。
安心して預けられるように十分な調査を行っておくことをおすすめします。
会社ごとの環境は転職エージェントに聞くのがおすすめ
転職エージェントは業界の事情に精通しており、繋がりがあれば会社ごとの女性定着促進の取り組みについても説明してくれます。
女性施工管理者の支援実績があるエージェントも多いため、いくつか登録しておくと気軽に相談できる強い味方になってくれるでしょう。
興味がある方は、ぜひ「建築転職」にご相談ください。
おわりに
「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」の策定を受け、女性が働きやすい環境づくりが建設業界においても進められています。
しかし、まだまだスタート地点に立ったばかり。働きやすい環境をみんなでつくるチャンスと捉え、信頼できる人間関係を築き、アイディアを発信しながら取り組んでみてください。
参考:建設産業における女性の定着促進に向けた取組について(国土交通省)
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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