工事請負契約書とは?作成する目的や必須事項、印紙税について詳しく解説
工事を発注・受注する際の約束ごとをまとめた文書が、「工事請負契約書」です。
建設工事という大きな事業を行うに当たり、完了までスムーズに進めるためにはこのような契約書が欠かせません。しかし、建設業法をはじめとした法基準も関係し、内容が複雑なのでよく理解できていない方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は工事請負契約書における必須事項や、印紙税についてわかりやすく解説します。必須事項以外の項目は任意に決められるので、発注者と受注者が気持ちよくプロジェクトを進められるように話し合いをしていきましょう。
目次
工事請負契約書とは
さっそく工事請負契約書についてみていきましょう。その目的を知ることで、発注者と受注者の双方にメリットのある契約書を作成できるはずです。
工事の発注・受注時に交わす契約書
冒頭でも述べたとおり、工事請負契約書は、工事の発注・受注時に、発注者と受注者の間で交わす契約書です。建設業法において、必須事項を記載した工事請負契約書の作成・署名・押印・交付などが建設業者に義務付けられています。
これに違反した場合、その建設業者は、国土交通大臣または都道府県知事から指示を受けることがあり、さらにこの指示にも従わない場合は、営業停止処分や建設業の許可の取り消しの可能性があります。
このように建設業法で厳しく定められている工事請負契約書ですが、その目的は「工事を完成させること」です。建設工事は数年にわたるケースが多く、その間にトラブルが発生することもあります。トラブルの種類に応じて発注者・受注者に対してどのような対処を求めるのかを決めておくことで、スムーズにプロジェクトを進められるでしょう。
建設業法で工事請負契約書に記載が義務付けられているのは16項目
建設業法第19条で工事請負契約書に記載することが義務付けられているのは、以下の16項目です。工事の内容や金額、支払方法のほか、天災や債務不履行などのトラブル発生時における対処法などが定められています。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期及び工事完成の時期
- 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
- 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
- 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
- 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
- その他国土交通省令で定める事項
記載が義務付けられている16項目以外は自由に決められる
前節では、工事請負契約書への記載が義務付けられている16項目を紹介しましたが、それ以外の項目は、発注者と受注者が合意した内容を自由に記載できます。
建設工事は、プロジェクトや土地の特殊性によってさまざまな事情が考えられます。それらを考慮した上で、双方が不当な被害を受けないように工事請負契約書をつくることが大切です。
このときのポイントの解説は次章に譲るので、ぜひご覧になってみてください。
印紙税法に定められる印紙が必要
工事請負契約書は、印紙税法における「印紙税額の一覧表(その1)第2号文書」に当たります。そのため、以下に示す契約金額に応じた印紙税額の収入印紙の貼付が必要です。
契約金額 | 印紙税額 | |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | |
1万円以上 | 100万円以下 | 200円 |
100万円超え | 200万円以下 | 400円 |
200万円超え | 300万円以下 | 1,000円 |
300万円超え | 500万円以下 | 2,000円 |
500万円超え | 1,000万円以下 | 1万円 |
1,000万円超え | 5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超え | 1億円以下 | 6万円 |
1億円超え | 5億円以下 | 10万円 |
5億円超え | 10億円以下 | 20万円 |
10億円超え | 50億円以下 | 40万円 |
50億円超え | 60万円 | |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで(国税庁)を参考に作成
工事請負契約書を作成するときのポイント
前章で工事請負契約書には必須事項と双方の合意のもとで記載する事項があることを述べました。ここでは、それらの決まりごとを作成する上で留意しておきたいポイントを紹介します。
工事が遅延したときの違約金
必須事項において、「天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め」と「各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金」が定められています。
一般的に、天災などの不可抗力によって工事が遅延する場合、受注者はその責任を問われません。
一方、受注者の工期の設定ミスや、施工ミスなどにより工事が遅延する場合、発注者は受注者に損害賠償を求められます。損害賠償の金額については、施設の開業の遅延によって生じる損害なども考慮し、発注者と受注者で協議を行いましょう。
追加工事代金に関する規定
契約を締結する場合、契約物の範囲や仕様をまとめた契約図を作成するのが一般的です。そのときに、契約金額に含まれる工事の範囲や見積もりの明細について合意し、工事内容の変更や物価変動が生じた場合の方針を定めておきましょう。
これは、建設中に物価上昇などが起こり、想定どおりの金額で資材を調達できなかったときに建設会社が被害を受けないようにするためです。
しかし、発注者としても想定以上の建設コストが掛かってしまうのは困るもの。どれほどの物価上昇が想定されるかをあらかじめイメージしておくためにも、事前に話し合っておくのが大切です。
騒音・粉じんなどのクレームに対する対応
建設工事で発生する騒音や粉じんは、近隣のクレームに繋がりやすい現象です。一般的には建設会社が近隣に対する事前説明やクレーム発生時の対応を行いますが、工事請負契約書で第三者との紛争への対応を規定しておきましょう。
閑静な住宅街における工事などでクレームが工程に影響を与えることが懸念される場合、防音シートによる養生などが必要になります。このような特殊な対応にはお金がかかるので、契約金額に含まれていることを確認し、あとで追加請求が発生しないようにしましょう。
業務上で留意しておくべき工事請負契約書のポイントは転職エージェントに聞いてみよう
工事請負契約書は複雑ですが、設計・施工・営業など、建設業の多くの仕事に関係する大切な文書です。工事請負契約書に関して業務上で留意しておくべきポイントを知りたい方は、業界の実情に精通したプロフェッショナルである建設業界専門の転職エージェントに聞いてみましょう。
建設業の仕事に興味がある方は、ぜひ「建築転職」にご相談ください。
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おわりに
工事請負契約書は、「工事を完成させること」が目的なので、契約を専門とする部署でもない限り、スムーズに仕事を進められていればあまり意識することはありません。
しかし、トラブルが発生したときは拠り所になる契約書です。知っておくことで仕事を進めやすくなる部分もあるので、建設工事に携わるときは目を通すようにしてみてはいかがでしょうか。
工事請負契約書に関する疑問を聞いてみたいという方は、ぜひ「建築転職」にご相談ください。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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