建築CADオペレーターの仕事内容や関連する資格・スキルをわかりやすく解説、転職の参考になる求人の年収相場も
建物や建築業界に関心のある方、あるいはITスキルを持つ方のなかには、CADに興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。建築CADオペレーターは、建築業界でCADを扱う代表的な職種です。
では、建築CADオペレーターは、どのような仕事を任されるのでしょうか。また、どのような資格やスキルが求められるのでしょうか。この記事で、詳しく確認していきましょう。
目次
建築CADオペレーターはどんな仕事をする職業?
建築CADオペレーターは、「CAD」と呼ばれるソフトウェアを使って図面を作成する職業です。CADの活用により正確な図面を作成し、依頼者のニーズに合った安全な建物の建築を実現します。
仕事は、パソコンの操作が主体です。建築に関わる職種ですが、力仕事ではないため体力がない方でも安心です。また、内勤しかできない方にも対応できます。スキルのある方は、在宅での仕事も可能です。
図面の作成は、設計者の指示や依頼内容を満たすことが前提となります。ですので、オペレーター自身が判断できる範囲は限られ、設計が変更になった場合は作り直しの対応を行うこともよくあります。
CADオペレーターと設計補助の違いは?
CADオペレーターと設計補助は、混同されがちです。実際に「設計補助」という職種でCADオペレーターを募集する求人広告は、よく見かけます。しかしCADオペレーターと設計補助では、業務の範囲が異なります。
CADオペレーターはCADを操作し、図面にあらわすことが仕事です。建築の現場や顧客先に訪問することは基本的にありません。
一方で設計補助は、建築士をサポートする業務を行います。以下のように多種多様な業務があります。
- 顧客との打ち合わせに同席する
- 現地調査の補助
- 役所に提出する、あるいは顧客に提示する書類の作成
この点では、設計士と共通する面があります。もちろんCADを使えるスキルも求められますが、それは設計補助業務の一部に過ぎません。設計補助の仕事はCADオペレーターよりも広範囲ですので、フットワークの軽さも求められるでしょう。
設計士については、以下の記事もご参照ください。
建築CADオペレーターの仕事に関する資格
建築CADオペレーターの仕事に役立つ資格は、3つあります。資格がないとなれない職業ではありませんが、持っていれば有利です。それぞれの資格がどのような内容か、また取得するメリットについて解説していきましょう。
建築CAD検定
建築CAD検定は、歴史の長い建築分野のCAD試験です。試験は、一般社団法人全国建築CAD連盟が実施しています。受験者は年間1万人以上、総受験者は延べ15万人以上にのぼります。
試験は全国14会場で年2回実施され、科目は実技試験のみです。准1級、2級、3級、4級の4段階がありますが、4級は高校生の団体受験に限られます。准1級、2級、3級のレベルは、以下のとおりです。
級 | 求められるレベル |
---|---|
准1級 | さまざまなケースに対して適切な図面を作成できる、CADのスペシャリスト |
2級 | 与えられた情報をもとに、要件を満たす図面をCADを使って作成できる |
3級 | 与えられた図面と同じ内容の図面を、CADを使って作成できる |
実務に活かそうとする方には、2級の資格が求められるでしょう。また准1級の合格者は少なく、狭き門です。
建築CAD検定の試験内容の詳細や合格率等は、以下の記事で詳しく解説しています。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施する検定試験で、以下の特徴があります。
- 2次元と3次元に分かれている
- ベンダーフリー(特定のソフトウェアに依存しない試験)
- 累計応募者数は2次元が59万人、3次元が5万人。30年以上の実績がある
- 教育訓練給付金制度の対象資格
試験は、2次元CADが「基礎」「2級」「1級(機械、建築、トレース)」、3次元CADは「2級」と「準1級」、「1級」に分かれています。基礎と2級は筆記試験のみで、随時受験可能です。準1級と1級は実技試験があり、年2回実施されています。
建築CADの場合は、2次元CADを選ぶ方が多いでしょう。スキルアップのためには2級に合格した後、1級の建築を選ぶことがおすすめです。合格率を以下に示しました。
級 | 合格率 |
---|---|
基礎 | 70%前後 |
2級 | 50~60%前後 |
準1級 | 50%前後 |
1級 | 30~60%前後 |
TCADs
TCADsは、一般社団法人コステックエデュケーションが実施する検定試験です。建築部門と機械部門に分かれており、それぞれについて学科試験と実技試験が年2回実施されます。
試験の種類 | 問われる内容 | 出題方式 |
---|---|---|
学科試験 | 図面や専門分野の基礎知識 | CBT方式(試験会場のパソコンを使って解答する) |
実技試験 | 図面の理解力、CADを使った製図能力 | 会場で用意されたコンピュータのCADを使って解答する |
TCADsには級がありません。結果は、990点満点でのスコアで表示されます。英語の試験であるTOEICと似た方法です。全員が同じ内容の試験を受けるわけですから、初心者には難しく感じるかもしれません。
CADオペレーターになるために必要なスキル
CADオペレーターの実務をスムーズに遂行するためには、3つのスキルが重要です。どのようなスキルを身につけておく必要があるか、確認していきましょう。
CADを使って迅速・正確に図面を描けるスキル
CADオペレーターはCADを扱うことが専門の仕事ですから、CADを使えることは必須条件です。ただし、単に図面を描けるだけでは実務には不足でしょう。実務では与えられた要件に沿って、迅速かつ正確に図面を描けるスキルが求められます。
建築業界でよく使われるCADソフトには、以下の3つが挙げられます。
- Jw_cad
- AutoCAD
- VectorWorks
このうちJw_cadは比較的よく使われているソフトで、無料でダウンロードして使えます。一方でAutoCADは高価であり、VectorWorksのシェアは高くありません。「高価なソフトに費用をかけられないが、CADを学びたい」という方は、Jw_cadを選んでみてはいかがでしょうか。
建築や設計・製図に関する基礎知識
建築CADオペレーターで働く職場では、建築や設計・製図に関する用語がよく使われます。用語が理解できないと、顧客の依頼内容を図面に落とし込めないかもしれません。
依頼者の意図を正しく理解しスピーディーに図面を作成するためには、建築や設計・製図に関する基礎知識が必要です。ある程度はCADの勉強で学べる部分もありますが、書籍などで知識を得ることも良い方法の一つに挙げられます。
設計者の意図を正確に汲み取るコミュニケーションスキル
依頼内容がわかりにくい場合やあいまいな場合は、どのように仕事を進めればよいかわからなくなるケースもあるでしょう。ときには、設計者の指示通りに仕事をすることが必ずしも最善とは限らない場合もあります。
CADオペレーターの仕事において、設計者の意図を正確に汲み取ることは重要です。不明な点は独断専行せず、必ず設計者に確認しましょう。コミュニケーションを密に取ることは、よい建物の設計につながります。
CADオペレーターはどんなキャリアの可能性がある?
CADオペレーターの将来は、大きく2つに分かれます。
1つは、熟練したCADオペレーターを目指す道です。優秀なCADオペレーターは会社内外での評価も高まり、収入のアップも期待できるでしょう。有利な条件で転職することも可能です。
もう1つの方法は、建築に関する他の職種を目指す道です。CADオペレーターである限り、裁量はなかなか大きくなりません。CADを使える設計士などにキャリアチェンジすることで、建物を設計する喜びを味わえます。経験や実力がついたら、建築士を目指すこともよいでしょう。
最近ではコンピューター上で建物の3次元モデルを作成する「BIMツール」も登場しています。BIMツールを扱える技術者にステップアップすることも、選択肢の一つです。
CADオペレーターの正社員の平均年収
最後に、CADオペレーターの平均年収をご紹介します。「求人ボックス 給料ナビ」が2023年3月10日に公表したデータによると、正社員の方の年収は以下のとおりとなっています。
項目 | 金額 |
---|---|
平均年収 | 440万円 |
ボリュームゾーン | 320万円~408万円 |
全体の給与幅 | 320万円~1,025万円 |
出典:カカクコム「CADオペレーターの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)」
国税庁が公表した「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は443万円です。多くのCADオペレーターが該当する「ボリュームゾーン」は、平均年収を下回ることに注目してください。これは平均年収未満で働くCADオペレーターが多いことを示します。
もちろん実力をお持ちの方で、高い給与を得られる会社に入社した場合は、高い年収も期待できます。しかしそのレベルにたどり着くまでの間は、平均年収を下回る可能性が高いことを認識しておきましょう。そうした収入の事情もふまえ、ゆくゆくは設計士や建築士を目指すなど、その先のキャリアプランを考えてみてください。
尚、建築士の仕事内容についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
おわりに
建築CADオペレーターは、CADのスペシャリストです。内勤を希望する方でも無理なく働けること、パソコンを扱う仕事に魅力を感じる方は多いでしょう。一方で年収は、必ずしも高くありません。スキルの高い方は高給を得られる可能性がありますが、平均年収未満となるリスクも十分にあります。仕事の裁量が少ないことも、デメリットといえるでしょう。
CADオペレーターは、すべての方に向く職種ではありません。しかし建築業界において、重要な役割を占める代表的な職種であることは確かです。もしご自身に適性があれば、CADオペレーターを目指してみてはいかがでしょうか。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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