設計事務所の設計士はどんな仕事をしている?仕事の内容や求められるスキル

設計事務所の設計士はどんな仕事をしている?仕事の内容や求められるスキル

この記事では、設計事務所の設計士の仕事内容や求められるスキルをご紹介いたします。

設計士の働く場としては、設計事務所・ゼネコン・ハウスメーカー・アトリエ事務所などが挙げられます。なかでも、設計事務所の特徴は、基本設計から携わり、ゼロから自由に設計できることです。

設計士の仕事は、業態にかかわらずハードであることが多いです。だからこそ、本当にやりたい設計ができる会社を選び、充実した設計士ライフを目指してみてください。

設計事務所の設計士の仕事内容

まずは設計事務所の設計士の仕事内容をご紹介していきます。

扱う建物について

その会社でどんな建物を設計できるのかが、設計士が働く場を選ぶときに一番気になるポイントです。

設計事務所は、意匠設計・構造設計・設備設計が揃っている一流の設計士集団のため、店舗・オフィス・ホテル・集合住宅・病院・学校など、さまざまな用途の建物を扱います。規模も大きいものから小さいものまでさまざまです。

また、官庁施設を扱う機会が多いのも特徴です。官庁施設は、コンペティションやお金のやりとりの透明性を確保するため、設計施工分離発注方式を取るケースが一般的。そのため、設計施工一貫方式であるゼネコンは、設計者として入札できないことが多く、設計事務所が担当するのが通常です。地域の顔となり、幅広い層の人に親しまれる建物を設計したい方は設計事務所の設計士を目指してみましょう。

具体的な業務内容

設計事務所は、設計図書を作成し、施工会社に渡すまでが一般的な業務範囲です。通常は以下の流れで進めていきます。

  • ①建築主のヒアリング
    建築主のイメージをヒアリングで聞き出し、コンセプトを作りあげていきます。
  • ②基本設計
    コンセプトをもとに、建物のボリュームや配置、各層の用途計画などをまとめます。
  • ③提案・入札
    基本設計を建築主に提案し、方向性を合意します。プロジェクトによっては入札形式が採用され、建築主が複数の設計者から選定するケースもあります。
  • ④実施設計
    提案が建築主に受け入れられれば契約を行い、実施設計に進みます。建築主と密にコミュニケーションを取りながら、部屋の配置や大きさ、内装材の色や材質など、合意を取りながら設計をまとめていきます。合意した内容は作図に反映し、設計図書を完成させます。
  • ⑤施工会社の選定・設計図書の説明及び引渡し
    施工会社の選定は、基本的には建築主が行います。施工会社が選定されたのち、意図したとおりに施工されるように、設計図書の意図を施工会社に説明し、図書を引渡します。
  • ⑥施工監理
    施工監理の主体は、プロジェクトによって、設計事務所の設計者、施工者の監理者、第三者の監理会社などさまざまです。施工監理も担当することになった場合は、設計図書どおりに施工されているかを確認するために、現場に足を運び、検査を行います。

他業態の設計士と仕事内容や働き方の違いはある?

同じ設計士でも業態によって仕事内容や働き方が異なります。ここでは、同じく設計図書を成果物とするアトリエ事務所と、竣工建物を成果物とするゼネコンを例として、違いをご紹介いたします。

アトリエ事務所の設計者との違い

アトリエ事務所は、ある建築家をトップとし、その建築家のもとで設計者が腕を磨くイメージが強いです。建築主もその建築家のデザイン性が目的で依頼することが多いので、デザインを優先して設計できるのがメリットです。

業務の大まかな流れについては、設計事務所と変わりません。設計事務所との大きな違いは、意匠設計者・構造設計者・設備設計者が同じ事務所にいないことです。仙台メディアテークの「伊東豊雄建築設計事務所」と「佐々木睦郎構造計画研究所」のように、それぞれの事務所がタッグを組んで設計を進めます。

ゼネコンの設計者との違い

ゼネコンは竣工建物が成果物となるため、設計士の役割がより広範囲です。施工者も同じ会社なので、着工後もコスト削減努力や施工性向上のために、納まりの検討や設計変更の対応をします。

コストや施工性による制限のもとで設計を行うので、自由なデザインよりも、実現性の高いデザインが求められます。その分、細部まで考え抜いた設計を、同じ会社の施工者と協業して実現するため、竣工時の達成感も格別です。ものづくりが大好きな方におすすめです。

働き方について

どの業態の設計士も、時間外労働は一般的なサラリーマンと比べて多い傾向です。なかでも、アトリエ事務所はデザインに対するこだわりが強い分、遅い時間まで設計作業が及ぶことも度々あります。ゼネコンは、急な現場対応があり、不意に時間外労働が必要になります。設計事務所は、比較的自分で時間をコントロールして仕事をできるのがメリットです。

設計事務所の設計士の仕事風景

設計事務所の設計士に求められるスキル

ここでは、設計事務所の設計士に求められるスキルについて解説いたします。資格についてもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみてください。

求められるスキル

設計事務所の設計士に求められるスキルで特に重要なのは、「設計能力」と「コミュニケーション能力」です。

設計事務所で求められる設計能力とは、建築主の意向を汲み取り、設計者の思いも乗せてデザインし、設計図書にまとめる力です。図面・パース・3Dモデルなどを使いながら、専門知識のない建築主にわかりやすく説明し、お互いが納得しながら進めることが大切です。

設計事務所の設計士のコミュニケーションは、同じ社内の仲間、ほかの専門事務所の設計士、施工者、メーカー、建築主など、さまざまな関係者を相手にします。曖昧なイメージを具体化して伝える、細かい納まりを正確に伝える、複雑な法律をわかりやすく伝えるなど、さまざまなコミュニケーション能力が必要です。相手の発言を正しく理解することもコミュニケーション能力のひとつです。相応の知識を身に付け、スムーズなコミュニケーションができるようになる必要があります。

役立つ資格

設計事務所の設計士として役立つ資格を下記に挙げますので、参考にしてみてください。建築士資格については、二級建築士・木造建築士でも就活時には役立ちますが、設計事務所で扱う建物の規模を考慮すると、最終的には一級建築士が必要になります。

  • 一級建築士(二級建築士・木造建築士)
  • インテリアコーディネーター
  • IMのスキル(資格はないが、スキルがあると就職時に有利)

一級建築士、二級建築士、木造建築士の資格については、各記事で詳しく解説しています。




設計事務所の設計士の仕事のやりがい

設計事務所の設計士のやりがいは、基本設計から思い描いた建物が形になることです。敷地に何もない状態からデザインできるので、「自分が生み出した」と強く感じられるからです。ゼネコンの場合は、設計事務所の基本設計をもとに実施設計から行うこともあり、最初の形を決められないプロジェクトもあります。ゼロから生み出したという実感は、設計者としてとても誇りに思えるものです。

設計事務所の設計士に向いている人

設計事務所の設計士に向いている人は、下記のような人です。

  • ゼロからイメージを生み出すのが得意
  • 多くの関係者との協業が得意
  • コミュニケーションが好きで、人の思いを汲み取るのが得意
  • ライフワークバランスがある程度仕事に偏ってもよい

設計士の平均年収

設計士の平均年収は、社会人の平均的な金額です。転職サービスdoda「平均年収ランキング【最新版】」によると、「設計(建設/土木)」の平均年収は456万円です。また国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」では、民間で働く方の平均年収を443万円と公表しています。

設計士の平均年収には、建築士の資格を持つ方が含まれることに注意が必要です。建築士の資格を持たない設計士の年収は、平均よりも低くなる可能性が高いでしょう。

一方で建築士の資格を持つ方は、平均よりも高い年収が期待できます。「求人ボックス 給料ナビ」では、一級建築士の平均年収を499万円と公表しています。社会人平均より高い年収が期待できるでしょう。

設計事務所の設計士の求人募集例

建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、設計事務所の設計士の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)

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  • 仕事内容:注文住宅のデザイン設計
  • 応募条件:住宅設計業務の経験、建築系の大学・学部・専門学校・短大卒、建築系CADでの製図スキル(左記学校で習うレベル)
  • 完全週休2日制
  • 年収4,000,000円 〜 8,000,000円
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  • 仕事内容:ホテルの意匠設計や改修
  • 応募条件:二級建築士以上、実務経験重視
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転職するならエージェントに相談してみよう

設計事務所の設計士の仕事に興味がある方は、転職エージェントに相談してみてください。企業研究の進め方や、採用時に有利になる実績、明確な志望動機の書き方などをアドバイスしてくれます。まずは話を聞いてみるのがおすすめです。

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おわりに

設計士の働く場として有力候補である設計事務所。自由なデザインをできるのが魅力です。やりがいや達成感を強く実感できる職業なので、ぜひ強い気持ちで目指してみてください。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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