建築一式工事とは?就職・転職で専任技術者になるのに必要な資格と実務経験

建築一式工事とは?専任技術者になるのに必要な資格と実務経験

建築一式工事とは、どのような工事なのでしょうか。建築工事一式を請け負うためには、様々な要件を満たす必要があるのです。ここでは、要件の一つである専任技術者に関して、必要な資格や実務経験についても詳しく説明します。建築一式工事の受注を検討している企業や専任技術者を目指す人に有益な内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

建築一式工事とは?

建築一式工事とは、建設工事の1種類であり総合的な規格・指導・調整のもとに建築物を建設する工事のことです。

一般的に一式工事とは、大規模で複雑な工事を示しますが、電気工事や管工事等の単一工事であっても工事規模や作業の複雑性から専門工事として施工することが困難であると判断された場合は、建築一式工事に分類されます。

建設工事の種類

そもそも建設工事には、何種類の工事種類・業種区分があるのでしょうか。建設業法において、建設工事には土木一式工事と建築一式工事の2種類の「一式工事」の他に、27種類の「専門工事」を含めて計29種類の業種区分が存在します。一覧を下記に示します。

  • 1.土木一式工事
  • 2.建築一式工事
  • 3.大工工事
  • 4.左官工事
  • 5.とび・土木・コンクリート工事
  • 6.石工事
  • 7.屋根工事
  • 8.電気工事
  • 9.管工事
  • 10.タイル・れんが・ブロック工事
  • 11.鋼構造物工事
  • 12.鉄筋工事
  • 13.舗装工事
  • 14.しゅんせつ工事
  • 15.板金工事
  • 16.ガラス工事
  • 17.塗装工事
  • 18.防水工事
  • 19.内装仕上工事
  • 20.機械器具設置工事
  • 21.熱絶縁工事
  • 22.電気通信工事
  • 23.造園工事
  • 24.さく井工事
  • 25.建具工事
  • 26.水道施設工事
  • 27.消防施設工事
  • 28.清掃施設工事
  • 29.解体工事

建設業の許可について

一式工事や専任技術者について解説する前に、建築一式工事を請け負うにあたって必要な「建設業許可」に関して解説します。

建設工事を請け負う際、公共工事か民間工事かに関わらず、建設業法第3条に基づき国土交通大臣または都道府県知事から上述の29種類の業種区分のいずれかの「建設業許可」を受けなければなりません。

ただし、政府や自治体が全ての建設工事を管理することは非常に困難です。そこで、「軽微な建設工事」を請け負う場合に限り、必ずしも建設業許可は受けなくて良いとされています。

軽微な建設業とは?

それでは、「軽微な建設工事」とは具体的にどのような工事を示すのでしょうか。下記の2点のような小さな規模の工事が該当します。

  • ①建築一式工事
    請負金額が1,500万円未満または、延べ面積が150m2未満の木造住宅工事
    ▶ここで木造とは主要構造部が木造であるものを指し、住宅とは店舗等を含む併用住宅を示し延べ面積が1/2以上を居住の用に供するものを指します。また、請負金額は消費税込みで、注文者が提供する材料の金額や運送費も含みます。
  • ②その他工事
    請負金額が500万円未満の工事
    ▶小規模工事を指します。ここでも請負金額は消費税込みで、注文者が提供する材料の金額や運送費も含みます。

一式工事と専門工事の違い

建設工事には、建設業法において29種類の業種区分が存在することを解説しました。ここでは、一式工事と専門工事の違いに関して解説します。

一式工事とは?

一式工事とは、総合的な企画・指導・調整のもとに土木構造物または建築物を建設する工事を指し、一般的に大規模で複雑な工事が該当します。例えば、建築一式工事の場合では建築物の新築・改築・大規模修繕工事などです。

ただし、電気工事・管工事・内装仕上工事等の専門工事であっても、工事規模や複雑性から判断して個別の専門工事として施工性が困難な場合は、建築一式工事と判断されます。

つまり、大規模で複数工種が混在している複雑な建設工事において、複数の下請業者(協力会社)に依頼・指示をする必要のある工事であり、元請け業者として建設工事全体を包括的に管理・監督する工事が一式工事に該当します。

専門工事とは?

一方で専門工事とは、工事内容の専門性に着目して区分される個別の工事種類です。上述の土木一式工事・建築一式工事を除いた27種類の業種区分が該当します。

建築一式工事の専任技術者とは?

建設工事を請け負う際には、建設業許可を受ける必要があることを上述しました。ここでは、その許可を受けるために人的・組織的・物的・財産的などの様々な要件が必要であることを解説します。

特に、許可を受けるための人的要件において最も重要なのが「専任技術者を営業所に常勤させているか」という条項です。一般的に、建築一式工事を受注するためには営業所に専任技術者を常勤させる必要があります。

専任とは?

専任技術者とは、工事の請負契約において適切な契約を結び、その工事を契約通りに実行するために役割を担う技術者のことです。具体的な業務内容は、見積もりの作成・契約締結・その他事務手続き・発注者を含む関係者調整です。ここで「専任」とは、その営業所に常勤して専ら当該職務に従事していることを意味します。

その担当技術者の住所が当該現場から著しく離れている場合や、他の営業所の技術者を兼任している場合は専任とは認められず、専任技術者として扱うことが出来ないので注意してください。

建築一式工事の専任技術者

一般建設業と特定建設業、指定建設業について

建築一式工事の専任技術者に必要な資格を知るには、まずは、一般建設業と特定建設業に関して理解する必要があります。また、建設業には専門性によって指定建設業と区分される業種があり、本記事のテーマである「建築一式工事」は指定建設業に分類されており高い専門性が要求されている業種です。

ここでは一般建設業と特定建設業の違いと、指定建設業について解説します。

一般建設業と特定建設業の違い

建設業における許可区分には「一般建設業」と「特定建設業」があり、専任技術者に必要とされる資格や経験が異なります。

請負金額が500万円以上の建設工事を請け負うためには、「一般建設業許可」が必要です。元請け業者が下請け業者(協力会社)へ発注する建設工事の合計金額が4,000万円以上の場合、「特定建設業許可」を必要とします。

ただし、建築一式工事では請負金額が6,000万円以上の場合に特定建設業許可を必要とすることに留意が必要です。

指定建設業とは?

土木一式工事、建築一式工事、電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、造園工事の7業種は、「指定建設業」とされており、特定建設業 の許可を受ける場合は、国家資格保有者を営業所に常駐させる必要があるなど厳しく規制されています。

具体的には、建築一式工事で特定建設業許可を受けようとする場合、専任技術者は原則として一級建築施工管理技士、一級建築士の資格を保有している必要があります。

つまり、一般建設業であろうと、特定建設業であろうと国家資格による専任技術者の証明が承認されることで実務経験の審査をパス出来るのです。もし、専任技術者を目指すのであれば積極的に一級建築施工管理技士、一級建築士などの国家資格取得を考えましょう。

建築一式工事の専任技術者に必要な資格と実務経験(就職・転職)

一般建設業と特定建設業の専任技術者では必要な資格と実務経験が異なります。

一般建設業の場合、一級・二級建築施工管理技士、一級・二級建築士の資格を保有すると専任技術者の要件を満たします。

特定建設業の場合、一級建築施工管理技士、一級建築士の資格を保有すると専任技術者の要件を満たします。

それぞれ詳しく解説します。

一般建設業で専任技術者になるための必要な資格と実務経験の詳細

下記3点のいずれかの要件を満たすことで一般建設業の許可を受けることが出来ます。

  • ①国家資格:
    許可を受けようとしている建設業の業種で定められた国家資格を保有していること。
    ▶建築一式工事では、一級・二級建築士や一級・二級施建築工管理技士の資格が該当します。
  • ②指定学科卒業後の実務経験年数:
    指定学科を卒業しており、学歴に応じた実務経験がある。
    ▶ここで、高卒・専門学校卒の場合5年以上、大卒の場合3年以上の実務経験年数を必要とします。
  • ③実務経験年数:
    許可を受けようとしている建設業の業種で10年以上の実務経験年数がある。

特定建設業で専任技術者になるための必要な資格と実務経験の詳細

下記2点のいずれかの要件を満たすことで特定建設業の許可を受けることが出来ます。

  • ①国家資格:
    許可を受けようとしている建設業の業種で定められた国家資格を保有していること。
    ▶建築一式工事では、一級建築士や一級施建築工管理技士の資格が該当します。
  • ②実務経験:
    建設業の許可を受けた建設工事において元請け業者として4,500万円以上の工事を2年以上監督した経験を保有していること。
    ▶この場合の当該技術者の立場は、主任技術者または監理技術者として、工事の技術上の管理を総合的に指導・監督した実務経験のことを指します。

一級・二級建築士や一級・二級建築施工管理技士の資格に関しては、別記事でも詳しく解説しています。こちらの記事もご参考いただけると幸いです。

建築一式工事業の建設業許可を取得するための5要件

上述では、一般建設業と特定建設業において「専任技術者」になるための要件を解説しました。ここでは、建築一式工事の建設業許可を得るための5要件に関して解説します。

専任技術者の要件と異なるポイントは、建設業許可を得るためには以下の5つの要件を全て満たす必要があることです。

1.経営業務の管理責任者の配置

法人・個人事業ともに、経営業務の管理責任者としての経験を有する者が最低1人以上必要とされています。一定期間の経営経験や補佐経験を有することを条件にしており、許可を受ける特定の業種を5年以上、それ以外の業種であれば6年以上、補佐経験では6年以上の経験を求められます。加えて常勤が必須で兼任は認められません。

2.営業所ごとに専任技術者を配置する

許可を得ようとしている建設業種の専門知識を有している専任技術者が必要です。ただし、一般建設業と特定建設業で要件が異なります。詳しくは上述の「建築一式工事の専任技術者に必要な資格と実務経験」に記載しています。

3.財産的基礎がある

建設工事を行う上では、材料や重機などの資機材の購入やリース、労働者の確保などの一定の準備資金を必要となります。そのため建設業の許可を受けるためにも、請負業者には、一定の財産的基礎を有していることが条件になります。

一般建設業の場合は、以下の3点いずれかに該当する必要があります。

  • ①自己資金が500万円以上ある
  • ②500万円以上の資金調達能力がある
  • ③建設業の許可申請直前の過去5年間において、許可を受けて継続して営業を行った実績がある

特定建設業の場合は、以下3点全てに該当することが求められます。

  • ①欠損の額が資本金の20%を超えていない
  • ②流動比率が75%以上ある
  • ③資本金の額が2,000万円以上かつ自己資本の額が4,000万円以上である

4.欠格要件に該当しない

建設業法第8条、同法第17条に記載されている欠格要件に該当しないことが求められます。欠格要件には、破産者で復権を得ていない者、過去に不正な手段で許可を受け取り、その取消しの日から5年が経過しない者、営業停止が命じられてその期間が経過していない者等が該当します。

5.社会保険と雇用保険に加入していること

社会保険(健康保険と厚生年金保険)と雇用保険に加入していることが要件になっています。法人は、従業員数に関わらず、原則として健康保険と厚生年金保険に入る必要があり、法人または個人事業主に関わらず、労働者を雇用すると雇用保険に入る必要があります。

建築一式工事の専任技術者を目指すなら事前に要件をよく確認

建築一式工事の「専任技術者」を目指す場合、一般建設業と特定建設業で要件が異なることを解説しました。企業として建設業許可を得る際は、上述の5要件全てを満たす必要があり、個人として専任技術者を目指すのであれば資格や実務経験のいずれかを保有する必要があります。

実務経験とは、許可を受けようとする業種に関する技術的な経験です。具体的には、建設工事の施工を指揮・監督した経験が該当します。例えば、内装仕上工事で許可を受けようとする場合は、内装仕上工事のみの経験が必要とされます。

10年という長期間を1業種の専門のみ受注できる企業が稀であることから、これから専任技術者を目指そうとして実務経験を積もうと考えている人へは、国家資格の取得を強くお勧めします。

おわりに

建築一式工事の概要、建設工事を請け負うために必要な要件が複数あることをご理解いただけたでしょうか。建築一式工事における専任技術者を目指すのであれば、一級建築施工管理技士・一級建築士の資格を取得することが最短になります。この記事を読んで建築一式工事や、専任技術者に興味を持つ人や、資格取得を前向きに検討する人が増えることを願っています。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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