建築設備士の仕事内容や資格の解説&転職先や求人例、年収例も紹介
建築の設計に関する資格には、建築士のほかに「建築設備士」もあります。よく似た名前ですが、両者には明確な違いがあります。建築設備士はどのような仕事を行い、どのような役割を担うのでしょうか?また、資格の取得は難しいのでしょうか?
この記事では、建築設備士の仕事内容や建築士との違いについて解説した後、資格の説明や転職先、求人例の紹介をしていきます。建築設備士に関心をお持ちの方は、ぜひお読みください。
目次
建築設備士はどんな仕事をする職業?
建築設備士は、給排水や空調、電気といった建物に設置される各種設備のプロフェッショナルです。建築設備の豊富な知識と経験を活かし、建築士に対して設備面でアドバイスを行える資格です。
建築士が建築設備士の意見を聞いた場合、建築確認申請書に建築設備士の名称が記されます。また建築設備士は、設計事務所など建築士が働く事業所において、建築設備の設計業務に携わることも可能です。
建築設備士と建築士の仕事の違い
建築設備士と建築士では、仕事の範囲が異なります。建築設備士は建物に設置される設備に特化している一方で、建築士は建物全般を扱えます。現在では多種多様な設備があるため、専門に特化した建築設備士が求められるケースも多いでしょう。
建築士の資格については以下の記事も参考にしてください。
建築設備士の資格とは
建築設備士は、公益財団法人建築技術教育普及センターが実施する国家資格です。建築士で設けられている一級・二級・木造といった区別はありません。
建築設備士の試験は年1回実施されます。令和4年の試験では第一次試験が6月、第二次試験が8月に実施されました。
建築設備士と建築士の資格の関係
建築設備士と建築士は、互いに関連する資格です。どちらかの資格をお持ちの場合は、もう片方の資格取得が優遇される場合があります。
建築設備士をお持ちの方は、建築士試験を受験できます。一級・二級・木造いずれにも出願可能です。ただし一級建築士免許を取得するためには、建築設備士として4年以上の実務経験が必要となります。
一方で建築士の方が建築設備士の試験を受験する場合、二級建築士や木造建築士の資格では特に優遇されません。一級建築士をお持ちの方は、建築設備に関する実務経験が2年以上あれば出願できます。
建築設備士の資格を取得するメリット
建築設備士の資格を得ると、設備の専門家として認められます。高いスキルを証明できるため応募できる企業が増えるほか、選考においても有利になるでしょう。国家資格ですので給与のアップも期待できます。
また1年以上の実務経験を積んだ方は、主任技術者や一般建設業許可を受けた営業所の専任技術者になれます。ただし建設業の種類は、電気工事または管工事に限ります。
建築設備士の試験内容や受験資格
建築設備士の試験は、第一次試験と第二次試験に分かれます。両方の試験に合格しないと、建築設備士になれません。また建築設備士試験は一定の条件を満たした方だけが出願できるため、誰でも受けられる試験ではありません。
ここからは建築設備士の第一次試験と第二次試験の内容をはじめ、どのような方が受験できるかという点についても解説していきます。
第一次試験の内容
第一次試験は学科試験であり、以下の3科目が出題されます。建築設備を中心とした試験内容ですが、さまざまな分野にわたり出題されることが特徴です。全問必答で、選択問題はありません。
出題科目 | 出題数 | 出題内容 |
---|---|---|
建築一般知識 | 27問 | 建築計画、環境工学、構造力学、建築一般構造、建築材料及び建築施工 |
建築法規 | 18問 | 建築士法、建築基準法その他の関係法規 |
建築設備 | 60問 | 建築設備設計計画及び建築設備施工 |
引用:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和4年建築設備士試験 受験総合案内書」
試験は四肢択一のマークシート方式で、1日かけて行われます。令和4年に実施された試験当日のスケジュールを以下に示しました。建築一般知識と建築法規の試験は、まとめて実施されることに注意してください。
科目 | 試験時間 |
---|---|
建築一般知識、建築法規 | 10:00~12:30 |
建築設備 | 13:40~17:10 |
出典:公益財団法人 建築技術教育普及センター「令和4年建築設備士試験 受験総合案内書」
合格ラインは年により変動しますが、おおむね7割前後です。ただし科目ごとに、合格基準点が設定されていることに注意してください。合格基準点は出題数の50%前後で設定されており、この点数を下回る科目が1つでもあると不合格になってしまいます。苦手な科目がある方は、弱点補強に取り組むことが重要です。
第二次試験の内容
第二次試験は、設計製図の試験です。以下の2科目が出題されます。
- 建築設備基本計画
- 建築設備基本設計製図
建築設備基本計画の科目は記述式で行われ、11問出題されます。全問必答で、選択問題はありません。
一方で建築設備基本設計製図の科目は、下記の3つの分野から1つを選んで解答します。
- 空調・換気設備
- 給排水衛生設備
- 電気設備
どの分野を選んでも、設問数は5問です。令和4年の出題内容は、以下のとおりとなっています。
設問 | 出題内容 |
---|---|
第1問 | 計算問題を中心とした記述式の設問。数値の算定根拠も記述する必要がある |
第2問 | 系統図(「電気設備」を選んだ場合は、単線結線図)の作成 |
第3問 | ダクト図の作成 |
第4問 | 配管図の作成 |
第5問 | 器具の配置図の作成 |
採点結果はAからDの評価で示され、評価Aだけが合格です。単に計算ができるだけでなく、計算のプロセスも問われます。また、図面を描けないと合格はできません。試験時間は5時間30分におよぶため、体調管理も重要です。
建築設備士の受験資格
建築設備士の受験には、建築設備に関する実務経験が最低でも2年必要です。必要な実務経験の年数は、資格や学歴により異なります。以下に示すいずれかの資格をお持ちの方は、実務経験2年以上で受験可能です。
- 一級建築士
- 1級電気工事施工管理技士
- 1級管工事施工管理技士
- 空気調和・衛生工学会設備士
- 電気主任技術者(第1種~第3種)
なお、施工管理技士の資格についてこちらの記事で詳しく解説しています。
上記の資格がない方でも、大学や短大、高等専門学校、高校、専門学校などで以下に挙げるいずれかの課程を学び卒業した方は、2年から6年の実務経験年数で受験可能です。
- 建築
- 機械
- 電気
- 上記と同等と認められる類似の課程
例えば建築学科や電気・電子工学科を卒業した方の場合、大学ならば2年、短大や高等専門学校ならば4年、高校ならば6年の実務経験で受験できます。専門学校の場合は、修業年限や単位数により必要な年数が変わります。
資格や学歴の条件に該当しない方でも、あきらめる必要はありません。建築設備に関する実務経験を9年以上積んだ方は、受験できます。
建築設備士の年収はどれくらい?
求人ボックスによると、建築設備士の月給は平均で40万8,000円となっています。ボーナスを年2カ月分と仮定すると、年収はおよそ570万円となります。
月給の分布は、20万円台から50万円台まで幅広いことに注目してください。これは企業により、またはスキルにより、年収が大きく変わることを意味します。例えば月給50万円でボーナス2カ月分支給の会社に雇用されると、年収は700万円に到達します。実際に600万円以上の年収を提示する企業も、少なくありません。
せっかく転職するならば、より多くの年収を狙いたいものです。スキルの棚卸しを行い、より高い年収の企業に入社できるよう努めましょう。
建築設備士の転職先や求人例
建築設備士は、建築に関わるさまざまな企業で求められる資格です。なかでも建設会社や設計事務所の求人数は多くなっています。どちらも多種多様な建物を扱うため、物件ごとの事情にあわせた設備の設計が求められることが理由です。
どのような求人があるか、一例を挙げてみました。応募の参考にしてください。
業種 | 募集要項に記された主な項目 |
---|---|
設計事務所 | 分野別に分かれ、建築物の設計や設計監理業務を担当 一級建築士または建築設備士の有資格者 月給35万円~54万円(年収は30代で500万円~600万円を想定) |
改修工事を主に扱う建設会社 | 改修工事に伴う設備の設計、および補助金の申請業務 設備設計の実務経験者(建築設備士などの有資格者歓迎) 年棒420万円~680万円 |
建築物の確認検査機関 | 建築物の確認審査業務 一級建築士、二級建築士または建築設備士の有資格者 月給25万円~50万円(初年度想定年収400万円) |
おわりに
建築設備士は設備のプロフェッショナルとして、多くの企業から求められる資格です。高い年収が期待できることも、資格を得るメリットといえるでしょう。
資格を得るために必要な試験は、建築設備に関する実務経験がないと出願できません。まずは建設会社や設計事務所に入り、実務経験を積むことが資格取得への近道です。ご自身の現状を踏まえ、資格を取るまでのプランを考えるところから始めましょう。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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