特定建設業と一般建設業:それぞれの違いや許可の要件を詳しく解説

特定建設業と一般建設業:それぞれの違いや許可の要件を詳しく解説

建設業には、特定建設業と一般建設業の2種類があります。「特定」がついている建設業は何か特別な業務を行っているのかなど、疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。

どのような要件を満たせば特定建設業になるのか、一般建設業で良い要件はなにかを知ることは、適切な事業運営に欠かせません。それぞれの違いや許可の要件も含めて、この記事で詳しく確認していきましょう。

建設業の許可について

建設業を営む方にとって、建設業の許可は不可欠です。建設工事の完成を請け負う事業者は、特定建設業または一般建設業どちらかの許可を取ることが義務付けられているためです。

但し以下の項目を満たす「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は例外で、建設業の許可を取ることが必須ではありません。

建設業の業種 軽微な建設工事に該当する要件
建築一式工事 以下のどちらかを満たすこと
■工事1件当たりの請負金額が1,500万円(消費税込み)未満
■延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
建築一式工事以外 工事1件当たりの請負金額が500万円(消費税込み)未満

建設業の許可には、5年間の有効期限があることにも注意が必要です。継続して事業を営む場合は、更新の申請を行わなければなりません。

建設業の許可は29種類の業種に分かれている

建設業の許可は大工や左官、屋根、電気、管、造園、解体など、29の業種に分かれています。「土木工事ならば土木一式工事」「建築工事ならば建築一式工事」で済むわけではないことに注意が必要です。自社で取り扱う工事内容に沿った許可を取得しましょう。広範囲の工事を扱う場合は、複数の業種で許可を取得することも可能です。

どの業種で許可を取得すべきかについては、「建設業許可事務ガイドライン」に沿って判断しましょう。以下のように、誤りやすい工事があるためです。

工事内容 取得すべき許可の種類
ビルの避難階段設置工事 建築一式工事または鋼構造物工事
土木系の防水工事 とび・土工・コンクリート工事
農業用水道の建設工事 土木一式工事

国と都道府県、どちらに申請する?

建設業の申請先は、国と都道府県の2種類があります。これは、どちらかを選べるというわけではありません。営業所を置く都道府県の数により、自動的に申請先が分かれます。

営業所を置く地域が単一の都道府県にとどまる場合、申請先は営業所のある都道府県となり、建設業の許可は知事が行います。一方で複数の都道府県に営業所を置く場合、申請先は国となり、許可は本店の所在地を所管する地方整備局長等が行います。

建設業の許可は「特定建設業」と「一般建設業」の2種類

建設業の許可には、以下の2種類があります。

  • 特定建設業の許可
  • 一般建設業の許可

以下に挙げる両方の要件を満たす建設会社は、特定建設業の許可を取得する必要があります。

  • 元請業者である
  • 請け負った工事1件につき、下請契約の額が4,500万円(建築工事業の場合は7,000万円)以上

ゼネコンや下請業者を多数抱える元請業者は、1番と2番の両方に当てはまる場合も多いでしょう。多種多様な工事を扱う場合は、複数の種類において建設業の許可を持つことになります。この場合、1番と2番の両方に該当しうる業種のみ特定建設業の許可を取得し、それ以外の業種は一般建設業の許可で済ませることは問題ありません。

もっとも、建設業者の多くは一般建設業の許可で済みます。特に「下請けに出さずすべて自社で施工する企業」や「下請け専門の建設会社」は、受注金額に関わらず一般建設業の許可で十分です。

なお、1つの業種について、特定建設業と一般建設業の許可を両方取得することはできません。

特定建設業と一般建設業は、建設業許可番号で判別できる

特定建設業と一般建設業は、付与される建設業許可番号が異なります。例として、令和4年に国土交通大臣の許可を得た建設業者を挙げてみます。

建設業の種類 建設業許可番号
特定建設業 国土交通大臣許可(特-4)第△△△△△△号
一般建設業 国土交通大臣許可(般-4)第△△△△△△号

かっこ書きで書かれている部分の漢字が「特」ならば特定建設業の許可を、「般」ならば一般建設業の許可を受けている事業者です。

特定建設業許可の要件

特定建設業の許可を受けたい場合は、事前にさまざまな要件をクリアしなければなりません。満たすべき要件を、以下の表にまとめました。

満たすべき項目 要件の内容
経営業務の管理責任者等の設置 建設業の経営業務における一定期間の経験を持つ者
適正な社会保険への加入 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入していること
営業所ごとに専任技術者を設置 1級の施工管理技士、1級建築士、技術士いずれかの資格を持つ方など
資本金 2,000万円以上
自己資本 4,000万円以上
欠損額 資本金の20%以下
流動比率 75%以上。1年以内に支払い期限が来る「流動負債」が多い企業は、要件をクリアできない可能性が高まる
誠実性 請負契約の締結や履行を誠実に行うこと
欠格要件に該当しないこと 破産者で復権していない者、建設業許可を取り消された後5年以上を経過しない者、暴力団員または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者などは欠格要件に該当する

高いレベルの技術者を確保していること、健全な経営を行っている企業であることが許可の要件です。建設業は特に人手不足が深刻な業種ですから、専任技術者を任せられる技術者を採用できるか、課題に挙げる企業も多いのではないでしょうか。

また経営業務の管理責任者がいなくなると、許可が取り消されてしまいます。営業所ごとの専任技術者が1箇所でも不在になった場合も同様です。事前に代替要員の配置を検討し、不在となる前に交代させなければなりません。
なお、施工管理技士の資格についてこちらの記事で詳しく解説しています。

一般建設業許可の要件

一般建設業の許可を受けるハードルは、特定建設業よりも低くなっています。満たすべき要件を、以下の表にまとめました。

満たすべき項目 要件の内容
経営業務の管理責任者等の設置 建設業の経営業務における一定期間の経験を持つ者
適正な社会保険への加入 健康保険、厚生年金保険、雇用保険に加入していること
営業所ごとに専任技術者を設置 施工管理技士、建築士、技術士など。または経験豊富な技術者(必要な経験年数は、学歴により3年~10年の違いがある)も専任技術者になれる
財産的基礎等 以下のいずれかに該当すること
■自己資本が500万円以上
■500万円以上の資金を調達できる能力がある
■許可を申請する直近の5年間、建設業の許可を受け継続して営業した実績がある
誠実性 請負契約の締結や履行を誠実に行うこと
欠格要件に該当しないこと 破産者で復権していない者、建設業許可を取り消された後5年以上を経過しない者、暴力団員または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者などは欠格要件に該当する

特定建設業ほどハードルは高くないものの、専任技術者になれるレベルの技術者を確保する必要があります。経営業務の管理責任者や営業所ごとの専任技術者がいなくなった場合は、建設業の許可を取り消されることにも注意しなければなりません。事前に代替要員の配置を検討し、不在となる前に交代させることが会社を守るポイントです。

特定建設業許可が必要となる理由

特定建設業許可が必要となった背景には、下請業者の保護と適切な施工の徹底が挙げられます。特定建設業者から下請業者に発注される額は大きく、仕事の量もまとまったものとなりがちです。もし代金の不払いや遅延があれば、下請業者は経営危機に陥りかねません。

加えて竣工した建物も大規模となりやすいため、万が一不備があると社会的な影響も大きくなるおそれがあります。竣工後に欠陥が見つかった場合は、多くの人に悪影響を及ぼしかねません。

不都合な事態を防ぐためには、発注者としてふさわしい資産と技術を持っているかチェックする必要があります。特定建設業と一般建設業の許可基準は、このような観点で分けられています。

おわりに

元請業者の立場で働く場合は、自社が特定建設業と一般建設業のどちらに当てはまるか意識する必要があります。もし特定建設業者であれば、さまざまな面で一般の建設業者よりも重い責任を負うわけです。このことを意識して、日々の業務を遂行しなければなりません。

もっとも、特定建設業許可を取らなければならないケースは限定的です。特に下請業者は、一般建設業の許可で十分といえるでしょう。安全・安心を確保することは大切ですが、過剰な対策を取る必要はありません。特定建設業と一般建設業の違いを把握したうえで、事業内容に合わせて適切な許可申請を行いましょう。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

関連する記事