建築設計事務所の仕事内容(建築士・設計士・施工管理技士)を詳しく解説、就職・転職に必要な資格
建築設計事務所は、どのような仕事をしているのでしょうか?本記事では、建築士・設計士・施工管理技士の業務内容と比較して解説します。加えて、仕事のやりがいや大変なこと、転職するときに必要な資格に関しても詳細に説明しているため、建築設計事務所での仕事に興味がある人が仕事内容のイメージを明確化できる記事となっています。
目次
建築設計事務所の種類
建築設計事務所を大別すると、組織系設計事務所とアトリエ系設計事務所に分けられます。
組織系設計事務所とは、意匠・構造・設備設計のほか、積算を含めて施工前の一連の作業を自社で完結できる設計事務所を指し、比較的社員が多く設計業種が部門ごとに分かれていることが特徴です。建築実績は、シンプルで機能性を重視した建築物が多くみられます。
一方でアトリエ系設計事務所は、主にデザイン性の高い意匠設計を得意としていて、構造・設備設計は外注する場合が多く、事務所や代表的な建築士(建築家)自信の芸術性・メッセージ性を強く表現することが特徴です。
業務内容の他にも年収やワークライフバランスにも差異があり、大手組織系設計事務所では平均年収700万を超える事務所がある一方で、アトリエ系では300万未満の企業もあります。ワークライフバランスに関しても建設業界全体で残業規制が厳しくなっていますが、アトリエ系では仕事が個人の技術に大きく依存するため、休日出勤も必要なケースがあります。
建築設計事務所の仕事内容
建築設計事務所では、建物や設備に関わる設計業務を包括して担当します。設計業務とは、意匠設計・構造設計・設備設計の3業種のことで、一般的にはそれぞれ以下のような業務を行います。
- 意匠設計:
建築物全体の外観・内観のコンセプトやデザインを設計して他設計と調整を図る - 構造設計:
建築物の構造的な安全性・使用性・復旧性を照査する - 設備設計:
建設物の利用者が快適で安全に使用するために必要な設備機器の検討、配置・配線などの設計を行う
建築設計事務所の設計職としては以下の3つが主な仕事内容になります。
- ①デザイン業務:内観や外観に加え、コンセプトなどの居住区間のデザインを考える
- ②設計業務:設計デザイン・コンセプトを元に建築設計図を作る
- ③パース業務:視覚的に完成形が分かり易く見られるように、CAD図面を基にパース図を作成する
ただし、建築設計事務所では設計以外の知識も求められます。たとえば、建築設計事務所の業務は主に下記手順で進めるのですが、施工管理など設計以外の業務も行っているのがわかります。大規模な組織系設計事務所では部門や分野ごとに担当が分かれている場合が多いですが、小規模な設計事務所だと一人で全て担当しなければなりません。
【業務手順】
①お客様(購入者)との打ち合わせ
②現地調査
③外観・内観など建築物全体のコンセプトの共有
④建築設計
⑤施工会社選定
⑥施工管理
⑦設計変更(必要に応じて)
⑧竣工・引き渡し
建築士・設計士・施工管理技士の仕事内容
では、一般的に建築士・設計士・施工管理技士は各々どのような仕事を担当するものなのでしょうか?各職種の定義と仕事内容は以下の通りです。建築設計事務所では、これら全ての職種の業務を一人で行えるスキルや知識を持つ人材が即戦力として重宝されます。
【建築士】
建築士とは、一級・二級建築士・木造建築士の3種類のいずれかの国家資格を取得した人を指します。仕事内容は、建築物の設計業務と工事監理業務の2種類に分類することができ、設計業務では、意匠設計・構造設計・設備設計において設計図面を作成し、工事監理では品質管理(Quality)・原価管理(Cost)・工程管理(Delivery)・安全管理(Safety)のQCDS管理において、設計図面通りに工事が進められているかを確認します。
【設計士】
設計士とは、建築物の設計に関わっている全ての人を指す広義な意味で使われており、設計士を指す明確な定義はありません。延べ面積が100㎡以下の木造建築物については、建築士の資格を保有していない場合でも設計が可能なため、建築士の資格を保有していない状態で、このような設計業務に従事している人を総称して設計士と言われています。
【施工管理技士】
施工管理技士の業務内容は建築士と異なり、現場工事監理であるQCDS管理が主な仕事です。発注者の要望に応じて高品質なモノを最適価格で予定通りの時期に安全規格を満たしつつ竣工できるように現場を監理します。一方で建築士は、QCDS管理に加えて設計図書の作成が仕事内容に含まれていることが大きな特徴です。
施工管理技士が監理技術者として従事できる建設工事の業種は、建築(一式)工事・大工工事・左官工事などの17種類あります。一方で、建築士が工事監理出来る建設工事の業種は、17項目の内、大工工事、屋根工事、タイル・レンガ・ブロック工事、鋼構造物工事、内装仕上工事の6種類に限られることが大きな違いです。
尚、施工管理技士に求められる資格や詳しい業務内容についてはこちらの記事で解説しています。
建築設計事務所に就職・転職するのに必要な資格は?
設計職において必要な資格は、「建築士」です。建築士には、一級・二級建築士、木造建築士の3種類があり、扱う建築物の構造と規模によって必要になる資格が異なります。
資格保有者でないと転職できないということはありませんが、基本的に転職人材は即戦力を期待されるため資格保有者が優先的に採用されるでしょう。20代前半でこれから資格取得を目指すという方以外であれば、資格取得後に転職することを強くお勧めします。
一級・二級建築士や一級・二級建築施工管理技士の資格に関しては、別記事でも詳しく解説しています。こちらの記事もご参考いただけると幸いです。
建築設計事務所の仕事のやりがい
建築物(住宅)が完成した時に最もやりがいを感じる傾向にあります。建設業界全体で言えることですが、形に残る仕事として自分が手掛けた仕事が目に見える形で世の中に残ります。「地図に残る仕事」とも表現されるように、完成時は大きな達成感を感じるでしょう。加えて、建築設計事務所では、お客様(購入者)と直接的にやり取りをするため達成感は人一倍大きいものになります。
現場仕事は、何も問題が起こらずに竣工を迎えることは絶対にありません。天候に工事が左右されながらも無事に竣工できたとき、施工を担当した大工や各工種の職長と意見の食い違いがありながらも協力して施工を成し遂げたときは、苦労したぶん忘れられない思い出になるでしょう。
建築設計事務所の仕事で大変なこと
建設業界全般に言えることですが、残業が比較的多い点が大変なこととして考えられます。建築設計事務所には、前述の通り営業・設計・事務・広報等の様々な業種が存在するため一概に全ての業種で残業が多いとは言えないですし、事務所の規模や社員数にもよりますが、残業が多すぎないかは確認しておくべきポイントです。
参考までに、労働基準法で定める法定外労働時間は下記のとおりです。1ヶ月間の時間外労働時間を原則45時間以内と定め、その回数が1年間で6回を超過すると法令違反となります。この範囲でギリギリの業務量になると想定しましょう。
内容/区分 | 原則時間 | 上限時間 |
---|---|---|
単月 法定外労働時間 |
45 時間以内 (日曜日の時間除く) |
100 時間未満 (日曜日の時間含む) |
2~6か月平均 法定外労働時間 |
- | 80 時間以内 (日曜日の時間含む) |
年間 法定外労働時間 |
360時間以内 (日曜日の時間除く) |
680 時間以内(日曜日の時間除く) |
月45時間 (日曜日除く)超過回数 |
年6回まで |
建築設計事務所の仕事が向いている人
建築物やデザインが好きな人は建築設計事務所での仕事に向いています。加えて、住宅(マイホーム)が好きな人も向いているでしょう。上述の仕事のやりがいを楽しそうと感じた方は、建築設計事務所を転職先の選択肢のひとつとして考えてみてはどうでしょうか。
ただし、建設業界全体で高齢化が進んでいることと、経験工学的な分野であることから、実力が付くまで他業界と比較すると時間を要する傾向にあることを認識して下さい。
建築設計事務所で活躍する職種の平均年収
建築設計事務所では、さまざまな職種の方が活躍しています。それぞれの平均年収を、以下の表で確認していきましょう。なお建築施工管理技士の年収は、ボーナスを2カ月分と仮定して計算しました。
職種や資格 | 平均年収 | 出典・備考 |
---|---|---|
一級建築士 | 499万円 | 出典:求人ボックス 給料ナビ |
設計(建設/土木) | 456万円 | 出典:転職サービスdoda「平均年収ランキング【最新版】」 |
1級建築施工管理技士 | 565万6,000円 | 出典:求人ボックス 平均月給は40万4,000円 |
2級建築施工管理技士 | 522万2,000円 | 出典:求人ボックス 平均月給は37万3,000円 |
建築設計事務所の求人募集例
「建築転職」で取り扱っている建築系の求人の中から、建築設計事務所の求人募集の一例をご紹介します。
(※2023年8月時点の求人情報です。募集内容は変わる可能性があります)
国内最大クラスの設計事務所の求人
- 仕事内容:注文住宅のデザイン設計
- 応募条件:住宅設計業務経験者、建築系の大学・学部・専門学校・短大卒、建築系CADでの製図スキル(左記学校で習うレベル)
- 完全週休2日制(土日祝休み)、年間休日106日
- 年収4,000,000円 〜 8,000,000円
- 基本設計経験者→月給42万円~
実施設計経験者→月給29万2000円~
アシスタント→月給25万円~
総合組織設計事務所の求人
- 仕事内容:機能性・居住性・耐久性・経済性・施工性に配慮した構造設計
- 応募条件:大学の建築学科を卒業し構造設計業務で3年以上の経験、一級建築士・構造設計一級建築・技術士いずれかの資格
- 完全週休2日制(土日祝休み)
- 年収5,000,000円 〜 10,000,000円
- 技術研修、階層別研修等あり
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おわりに
本記事では、建築設計事務所での仕事内容や他業種(建築士・設計士・施工管理技士)との差異に関して解説しました。建築設計事務所での仕事は、お客様(購入者)と近い距離で住宅という一生ものの買い物をサポートできる立場にあります。本記事を読んで「建築設計事務所での仕事は自分に向いていそうだ」と感じた方は、ぜひ前向きに検討してみてください。
尚、建築士に求められる能力や必要な資格についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
この記事を監修した人
株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武
保有資格:1級施工管理技士・一級建築士
最後までお読みいただきありがとうございます。
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