土木工事とは:12種類の仕事内容や転職に役立つ資格を解説

土木工事とは:12種類の仕事内容や転職に役立つ資格を解説

皆さまは土木工事とはなにか、また、なにが土木工事に含まれるかご存知でしょうか。漠然としたイメージはあっても、どこまでが土木工事かよくわからない方もいるかもしれません。

結論から言うと、土木工事は、道路や橋、トンネルなど、さまざまな土木工作物が対象です。工事の範囲も幅広くなっています。

また、土木工事に関する仕事に転職する際、資格が重要か知りたい方も多いのではないでしょうか。この記事では土木工事の定義や仕事内容、転職に役立つ資格、仕事のやりがいや大変なところについて解説します。

土木工事とは?定義を解説

土木工事は建設工事のうち、建築物を建てる「建築工事」を除く工事の総称です。以下の工作物に関する事業は、土木工事によって行われます。

  • 道路や橋、トンネル
  • ダム建設や河川改修
  • 港湾や堤防の整備、海岸の工事
  • 空港の建設
  • 土地の区画整理
  • 砂防工事や地すべりを防止する工事、治山工事
  • 公道の下に埋設する下水道

このように土木工事は私たちのインフラを支えるうえで、欠かせない役割を果たしています。

土木工事と建築工事はどんな違いがある?

土木工事にあてはまる項目をみると、地面の下、または地面そのものが工事対象となることにお気づきの方も多いのではないでしょうか。実際に「土木は地面の下」といわれることもあります。工作物そのものが屋外に設置されることから、工事は天候による影響を受けやすいことも特徴です。

一方で建築工事は、地面の上に建築物を建てる工事です。完成後は柱や壁、屋根で覆われた、風雨をしのげる空間ができあがります。建築工事も多くの工程で天候の影響を受けますが、内装工事や内装塗装、解体工事など、雨でも行える工事も少なくありません。

なお建築工事の中には、基礎を作る「杭基礎工事」といった地面の下で工事を行うものもあります。その場合も目的が建築物の建設であれば、土木工事ではなく建築工事に分類されることに注意してください。

土木工事は12種類、仕事内容を解説

土木工事は、12の種類に分かれます。工事の種類が異なれば、完成するものや担当する工事内容も大きく異なるわけです。土木工事の種類と仕事内容について、以下の表にまとめました。

土木工事の種類 仕事内容
道路工事 新しく道路をつくる工事と、既存の道路をメンテナンスする工事がある。道路の幅を広くするなどの改良工事や、標識やガードレールなど道路に付随する設備の工事も含まれる
河川工事 堤防の建設、水門の設置、川底のしゅんせつ、川底の強化(床止め)などが含まれる。上流・中流・下流により工事内容が異なり、上流部では地すべり防止や砂防工事も行われる場合がある
海岸工事 河口のしゅんせつを行う。堤防、離岸堤、護岸などの設置やメンテナンスも行う
ダム建設工事 水を貯める「貯水池ダム」と、土砂を貯める「砂防ダム」に分かれる。工事用の道路を作り河川を迂回させる工事を行ったのち、ダム予定地を掘削しコンクリートなどで地盤を固め、ダム本体など必要な施設をつくる
橋梁・高架橋工事 川や海、地面の上に橋を架ける工事。基礎をつくる工事、躯体をつくる工事、橋桁をつくって架ける工事の3つに分かれる
トンネル工事 山や地下、水中に穴を開け、道路や鉄道、上下水道管やガス管を通す工事。掘削した後は岩や土砂を取り除き、空いた穴に支保工を設置してコンクリートで固める
空港建設工事 空港の新設やメンテナンスを行う。新設の場合は護岸工事や造成工事、舗装工事など。メンテナンスは空港にあるさまざまな施設や設備が対象
土地区画整理工事 土地造成工事ともいう。建物などの建設に先立ち、土地をならすなどの整備を行う工事。元の土地の状態により、掘削や切土、盛土なども行われる
公道下の下水道工事 道路の地下に、下水管や排水桝などを設置する工事。舗装を切断して道路を掘り、下水管等を設置する。周りの土が崩れないよう、土留めも行う
農業土木工事 農業を行う環境を整備する工事。農業に向く土地にする「農用造成工事」と、河川や地下水から用水路などを作って水を引く「灌漑水道工事」に分かれる。排水の改良や区画整理なども行われる
森林土木工事 森林内の道を整備・改良する「林道工事」と、治山ダムの建設や森林を造成する「治山工事」に分かれる
砂防工事 山の土砂崩れや川の氾濫を防ぐ工事。山の斜面に壁や柵を設ける、氾濫した場所を公園にする、堰堤を川に設置して大きな石をせき止めるなどが含まれる

このように土木工事では、さまざまな工事を行えます。インフラを守る仕事であることが、おわかりいただけたことでしょう。

土木工事

土木一式工事の定義や工事内容

土木工事の一つに、「土木一式工事」があります。一見すると「さまざまな土木工事をセットして提供する工事」と思いがちですが、国土交通省が定義する内容は異なります。

総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)

引用元:国土交通省「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」

上記のとおり土木一式工事の受注者は、全体を統括する役割を担った上で工事を実施することが求められています。舗装だけの工事や公園の整備などのように、他の建設工事の種類で受注が可能な場合は土木一式工事となりません。また下請の立場で受注する工事も土木一式工事とはなりません。

一方で、土木一式工事ではさまざまな工作物の建設を受注できます。橋やトンネル、ダムの建設は、代表的な工事です。護岸工事や治山工事、砂防工事も土木一式工事に含まれます。また公道の下に設置する下水道の工事、農業用水道や水路の建設工事も土木一式工事として扱われます。

なお建築工事には「建築一式工事」というものがあります。こちらについては、以下の記事をご参照ください。

土木工事の転職に役立つ資格

土木工事は法令によりさまざまな縛りがあるため、資格を持つ方が有利です。転職に役立つ資格は多いですが、実務経験がないと受験すらできない資格も少なくありません。

ここでは土木工事の転職に役立つ資格を、未経験者でも取得できる資格と実務経験者のみ受験可能な資格に分けて紹介します。興味・関心のある資格があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

未経験者でも持てる資格

以下に挙げる資格は、土木工事の経験がない方でもチャレンジできます。

資格名 資格を得る主な要件
技術士補 技術士試験の第一次検定に合格、または大学等でJABEE(一般社団法人日本技術者教育認定機構)認定課程を修了
2級土木施工管理技士補 2級土木施工管理技術検定の第一次検定に合格する
測量士、測量士補 試験に合格する

上位資格への足掛かりとなる資格が多くなっていますが、なかには測量士のように現場の第一線で活躍できる資格もあります。

土木工事経験者が持てる資格

土木工事の経験を持つ方は、未経験者よりも多くの資格を武器にできます。転職に役立つ資格を、以下に挙げました。

資格名 必要な経験の例
土木施工管理技士 土木工事の施工管理
必要な実務経験年数は学歴等により異なり、2級は1年~8年、1級は3年~15年
技術士 専門分野において最低4年を超える実務経験
コンクリート技士 コンクリートに関する3年以上の実務経験
RCCM 大学卒業後、建設コンサルタント等の業務で7年以上の実務経験
舗装施工管理技術者 舗装施工管理に関する実務経験。必要な実務経験年数は学歴等により異なり、2級は1年~8年、1級は3年~15年

土木工事のさまざまな分野において、資格が設けられています。あなたの専門に合った資格を選んで取得することは、ご自身の市場価値を高めるうえでも有効です。

土木施工管理技士については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。



土木工事の仕事のやりがいや大変なところ

土木工事は「きつい、危険、汚い」の頭文字を取った「3K」に該当する職種といわれています。確かに大変な仕事であり「きつい、危険、汚い」側面もありますが、やりがいも大きい仕事です。両方を知っておくことは、あなたの適職選びにつながります。

ここからは土木工事のやりがいと大変なところがどのようなものか、確認していきましょう。

土木工事のやりがい

工事を手掛けた道路や橋、トンネルなど、成果が目に見えることは大きなやりがいとなるでしょう。知人や親族に対して、「この工事は自分が携わったもの」と言えることに喜びを感じる方も、いるのではないでしょうか。

これらの工作物は、幅広い方に利用されます。公共性の高い仕事といえるでしょう。仕事を通して社会貢献ができることも、やりがいの一つに挙げられます。

また良い仕事を行った場合は、発注者などから感謝の言葉を頂く場合もあります。モチベーションを高められることに、やりがいを感じる方も多いでしょう。

土木工事の大変なところ

土木工事の大変なところに、天候に左右されることを挙げる方は多いでしょう。悪天候が続く時期は、工期も遅れがちです。締め切りに間に合わせるため、休日出勤を余儀なくされるケースも少なくありません。家族との休日やプライベートを思うように過ごせないとお悩みの方も、多いのではないでしょうか。

加えて体力を使うことも、大変さを感じる代表的な項目です。ある程度の体力がないと、仕事についていけません。また夏の暑さや冬の寒さは、体力を消耗させる要因ともなります。

先に「3K」について紹介しましたが、建設業における「3K」のイメージを変えるために、厚生労働省は「新3K」を提唱しています。「新3K」は、「給与」「休暇」「希望」の3つです。言葉の定義が変わっただけでなく、国土交通省直轄工事において総合評価や成績評定での加減点を行うモデル工事を実施するなど、建設業の労働環境改善に向けた取り組みが進んでいます。

また、建設業にも2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されるため、常態化している長時間労働や休日出勤の改善が期待できるでしょう。

建設業における時間外労働の上限規制の適用については、以下の記事で詳しく解説しています。

土木工事の仕事の平均年収

土木工事の仕事の平均年収は、職種によって大きく異なります。代表的な2つの職種「土木施工管理」と「土木作業員」について、「求人ボックス 給料ナビ」の年収額を確認していきましょう。

職種 平均年収額 全体の給与幅
土木施工管理 467万円 326万円~1,024万円
土木作業員 403万円 292万円~623万円

国税庁が「令和3年分 民間給与実態統計調査」で公表した給与所得者全体の平均年収は、443万円です。土木作業員は平均年収より低く、土木施工管理は平均年収よりも高い年収が期待できます。特に土木施工管理は全体の給与幅が大きいため、実力があれば高収入も期待できる職種です。

おわりに

土木工事の範囲は幅広く、インフラを守る重要な仕事です。体力を使う、仕事が天候に左右されるなど、大変なこともあるかもしれません。しかし日々の生活を送るうえで、なくてはならない仕事です。何よりも他の人に見せられる成果を挙げられることは魅力です。

土木工事を扱う建設業者は数多くありますが、得意分野を持つ企業も少なくありません。あなたが興味・関心を持つ分野はなにか、よく考えておくとよいでしょう。そのうえで興味や関心に合った会社を選び、資格を取ることが成功への第一歩となります。

この記事を監修した人

プロフィール写真

株式会社トップリフォームPLUS
取締役
小森 武

保有資格:1級施工管理技士・一級建築士

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